人類の自殺93 核の行方3 | ヒロシマときどき放送部

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2016年広島で高校の教員を定年退職し現在は山奥のお寺の住職をしています。ヒロシマのこと、放送部顧問をしてきたことを書いてみます。

 2023年11月、イスラエルがパレスチナのガザ地区を攻撃する中で、イスラエルの閣僚の一人が、ガザに核爆弾を落とすのも選択肢の一つだと発言した。ネタニヤフ首相はすぐに否定はしたが、核使用のハードルがまた一段下がってしまったと言えよう。イスラエルはすでにガザでの集団殺戮に手を染めているのだから、核兵器を使うにあたって気にすることといえば、アメリカがどのような反応を示すかということぐらいかもしれない。

 長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)によれば、イスラエルが保有する核弾頭は90発。もしガザに使うとすれば、「死の灰」がイスラエルにまで降ってきては困るから小型の核兵器ということになるだろうが、本当にそんなことになってしまったら、アメリカはどうするのか。もし黙認でもしようものなら、自分たちも使って大丈夫と考える国が他に出てきてもおかしくない。

 すでにロシアはウクライナや西側諸国に対して「核の威嚇」を行なっている。2024年1月、ロシアの安全保障会議副議長メドベージェフ前大統領がSNSで発信した。

 

 メドベージェフ氏は、ウクライナ軍が西側から供与された長距離ミサイルで、露国内のミサイル発射基地への攻撃を検討していると主張。その上で「これは核抑止に関するロシアの国家政策の基本事項が発動されるリスクがある」と投稿した。基本事項は「国家の存立が脅威にさらされる場合」などに大統領が核使用を検討すると規定している。(「読売新聞」2024.1.12)

 

 アメリカなど西側諸国がウクライナへの支援をこれ以上強化するならば、ロシアは対抗して核兵器を使うかもしれないというのが「核の威嚇」だ。これで西側諸国の軍事支援が足踏みすれば、ロシアはウクライナでやりたい放題ということになる。

 では西側諸国が「核の威嚇」を恐れずに戦闘をエスカレートさせたとしたらどうなる。あくまでも防衛のためだという口実で本当にロシアの核兵器が姿を現すかもしれない。最初はごく小さな核兵器。とは言っても、その殺傷力は恐るべきものがある。その時アメリカはどう動くのか。報復として大陸間弾道弾を使えば世界は滅亡の危機を迎えるし、自制すればアメリカを見くびる国が他にも出てくる。

 朝日新聞が2022年にアメリカの核戦略専門家マシュー・クローニグ教授にインタビューをしている。

 

 核抑止の議論は、核戦争が起きれば互いに壊滅的なダメージを受けるため、互いに抑止が働く「MAD(相互確証破壊)」の状況に集約されると考えられています。だが実際には、むしろMADこそが核戦略のスタート地点だと考えています。

 ロシアや米国などの核保有国は、互いを抑止し合うMADの構図から抜け出し、相手を脅す方法を模索してきたのです。

 いくつかの方法があります。一つは限定的な核使用。全面的な核戦争にはならないようにしつつ、相手を引き下がらせるために少しだけ核を使うのです。

 もう一つは核のチキンゲーム。瀬戸際外交です。キューバ危機のような状況で核戦争のリスクを高め、先に相手が恐れて引くことを期待するのです。(「朝日新聞」2022.4.30)

 

 どっちもやめてほしい。本当に。