映画「ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男」を観る | 世日クラブじょーほー局

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 本作は、1940年5月9日、英議会における首相チェンバレンに対する囂々たる非難の場面から始まり、野党が認める後継として、チャーチル海軍大臣に白羽の矢が立てられてのち、同年5月28日、仏ダンケルクに追い詰められた英軍将兵30万人の救出作戦(=ダイナモ作戦)の決行と、その完了までの27日間を描く。

 

 本作の核心テーマはこうだ。ヒトラー率いるナチスドイツ軍により、東欧や北欧が制圧され、ベルギーまで攻め落とされるに及んで、やむなくヒトラーと和平するのか、それとも仏カレーに残る守備隊4千人を敢えて犠牲にして、ダイナモ作戦を決行し、断固として戦い抜くのか。

 

 さしものチャーチルもその心中は激しく揺れ動くのだったが、最後に彼の背中を押したのは、国民だった。チャーチルが国会議事堂に向かう車を途中で降りて、初めて地下鉄に乗り、市井の人々の生の声を聞くというシーンはフィクションだそうだが、ともかく、国民はヒトラーへの宥和などこれっぽっちも望んでおらず、徹底抗戦を説くチャーチルを励ましたのだ。

 

 チャーチルの信念を伝える名言が、「勇敢に戦って敗れた国はまた起き上がれるが、逃げ出した国に未来はない」だ。チャーチルは戦争屋と呼ばれたり、週に100本の葉巻を吸い、昼間から酒を呷るなど変わり者で、政界一の嫌われ者だった。なおかつ第一次大戦においてオスマントルコに対して挑んだガリポリの戦いで悲劇的な敗退をもたらした失策により、当初、国王からの信用もなかった。ただヒトラーに対する観察眼はピカイチで、さらに、前任のチェンバレンや前外相だった貴族のハリファクスと違い、肚を持った政治家だった。彼なくして英国の今はなかったといえるのだが、それにも増して、彼を支持した英国民に唸らざるを得なかった。

 

 翻ってわが日本である。戦後73年、GHQ製の憲法を後生大事に、一言一句変えることなく、安全保障は米国におんぶに抱っこで来た。本作は、平和ボケに浸りきったわれわれ日本人に、それでいいのかと覚悟を突き付ける。それでなくても東アジア情勢は不穏であり、うさん臭い南北融和など眉にツバ付けてみておくべきで、中共の覇権主義はとどまることを知らない。日本国民は、一旦緩急あれば、あの英国民のように立ち上がってみせるのか。せめてまず、第一弾の憲法改正くらいはクリアしようね。

 

 ただ、チャーチルは一方では、米国を第二次大戦に引きずり込み、日本を挑発して真珠湾に至らせた張本人であり、ヤルタ会談においては、スターリンに対日参戦を認めた。その歴史もおさえるべきである。

 

 本作は、第90回アカデミー賞において、ゲーリー・オールドマン主演男優賞、日本人の辻一弘がメイクアップ&ヘアスタイリング賞をそれぞれ受賞。心から拍手を送りたい。

 

(出演)

ゲイリー・オールドマン、クリスティン・スコット・トーマス、リリー・ジェームズ、スティーブン・ディレイン、ロナルド・ピックアップ、ベン・メンデルゾーン

(監督)ジョー・ライト