映画「BLUE GIANT」を観る | 世日クラブじょーほー局

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 18歳の宮本大は、ある大志を抱いて仙台から上京してきた。

 

 「世界一のジャズプレーヤーになる」

 

 まったく無謀とも思える気宇壮大な野望だ。だが、本人は恬淡として動じない。大は、はじめてジャズに接したその日から、ジャズに”うたれ”てしまった。兄に買ってもらったサックスを手に取ってからというもの、来る日も来る日も人気のない土手で、一人練習に明け暮れた。半年ほど先達からレッスンを受けたものの、ほとんどが独学。しかし、その才能は、一方ならぬ情熱と相まって、3年を経て聴く者の魂を揺さぶるまでに。

 

 上京後、高校時代の友人、玉田のアパートに転がり込んだ大。アルバイトをしながら、ジャズのライブハウスを回り、腕試しの機会をうかがう。そんな中、目を見張るテクニックを披露するピアニスト沢辺雪祈と出会う。「才能がない奴が努力してもムダ」と言ってはばからず、ナルシズム漂う雰囲気は田舎モン丸出しの大とは好対照だが、同じ18歳だとわかり愕然。沢辺も大のプレイに衝撃を受け、お互いを認め合い、バンドを組むことに。

 

 それから二人はドラマー探しに奔走するが、やがて、大の情熱にインスパイアされた玉田がドラマーを目指すことになる。当初、ずぶの素人の参加に真っ向反対した沢辺も玉田の熱意に折れざるを得なかった。こうして18歳のジャズトリオ「JASS」が誕生した。目指すは、ジャズメン憧れの殿堂であるジャズクラブのステージ。しかも10代のうちに。果たして彼らを待つのは、栄光か挫折か、それとも…。

 

 18歳とジャズとはおよそ結びつき難く、火傷しそうなテーマだが、そこがポイントだろう。クラシックやロックなどではありきたりすぎたのだ。原作は「音が聞こえる漫画」と評されるようである。18歳という人生の揺籃期。怖いモノ知らずではっちゃけて、「負ける気がしねえ」とか…。失敗してもいくらでも修正が効くわけだし。ここ、人生思い切るとこって感じ?

 

 大は、「~したい」でなく、必ず「~する」と宣言し有限実行がモットーだが、人一倍負けん気が強い性分でもある。そして小賢しさとは無縁の、一途さと愚直さで周囲が巻き込まれていく。ナポレオンヒルの「思考は現実化する」を地でいくようでもある。イチローや本田圭祐などは小学校のときの作文で、それぞれ、プロ野球選手になる、世界一のサッカー選手になるとしたため、夢を実現している。一流と言われる人物は、栴檀は双葉より芳しというが、いかに早く動機付けできるかが勝負の分かれ目か。

 

 本作は昭和のスポ根とはまた違う風情だが、Z世代と言われる大と同世代に、これ、と思う自分の人生を賭けるものに出会うこと、そして夢の実現のため、遮二無二、脇目も振らず打ちこむこと。そこに生きる喜び、人生の醍醐味があることを教えてくれる作品だ。

 

(監督)立川譲

(キャスト)

山田裕貴、間宮祥太朗、岡山天音ほか