東野圭吾著「麒麟の翼」(講談社)を読む | 世日クラブじょーほー局

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麒麟の翼 (特別書き下ろし)/東野 圭吾

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 当方は、小説は、ほとんど読みません。よっぽどのトピックがある場合は別ですが。当代人気の村上春樹や、宮部みゆきも読んだことないし、まして、東野圭吾など興味の対象外だったのですが、昨年、TBS日曜劇場で、「新参者」をやりましたね。これに興味が湧いたというのは、この物語の舞台である日本橋を中心とする界隈が、自らのホームグランドだったからに他なりません。実際、撮影風景もチラと見れた。また人形町界隈の商店街には、今もいたるところにポスターが貼ってあります。しかし、結局ドラマは1回も見なかったのでした。

 年が明けて、今年正月のスペシャルドラマ「赤い指」を偶然目にし、現代家族の肖像を赤裸々に写したストーリーに、杉本哲太など俳優陣の鬼気迫る演技、また人間心理の描写の巧みさ、ラストのどんでん返しなど圧倒され、思わず見入ってしまいました。

 それから、この「加賀恭一郎シリーズ」を極めたいと思いたち、「新参者」から始まり、「赤い指」「卒業」「嘘をもうひとつだけ」「どちらが彼女を殺した」とランダムに読んできました。推理小説なので、奇抜な犯行手口や、謎解きが見所なのは勿論なのですが、日本人情緒にしっくりくるストーリーと、特に「家族」が中心テーマとして描かれてるところが良かった。しかし何といっても加賀恭一郎という人物のクールで、底知れない雰囲気と人間的な好感度のゆえです。阿部寛はあまりに適役で、カッコいいですね。

 3月にシリーズ最新刊が刊行されるということは、知っていましたが、3・11の大震災によって、すっかり吹き飛んでしまいました。

 しかし、ついに加賀恭一郎シリーズ最新刊の本書を手にすることになりました。帯には、「加賀シリーズ最高傑作」とあり、東野圭吾自ら‘その看板に偽りなし、と作者からも一言添えておきます’とある。自分で言うか!と思いましたが、反面、内心期待は高まりました。がしかし…といえば、ガクッとくるかもしれませんが、読後は「ん~」と首を傾げることしきり。

 物語は、現在の日本の長期不況の社会情勢を背景にして、階層や立場の違う登場人物の暮らしや人間模様を切り取り、それらが、日本橋の麒麟像をキーワードとして、徐々にシンクロし、クライマックスに向かって展開していきます。しかし、そのひとつひとつの人間模様が、目新しいものが何もなく、手垢にまみれた凡庸そのもので、シンドかった。確かに、身につまされるような台詞もあったし、現実と二重写しの悲しくやりきれない気持ちとそれでもかすかな希望を抱かせてくれるラストに心をくすぐられた。だがこれは”最高傑作”とは、感じなかった。何より、どうにも加賀が輝いていない。(シャレじゃないけど)最高傑作というなら「赤い指」のほうがそうだと思う。失敬ながら。

 なんとこの「麒麟の翼」の劇場版が来年1月公開だそう。加賀恭一郎シリーズでは初の映画化。今見に行くかどうか、かなり迷っている。

 無論、これで加賀シリーズが終わったわけではないし、これからも‘最高の加賀恭一郎’を求めて読破していきたいと思います。他の東野作品は、とりあえず今は触れない予定。ハマると怖いから。