そして、数日後。
町を歩いていると、セツナがふと思い出したように言った。
「そういえば以前ね、イベントで知り合ったプレイヤーさんがいてさ。“リアルで会わない?”って誘われちゃったんだ」
「えっ……!?」
セイの顔から血の気が引く。
「なんかリアルで会うなんて楽しそうでしょ?イケメンだし、ドキッとしたよ」
セイの世界が崩れるような感覚。
(どうしよう…セツナさんを知らない男性に取られる……?もしセツナさんがリアルで誰かを好きになったら……もう僕のことなんて思い出さなくなる……?……そんなの嫌だ!)
恐怖が先に立ち、理性が溶けていく。
「会うなら……僕と会ってください!!」
「えっ、どういうこと?」
「僕……NPCじゃないんです!!プレイヤーなんです!!リアルの世界に実在しているんです!!だから……僕を置いていかないでください……!」
セツナの瞳が揺れる。
(NPCじゃない……?プレイヤー……?どういうこと……?)
「ちょっと待って。セイ、少し落ち着こう?えっとつまり今の話を整理すると、セイはNPCではなくプレイヤーだってことだよね?でも……なんで今まで隠してたの?」
「あなたにとっての僕はNPCで……その距離が心地よかったんです。それにプレイヤーだと知られたら……秘密に触れることになるから……」
「秘密……?」
「あっ…そのっ…今はまだ言えません。でも……あなたを巻き込みたくなかったんです」
セツナは息を整えて言った。
「理由があるなら、今は聞かない。でも……いつか話してね」
「はい……ありがとうございます」
セツナは続けて尋ねた。
「じゃあさ。リアルでのキミって、どんな人なの?顔とか声とか、年齢とか……」
セイは苦しげに俯いた。
「……言えません……」
「言えないと会えないよ?だって目印ないし……」
「そ、それは……!だって……!」
「“だって” なに?」
追い詰められたセイの心が、限界を越える。
「……僕……リアルで……会いたくても……会えないんです……!」
セツナの呼吸が止まる。
「……どういう意味?」
「僕は……ログアウトできな——」
ピキィィィンッ!
仮想空間全体の空気が揺れた。
《警告:規定外情報の開示を検知。アカウント消去プロトコルを起動します。》
セイの身体がノイズに崩れ始める。
「なに!?急に。セイ!?待って!!」
輪郭が溶け、声が途切れていく。
「だ……め……セツナさん……逃げて……僕……もう……」
(第5話に続く)