爆心地ヒロシマ1 直径3マイル以上の市街地1 | ヒロシマときどき放送部

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2016年広島で高校の教員を定年退職し現在は山奥のお寺の住職をしています。ヒロシマのこと、放送部顧問をしてきたことを書いてみます。

広島平和記念資料館ホワイトパノラマ

 年末、リニューアルしてから何回目かの平和記念資料館。今回は東館の展示をていねいに見ることにした。原爆投下について、このように説明してある。

 

 1945年(昭和20年)春から、アメリカは投下目標都市の検討を始め、投下目標は、直径3マイル(約4.8キロメートル)以上の市街地を持つ都市の中から選びました。(以下略)

 

 1945年4月27日、アメリカでは軍人と科学者で構成された第1回目の「目標検討委員会」で原爆投下目標地域の選定基準が決定され、17の都市と地域が研究対象とされた。それは、東京湾、川崎、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸、呉、広島、山口、下関、小倉、八幡、福岡、長崎、佐世保、熊本。

 そして5月11日に開かれた第2回委員会で、京都、広島、横浜、小倉の4つの目標が選ばれる。その選定基準は次の3つだ。

 (1)直径3マイル以上の大規模市街地を有する重要な目標であること

 (2)爆風によって効果的な損害を与え得ること

 (3)この8月までに、攻撃を受ける可能性が低いこと(広島平和記念資料館ホームページより)

 広島平和記念資料館ホームページでは、アメリカ国立公文書館から提供された「目標検討委員会第2回会議要約」を読むことができる。(「展示・催し物」⇒「常設展示」⇒「5核兵器の危険性」⇒「5-1-3広島への投下」⇒「この項目内の資料」)

 

 広島――陸軍の重要な補給基地であり、都市工業地域の中心に位置する出港地でもある。また、レーダーの目標として適しており、市域の広範囲に大規模な損害を与え得る都市規模である。隣接する丘陵地は、爆風の集束効果を生じさせ、その被害を増幅させるであろう。複数の川が存在するため、焼夷弾の目標としては適当ではない。(AA級目標に分類される。)

 

 ここでは選定基準(1)に関して、「大規模市街地」であるとともに陸軍の「補給基地」、宇品という「出港地」が投下目標選定の理由としてあげられている。では、この中で何が最も重要だったのか。

 NHKが2016年8月6日に放映した「決断なき原爆投下~米大統領 71年目の真実~」では、軍の原爆計画責任者だったレスリー・グローブス准将が原爆投下の第一番の目標として京都にこだわったことが指摘されている。グローブスはこう言った。「京都は外せなかった。最初の原爆は破壊効果が隅々まで行き渡る都市に落としたかった」。

 どうもこれが原爆を使いたかった人たちの本音のようだ。原爆を実際に都市の上で炸裂させてどれだけの破壊効果があるものなのか、それを十分に検証できる都市が望ましかったのだ。京都の場合、原爆投下目標は京都駅の西、現在は京都鉄道博物館となっている扇形の車庫とされている。京都なら、市街地は扇形車庫を中心に直径3マイル以上の円の中に余裕で納まるだろう。では広島は?

 とにかく、原爆投下目標都市にどれだけ大きな「死の円」が描けるか。それが原爆を使いたかった人たちの一番の関心事だった。