■ Eternal Arc ~バーチャルとリアルの交錯物語~ <エピソード0> ■(第12話) | 世羅の気功と日常ブログ

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広場を並んで歩いていると、セツナがふと立ち止まり、視線を動かした。

 

「ねえ、セイ」


「はい?」


「この前気づかなかったけど、ここにこんなのあったんだね」

 

指さした先には、掲示板のようなものがあった。


広場の一角に設置された、簡易クエストボードだ。

 

セイは一歩近づき、表示内容を確認する。

 

……日常系クエストの一覧ですね短時間で参加できるものが多いようです」


「へえ」


「強い人とかじゃなくても、気軽にできる感じ?」


「はい。個人でも、複数人でも参加可能ようです報酬はマネーか、便利アイテムですね」


「ふーん、面白そう」

 

セツナは一覧を上から下まで眺めてから、少し楽しそうに言った。

 

「ね、セイ。せっかくだし、何か1つやってみない?」

 

セイはすぐには答えず、内容をもう1度確認する。

 

……短時間で終わりそうなものが多いですねセツナさんがよろしければ、無理のないものを」


「うん。軽いやつでいいかな」

 

視線を動かしたとき、セイはひとつの表示に目を留めた。

 

《簡易クエスト:迷子の子どもの保護》


《報酬:小額マネー+装飾用バレッタ(花モチーフ)》

 

……これ」

 

セイが表示を示す。

 

「報酬、バレッタだそうですよ


「え、ほんとだ。これ可愛い」

 

セツナが即反応する。

 

「ね、これやろうよ」


……そうですね。難易度も高くありませんし、時間的にもちょうど良いかもしれません」

 

 

指定地点に着くと、不安げに立ち尽くしている小さなNPCの子どもがいた。

 

……あの子ね」

 

セツナはほとんど迷わず歩み寄る。

 

「大丈夫?どうしたの?」

 

しゃがんで、視線を合わせる。


その様子を少し離れた位置から見ながら、セイは周囲を見渡していた。

 

人の流れ。


NPCの巡回ルート。


行き止まりになっている通路。

 

……」

 

小さく考えてから、静かに言う。

 

「セツナさん。そのまま、ここで待っていてもらえますか」


「え?」


「この子がここまで来られた、ということは、親御さんもこの広場までは来ている可能性が高いです」

 

視線を、通路の入口へ向ける。

 

NPCは基本的に“元の行動範囲”に戻ろうとします探し回るより、戻り口を押さえたほうがきっと早い」

 

セツナは一瞬考えてから、頷いた。

 

「なるほど。じゃあ私は、この子と一緒にいるね」

 

少しの沈黙。

 

セイは戻ってきて、セツナの横ではなく、少し前に立つ。

 

人の流れを遮る位置。

 

……風除け、か)

 

セツナは気づき、何も言わずに微笑んだ。

 

(第13話に続く)