■ Eternal Arc ~バーチャルとリアルの交錯物語~ <エピソード0> ■(第11話) | 世羅の気功と日常ブログ

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それから2人は何度か顔を合わせていたが今日は特に目的も決めず、ただ並んで歩いていた。

 

人の流れが少し多い通りに出たとき、セツナがふと足を止める。

 

……ちょっと待って」

 

「はい?」

 

顎で、少し先を示す。

 

「今の人、なかなかじゃなかった?」

 

視線の先には、すれ違っていく男性プレイヤー。


確かに、整った顔立ちではある。

 

セイは一瞬だけ確認してから、首を傾げた。

 

……そうでしょうか」

 

「え、分かんない?」

 

「正直に言うと……あまり基準が分からなくて」

 

「え、ちょっと待って。“基準が分からない”ってどういうこと?」

 

……はい?」

 

セツナは人差し指を立てる。

 

「イケメンにはね、ちゃんと種類があるの」

 

「種類……ですか?」

 

「王道系、塩系、知的系、無自覚系。あと、顔は普通でも雰囲気で全部持っていく人」

 

楽しそうに、少し早口になる。

 

「声と表情のギャップとか、立ち姿が綺麗とか、眼鏡外したら急に美形とかね」

 

「あの……」

 

「中性的な顔立ちとか、瑞々しさが残ってる青年とか、綺麗系男子も捨てがたいし……」

 

「セツナさん……」

 

そこで、はっとしたように口を閉じる。

 

「あ」

 

小さく笑って、手を振った。

 

「ごめんごめん。また熱くなってたね」

 

「い、いえ……」

 

「でもね」

 

歩き出しながら、何でもない調子で続ける。

 

「誤解しないでほしいんだけど、私、イケメンが好き=恋愛対象、ってわけじゃないから」

 

……?」

 

「ただの鑑賞物として好きなだけ」

 

あっさりと言い切る。

 

「実際に人を好きになるときは、顔より中身のほうがずっと大事って思ってる」

 

セイは、少し意外そうに目を向けた。

 

「内面……ですか」

 

「うん。一緒にいて安心できるとか、価値観が合うとか、そういうところ」

 

少し間を置いてから、笑う。

 

「だからさ。顔が良くても中身が合わなかったら無理だし、逆に、顔なんてどうでもよくなることもあるよ」

 

セイは、その言葉を静かに受け止める。

 

……そうなんですね」

 

「そうそう。心の潤いとしてイケメン鑑賞してるだけ」

 

少し歩いてから、セツナが言う。

 

「そういえばさ。今の話で思ったんだけど……セイって、リアルだとどんな人なの?」

 

「僕ですか?」

 

「年齢とか、雰囲気とか」

 

一拍、間を置く。

 

「年齢は……28です」

 

「ふーん」

 

「外見については……特に目立つようなものはないと思います」

 

「自己評価、相変わらず低いね」

 

「現実でお会いしたら、イメージと違うかもしれませんし」

 

半分本気で、半分は予防線。

 

セツナは肩をすくめて笑った。

 

「大丈夫だと思うよ。さっき言った通りだし」

 

……?」

 

「顔より、その人がどう人と関わろうとするかのほうが、ずっと気になるからそれにさ、私もセイが思ってるような人じゃないかもしれないしね」

 

そんな……セツナさんはどんな姿でも、きっと素敵な方だと思います」

 

「そうかな?」

 

「はい。お人柄や雰囲気を見ていれば、そう思えます」

 

「ふふっ。セイってば。でもね。ほんと、リアルでの姿がどうとかも、もちろん無関係じゃないけど。でも私にとっては、今ここにいるセイがセイだからさ。だから、そこまで気にしてないっていうのが一番の本音かな」

 

その一言は、慰めでも、評価でもなく、ただの事実のように落ちてきた。

 

セイはそれ以上、何も言わなかった。

 

けれど、胸の奥で、小さく何かがほどけたような気がした。

 

(第12話に続く)