そして数分後、親御さんが現れ、クエストは無事に完了した。
報酬アイテムを確認して、セツナがバレッタを手に取る。
「うわ、やっぱ可愛い」
「はい。思った通りです」
「でもこれ、自分でつけにくいな」
そう言って、髪に手をやる。
セイは一拍置いてから言った。
「……よろしければ、僕が、お手伝いしましょうか?」
「え、ほんと?私、実は不器用でね。着けてくれると助かるな。お願いしていい?」
「はい。では少し失礼します」
後ろに回るセイ。
指先は慎重で、動きは静かだった。
バレッタを留め、一歩引く。
「……できました」
「どう?」
セイは一度だけ頷く。
「よくお似合いです」
「ふふっ、ありがとね。でもさ。今日は私のためにセイを付き合わせちゃったようなものだから、今度はセイが欲しいもののクエストを一緒にやろうね」
「えっ!?」
「そういえば、セイってどんなものが好きなの?欲しいものとかないの?」
「僕ですか?そうですね……特にないかもしれません。昔から、あまり物にこだわるタイプではなくて」
「へえ~、セイもそうなのか。実はね。私もあんまり物に固執しないタイプなんだよ。だからプレゼントをもらうよりも、一緒の時間を過ごせるほうが好きなんだよね」
少し考えるように続ける。
「でもね、気に入ったものはずっと使うタイプ。だから物を買うときは、必ず1番好きなものを選ぶようにしてるの。そうすれば後悔しないし、ずっと好きでいられるから」
「なんだか、セツナさんらしいですね」
「そう?でも、それが私の価値観なんだよ」
セイは少し間を置いてから言った。
「……たぶん、僕も似たような考え方です」
視線を外し、静かな声で続ける。
「物そのもの、というよりは……そのときにどんな気持ちだったかとか、どうしてそれを選んだのかとか……そっちのほうが、後に残る気がして……」
短く息を吐く。
「思い出って、だいたい何かと一緒についてきませんか。匂いとか、音楽とか、景色とか、そういうものと結びついてるから、結果として“その物”が大切に思えるんだと思うんです」
セツナは小さく頷いた。
「思い出って、いつも何かに関連付けて思い出すからね。だから、本当に大事なのは物そのものじゃなくて、きっとそれにまつわる思い出なんだろうね」
「……そうですね。きっと、それが本当の意味での宝物なんだと思います」
セツナは柔らかく笑った。
「ふふっ。セイの言う通りだね。でもこうやって考えてみると、やっぱり私とセイって、なんか似た者同士な気がするよ。だからかな。一緒にいると落ち着くんだよね」
「……落ち着く、ですか……そう言ってもらえるのは……僕も、なんだか嬉しいです……」
「ふふっ。それじゃ無事にクエストも終えたことだし、今日はこの辺で帰ろうかな」
「はい。今日もご一緒できて、楽しかったです」
「私もだよ。今後も、簡易クエスト一緒にやってみようね」
「はい……セツナさんがしたいことなら何でも」
「ちょっとセイ。私がしたいことじゃなくて、キミも一緒にやりたいことじゃないとだめだよ?」
「えっ!?」
「二人で一緒に何かやるのが楽しいんだからさ。次は、セイも楽しめるクエストにしようね」
「セツナさん……ありがとうございます……」
「それじゃ、また3日後ね。セイ、また」
「はい。セツナさんも、お気をつけて」
こうして2人の距離は、自然と、けれど確実に、また1歩近づいた。
(第14話に続く)