1992年の“ロサンゼルス暴動(Los Angeles riots)”を背景に、家族と暮らせない子供たちを育てるホストマザーの一家とその隣人を描く社会派ドラマ。ホストマザーのミリーに扮するのは、『チョコレート』でオスカーを獲得し、その後も話題作へ出演し続ける、誰もが認める実力派性格女優ハル・ベリー。そして、ミリー一家を見守る隣人オビーには、『007』シリーズのジェームズ・ボンド役でお馴染みのダニエル・クレイグ。監督は、長編デビュー作『裸足の季節』(本ブログ〈July 10, 2016〉)でアカデミー外国語映画賞にノミネートされるなど世界的に高い評価を受けたトルコ出身(幼少時にフランスに移住)の新鋭デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン(Deniz Gamze Ergüven、1978~)。彼女がシナリオハンティングで訪れたLAサウスセントラルで何人もの子供たちをホストマザーとして育てている女性ミリーと出会ったことから、アメリカ史上最悪の規模の都市暴動となったLA暴動を、暴動主体ではなく、市井に住む普通の家族の視点から描くというアイデアが生まれた。
本作の原題「Kings」は、様々な解釈が可能なタイトルだが、基本的に「数多くのロドニー・キングたち」を意味すると思われる。その意味合いで、端的にはロス暴動の起点となった“ロドニー・キング事件”の被害者ロドニー・キング(Rodney King、1965~2012)を、また1960年代に公民権運動を推進したマーティン・ルーサー・キングJr.牧師〈Martin Luther King, Jr.、1929~1968/04/04〉)を指すが、さらには本作の「パリに住むトルコ人」~フランスに足場を置くトルコ人~エルギュヴェン監督が学生時代を過ごした南アフリカのネルソン・マンデラ(Nelson Mandela、1918~2013)や、“2005年パリ郊外暴動事件”(警察に追われたアフリカ系移民が変電所に逃げ込んで感電死したことをきっかけに勃発した暴動)の犠牲者や、トルコの現強権下で抑圧される人々などのメタファーでもある。ちなみに、本作では、キング牧師と縁がある2人のミュージシャンの曲が各1曲使われている。1曲はファンクの帝王ジェームス・ブラウン(James Brown、1933~2006)の代表曲「Say it Loud - I'm Black and I'm Proud 」(1968)、もう1曲はエンディングで流れるジャズ歌手ニーナ・シモン(Nina Simone、1933~2003)の「Ooh Child」(ファイヴ・ステアステップス〈The Five Stairsteps〉が70年に発表した曲を71年にカバー)。
▼ cf. The Attack on Reginald Denny(レジナルド・デニー集団暴行事件) : (The attack on Reginald Denny was an incident in the 1992 Los Angeles riots in which Reginald Denny, a white construction truck driver, was beaten nearly to death by a group of black men who came to be known as the "L.A. Four". The attack was captured on video by a news helicopter, and broadcast live on US national television.)
作品データ : 原題 FAR FROM THE TREE 製作年 2018年 製作国 アメリカ 配給 ロングライド 上映時間 93分
作家アンドリュー・ソロモン(Andrew Solomon、1963~)が10年間で300以上に及ぶ親子を取材した、世界的ベストセラー・ノンフィクション“Far From The Tree:Parents, Children and the Search for Identity”(2012)を映画化したヒューマン・ドキュメンタリー。自閉症、ダウン症、低身長症、LGBTなど“違い”を抱える子を持つ6組の親子にカメラを向け、“普通”でないことの葛藤と向き合いながらも、“違い”を前向きに受け止め、ありのままを受け入れ愛する親子の飾らない姿を見つめていく。監督は社会派ドキュメンタリーを数多く手がけるレイチェル・ドレッツィン。
ストーリー : 様々な“違い”を持った子供が直面する困難とその経験から得られる喜び!その“違い”を欠陥としてではなく光として祝福する方法を見出していく6組の親子は、幸せの形が無限に存在していることを、私たちに気づかせてくれる―。 原作者アンドリュー・ソロモンの父ハワードは、ニューヨークの薬品会社フォレスト・ラボラトリーズ社の元会長で、母はアンドリューが同性愛者であることを受け入れることなく、彼が27歳のときに卵巣ガンで亡くなった。その後、深刻なうつ病を克服したアンドリューは父と和解し、同性パートナーと結婚、現在はパートナーと息子と暮らしている。ダウン症のジェイソンの母で、エミー賞受賞脚本家・エミリーと夫はダウン症の子でも学べることを立証した。ジェイソンはダウン症の人との可能性を世に示す代弁者として人気を博し、現在は友人3人と共同生活を送りながらラジオ局に勤めている。タイピングを覚えるまで言葉を発したことはなかった自閉症のジャックの両親オルナット夫妻は、ジャックのためにあらゆる治療法を試した。息子トレヴァーが16歳のときに8歳の少年の殺人で終身刑となったリース夫妻は、トレヴァーの弟・妹ともに住む場所を変え、新たな生活を送っている。エルサルバドルとアメリカンサモアの血を引くアメリカ人で、マジュースキー骨異形成性原発性低身長症2型(Microcephalic osteodysplastic primordial dwarfism type II)という非常に珍しい型の低身長症のロイーニは、低身長症の人々の生活を支援する団体リトル・ピープル・オブ・アメリカの年次大会に初めて参加する。ソーシャルネットワークサービス「MySpace」を通じて出会った低身長症の夫婦リアとジョセフは、夫婦ともに障害者の自立や権利のために、積極的に活動している。
作品データ : 原題(スペイン語) La batalla de Chile:La lucha de un pueblo sin armas 英題 The Battle of Chile:The Struggle of an Unarmed People 製作年 第1部‐1975年/第2部‐1976年/第3部‐1978年 製作国 チリ/フランス/キューバ 配給 アイ・ヴィー・シー 上映時間 第1部‐96分/第2部‐88分/第3部‐79分
ストーリー : 第1部:「ブルジョワジーの叛乱」(La insurrección de la burguesía) 1973年3月のチリ議会選挙における左派(人民連合)の予期せぬ勝利に続く、右派による攻勢の激化を検証する。議会制民主主義がアジェンデの社会主義政策を阻止できないことを思い知った右派は、その戦略を国民投票から街頭闘争へと転換する。第1部は右派が政府を弱体化して危機的状況を引き起こすために、デモやストライキの扇動から暴動、そしてテロへとその暴力的戦術をさまざまに駆使する様子、そして遂には軍部がクーデター未遂事件を引き起こすまでの数か月間を追う。
第2部:「クーデター」(El golpe de estado) 第1部の終盤に登場した1973年6月29日のクーデター未遂事件で幕を開ける。この「クーデター未遂」は軍にとって有益な予行演習となったことは明らかであり、「本番」が行なわれるのは時間の問題だと誰もが認識しはじめた。左派は戦略をめぐって分裂し、一方右派は着々と軍による権力掌握の準備を進める。最終的に73年9月11日の朝にクーデターが実行に移され、大統領府は軍による爆撃を受け破壊される。アジェンデはラジオを通じてチリ国民に向け演説をした後、拳銃自殺と思われる死を遂げる。同じ日の夜、アウグスト・ピノチェトを議長とする軍事評議会のメンバーがテレビ出演し、新たな軍事政権の発足を宣する。
第3部:「民衆の力」(El poder popular) 平凡な労働者や農民が協力し合い、“民衆の力”と総称される無数の地域別グループを組織していく姿を追う。彼らは食糧を配給し、工場や農地を占拠・運営・警備し、暴利を貪る 闇市場に対抗し、近隣の社会奉仕団体と連携する。こうした活動は、まず反アジェンデ派の工場経営者や小売店主や職業団体によるストライキへの対抗手段として始められたものだった。やがて“民衆の力”は、右派に対し決然たる態度で臨むことを政府に要求する、ソビエト型の社会主義的組織体へと徐々に変質していく。
作品データ : 原題 A STAR IS BORN 製作年 2018年 製作国 アメリカ 配給 ワーナー・ブラザース映画 上映時間 136分
これまでにも何度もリメイクされてきた1937年の名作『スタア誕生』(原題:A Star Is Born、ウィリアム・A・ウェルマン監督)を原作に、世界的歌姫レディー・ガガが映画初主演を果たし、相手役を務める『世界にひとつのプレイブック』『アメリカン・スナイパー』のブラッドリー・クーパーが記念すべき監督デビューを飾った感動の音楽ドラマ。国民的人気を誇るロック・スターに才能を見いだされたヒロインが、スターダムへと上り詰める姿が描かれる。第91回アカデミー賞で作品賞を含む8部門でノミネートされ、歌曲賞(主題歌賞)を受賞した。
“痛ましくも痛快な、愛すべき物語” ーUSA today “忘れられないほど美しいショットと物語”ーNewYork Post “詩的で、愛おしく、優しく、そしてすべて真実”ーCicago Sun Times “私たちが待ち望んでいたインディペンデント映画”ーIndependent on Sunday “初めて脚本・監督したデヴィッド・ロバート・ミッチェルによる、今まで語られなかった、こんなにもみずみずしく心を奪う青春物語”ーLos Angeles Times “美しく描写されたティーンの苦悩の物語”ーHollywood Reporter “なかでも素人俳優たちによる自然な演技が素晴らしい”ーTime Out London “驚くべき魔法のインディペンデント映画”ーMail on Sunday “ミッチェルは、これらすべての感情をジャグリングし、絶妙なバランスでスクリーンに映し出した。彼のこの小さな映画は、彼らの若々しい不完全さを完璧に描いている”ーAssociated Press
ここで思わず知らず、ある青春映画の傑作が思い浮かぶ。 私はこれまでに~小学校時代以降~、洋画・邦画を問わず、数多の“青春映画”(若者特有の夢や挫折、友情や初恋、冒険と旅立ちを描いた映画のジャンル)を鑑賞してきた。それらの作品中、ことのほか印象的で、今なお忘れがたい作品の一つが伝説のハリウッドスター、ジェームズ・ディーン(James Dean、1931~1955/09/30)の主演作『理由なき反抗』(原題:Rebel Without a Cause、監督:ニコラス・レイ、米国公開:1955年10月)である。 それは、出世作『エデンの東』(原題:East of Eden、監督:エリア・カザン、米国公開:1955年3月)で現代の若者の揺れ動く心情を代弁した名優J・ディーンが、今度は非行少年の役で当時の保守的なハリウッドに大反響を呼んだ、映画史上屈指の青春映画にほかならない。そこでは、親の世代の考え方を容認できず、反抗を繰り返す若者たちの、もろく傷つきやすい等身大の青春像が間然するところなく描かれている。
※何しろ同作には、主演のディーンに加えて、私の最も好きな女優のタイプの一人であるナタリー・ウッド(Natalie Wood、1938~81)が出演しているではないか!ちなみに、彼女の主演作(ミュージカル)『ウエスト・サイド物語』(West Side Story、1961年)~シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を下敷きにした同名のブロードウェイ・ミュージカルの映画化作品~も良かったが、ウォーレン・ベイティ(Warren Beatty、1937~)と共演した『草原の輝き』(Splendor in the Grass、1961年)~1920年代のアメリカを舞台にエリア・カザン(Elia Kazan、1909~2003)がメガホンを撮った青春(悲恋)映画~、これ最高でした!
Cf. “Splendor in the Grass” ー Wordsworth's poem in the final scene :
【ウィリアム・ワーズワース(William Wordsworth、1770~1850)の詩(“Ode:Intimations of Immortality from Recollections of Early Childhood”)の一節: Though nothing can bring back the hour Of splendour in the grass, of glory in the flower; We will grieve not, rather find Strength in what remains behind...】