【非常時にこそ、明らかになること】
ようやくわが国でも医療従事者を中心にワクチン接種が始まり、コロナですっかり停滞してしまった社会に、うっすら光が差してきたようです。株式市場はとっくに経済の回復期待を反映し、コロナにより一時期思い切り下落した銘柄にも、買い注文が入って来ています。
この1年は世界中の国が危機に陥ったと言えますが、こうした非常時にこそ、政治家の力量や本性が明らかになったと言えるのではないでしょうか?
つまり普段はいくら弁舌巧みな切れ者であっても、「非常時には全然頼りにならないじゃない!」と文句を言いたくなる政治家と、「おっ、私たちのために、頑張ってくれてるね!」と評価したくなる政治家とにくっきり分かれ、しかもその事実が、みんなにわかってしまったということでもあります。
【100年に1度のことではありますが・・】
まぁ、確かに世界的なパンデミックはそう頻繁にある訳ではありませんし、前回多くの国でスペイン風邪が流行り、沢山の人が亡くなったのは約100年前ですから(この時は、全世界の人口が18億人しかいなかったにも拘わらず、約4000万人が亡くなったと言われています。)今回は誰も経験したことのない、未曾有の危機だったことは、確かです。
とは言え、この1年
「常識的に考えても、そりゃあないでしょ!」とか、
「やる気、あるんですか?」
「的外れの対策では?」
「どさくさに紛れて、権力を拡げていませんか?」
「その言動は、どう考えてもマッチポンプですね・・・。」
など、誰のこととは言いませんが、折に触れて思うことも、多かったのではないでしょうか。
その一方でまだまだコロナは終息してはいないものの、発生がわかってから今までの1年間を振り返り、優れたリーダーシップを発揮したトップも、世界には少なくありません。
【コロナ禍での優れたリーダーたち】
例えば誰でも真っ先に思い浮かぶのは、台湾の蔡総統でしょう。
どこの国よりも素早く、多くの手を打ったおかげで、台湾にはほとんど死者も感染者も出ていません。
それどころか早々にマスクの開発を進め、欧米に輸出するほどの余裕振りでした。
同様に、ニュージーランドのアーダーン首相も、素早く封鎖を行い、殆ど感染者を出していません。
その後も、ごく少数の感染者が出る度、再度封鎖し、見事に封じ込めに成功しています。
また人口が少ないとは言うものの、アイスランドのヤコブスドッティル首相は、保健当局を迅速に動かして感染経路を徹底的に絶っています。その結果、大規模なロックダウンは実施せずに済んでいます。
さらに万が一隔離されるようなことがあっても、国民が安心して自宅で過ごせるよう、休業補償は何と100%(!)支給されます。
またこれらの国ほど感染を抑えられたわけではありませんが、ドイツは他のヨーロッパ諸国よりも早い段階で、封鎖を行いました。保証も手厚く行ったおかげで、近隣の国よりも、ずっと少ない感染者となっています。これはもちろん、名宰相と名高いメルケル首相の、陣頭指揮の賜物です。
この他以前SARSの被害が大きかったシンガポールは、今回早々に国境を封鎖しましたし、同様にベトナムも早めに手を打ち、被害を小さくとどめています。
【非常時に必要なこと】
こうして見ると、対策が成功している国に共通しているのは、
・正しい状況判断
これは、当たり前のようでいて、なかなか難しいかも。
状況を嘆いたり、必要以上に様子見したりしないで、嬉しくないことでも、しっかり現実を見つめることが必要です。
とは言うものの、誰でも正常化バイアスの罠にはまり、都合の悪いことは、軽く見てしまいがちです。
・適切で素早い指示
どんなに賢いリーダーでも、自分で政策を全て考える訳ではありません。
いろいろ出てきた案を、最終的にはリーダーが選択する訳ですが、周りにいるスタッフが優秀であることが前提です。耳障りの良いことばかり言うブレーンばかりでは、まず無理そう。
確かアベノマスク配布も、安倍さんのブレーンが「マスクを配れば、国民の不安も、さっと消えます。」と耳打ちしたので、決定になったはず。こういうブレーンではまずダメだという見本のような例ですが、これもリーダーには、人を見る目が必要だということですね。
そして決断力がなければ、素早い指示は出せません。いつまでも専門家の一言を待っているようでは、遅すぎた決断になってしまいます。
【忘れてならない「語り掛け」】
これらは当然のように、非常時にはリーダーに必要な行動ですが、併せて忘れてはならないのは、何と言ってもみんなへの語り掛けです。
集団であればそのメンバーに、国のトップであれば国民に語り掛け、納得してもらわなければ、不満ばかり溜まってしまい、意識は高まらず、危機管理は成功しません。
今回コロナの抑え込みに成功し、国民の満足度が高い国のリーダーは、どこも素晴らしい演説や記者会見、国民との対話を折に触れて行っています。
例えばニュージーランドのアーダーン首相は、待機している自宅から、何度かネットで国民に優しく呼びかけていますし、メルケル首相がロックダウンに先立つ3月に、国民に向けて理解と協力を訴えた演説は余りに素晴らしく、世界中で絶賛されました。
また5月の演説では、「芸術の支援は、最優先事項」と心を込めて語り、世界中の芸術家と芸術を愛する人の心を鷲づかみにしましたし、12月には珍しく感情を込めて「これを最後のクリスマスにしないで!」と自粛を訴え、これまた世界を感動させました。
こうしてみると、リーダーシップに関して、いかに言葉の力が大きいかがわかります。
ルーティンの仕事ならばともかく、新しいことをやる、転機にある、など平時ではない場合には、リーダーからの十二分の語りかけがなければ、人も組織も動きません。
それにリーダーが当たり前と思っていることが、メンバーも同じとは限らないのです。
組織では一人でも部下や後輩がいるならば、その人は既にリーダーの立場にあるということ。
特に今のように、みんなが不安を感じている時期には、なおさらです。
言葉を惜しまず、気持ちを込めて、伝えましょう。