
作品データ :
原題 The Graduate
製作年 1967年
製作国 アメリカ
上映時間 106分
日本初公開 1968年6月8日

将来に不安を抱えるエリート青年が、人妻と不倫の末にその娘と恋に落ちる姿を描き、無名の舞台俳優だったダスティン・ホフマンを一躍スターにした青春(恋愛)映画。主人公を取り巻く母娘には、オスカー女優アン・バンクロフトと『明日に向って撃て!』(1969年)のキャサリン・ロス。チャールズ・ウェッブ(Charles Webb、1939~)の小説“The Graduate”(1963)(佐和誠訳『卒業』早川書房、1968年)をもとに、マイク・ニコルズ(Mike Nichols、1931~2014)がメガホンを取り、第40回アカデミー賞で監督賞を受賞。アメリカン・ニューシネマを代表する作品の一つ。日本でも、劇中に流れるサイモン&ガーファンクルの楽曲「サウンド・オブ・サイレンス」「ミセス・ロビンソン」などとともに大ブームを巻き起こした。結婚式場から花嫁を奪い去る場面は、映画史に残る名シーンとしてあまりにも有名。2019年6月7日より4Kデジタル修復版でリバイバル上映(配給:KADOKAWA)。
ストーリー :
学業でもスポーツでも優秀な成績を収めたベンジャミン・ブラドック(ダスティン・ホフマン)は、大学を卒業したものの、それが何のためなのか、疑問を感じ、将来に対する不安で苛立っていた。だが、そんなベンジャミンの心も知らず、両親は盛大な卒業祝賀パーティーを催す。口先だけのお世辞や諂(へつら)いにいたたまれず部屋に逃げこんだベンジャミンを、父親(ウィリアム・ダニエルズ)の職業上のパートナーであるミスター・ロビンソン(マーレイ・ハミルトン)の妻ミセス・ロビンソン(アン・バンクロフト)が追いかけてきた。彼女は強引にベンジャミンを家まで送らせ、決して誘惑してはいないなどと口では言いながら彼の前で裸になって、彼を挑発する。ちょうどそこへ、ミスター・ロビンソンが帰ってきたので、その場は何事もなかったが、この誘惑はベンジャミンにとって強い刺激となり、数日後、彼は自分の方からデートを申し込んだ。2人はこうして、しばしばホテルで会うようになった。だが、この2人の関係は、ミセス・ロビンソンの娘エレイン(キャサリン・ロス)が学校休みで戻ってから、大きく崩れていく。両親の勧めで、初めはいやいやながらエレインとつき合ったベンジャミンだが、その可憐さ・清純さに次第に本気で愛するようになった。娘の恋に嫉妬したミセス・ロビンソンは、ベンジャミンに娘とつき合ったら、自分との関係をバラすと脅迫した。しかし、この脅迫もベンジャミンをさらに激しい恋に駆り立てるばかり。ついにミセス・ロビンソンは捨て身の妨害に出て、ベンジャミンとの関係を明らかにした。ショックを受けたエレインは、学校へ戻った。そのエレインをベンジャミンは追う。だが、そこにはロビンソン夫妻が娘と結婚させようとしているカール(ブライアン・エイヴリー)という青年がいた。それでも、ベンジャミンはエレインを追ったが、とうとうエレインとカールの結婚式が挙行されることになった。式は進み、クライマックスに達した時、ベンジャミンが飛び込んできた。両親や参列者を押しのけると、彼は花嫁を盗み出し、通りかかったバスに飛び乗った。バスは2人を乗せて永遠なる結婚の幸福へと走り去った―。
▼予告編
▼ finale (GREAT SCENE) :
■私感 :
本作を観るのは、今回が3回目。最初は1968年の日本初公開時、2回目は90年代にVHSで、そして今回。
“アメリカン・ニューシネマ”(cf. 本ブログ〈May 27, 2015〉)を愛好した私が、本作に懐旧の情を禁じ得ないこと、これは言うまでもない。サイモン&ガーファンクル(Simon&Garfunkel |cf. 本ブログ〈October 16, 2015〉)の曲~特に「サウンド・オブ・サイレンス(The Sound of Silence)」~と結婚式のラストシーンが記憶に生々しい!

本作では、ダスティン・ホフマン(Dustin Hoffman、1937~)、キャサリン・ロス(Katharine Ross、1940~)という若い二人の好演も見逃せないが、何よりも有閑マダムのミセス・ロビンソンに扮したアン・バンクロフト(Anne Bancroft、1931~2005)の存在感が圧倒的。
ダスティン・ホフマンは本作が出世作となり、その後の活躍で名声を確立するにいたるが、率直に言って、彼は私好みのタイプの男優ではない。『クレイマー、クレイマー』(原題:Kramer vs. Kramer、1979年)や『レインマン』(原題:Rain Man、1988年)にしても彼が達者な芸の持ち主であることは認めるが、風采がぱっとしないせいか、彼の全体像が私の目を奪いつづけることはほとんどない。
アン・バンクロフトとキャサリン・ロスは、二人とも私好みのタイプの女優だ。
アン・バンクロフトと言えば、私は『奇跡の人』(原題:The Miracle Worker、1962年)に主演したバンクロフトの存在感のある迫真の演技が忘れがたい。同作は「見えない」「聞こえない」「話せない」の三重苦のヘレン・ケラー(Helen Keller、1880~1968)が自身も盲目を克服したという女教師アン・サリバン(Anne Sullivan、1866~1936)によって人生に光明を見いだすまでの苦闘を描いた感動ドラマ。アン・バンクロフトはヘレン(演:パティ・デューク)に効果的で何より厳しくも人間的な教育を授けるサリバン役を熱演して第35回アカデミー賞主演女優賞を受賞。
キャサリン・ロスの出演作では、本作以上に思い出深いのが、『明日に向って撃て!』(原題:Butch Cassidy and the Sundance Kid、1969年)。同作は実在した2人のアウトロー[ブッチ・キャシディ(演:ポール・ニューマン)とザ・サンダンス・キッド(演:ロバート・レッドフォード)]をモデルに、彼らの自由奔放な生きざまをユーモラスかつシニカルに描いた青春西部劇の傑作。キャサリン・ロスはサンダンスのガール・フレンドで、女教師のエッタ・プレイスを魅力的に演じて第24回英国アカデミー賞主演女優賞を受賞。


