映画『女神の見えざる手』再見 | 普通人の映画体験―虚心な出会い

普通人の映画体験―虚心な出会い

私という普通の生活人は、ある一本の映画 とたまたま巡り合い、一回性の出会いを生きる。暗がりの中、ひととき何事かをその一本の映画作品と共有する。何事かを胸の内に響かせ、ひとときを終えて、明るい街に出、現実の暮らしに帰っていく…。

2018年4月4日(金)目黒シネマ(東京都品川区上大崎2-24-15 目黒西口ビルB1、JR山手線目黒駅西口から徒歩3分)で、15:05~鑑賞(再見)。『ザ・サークル』 17:35~と2本立て上映。

本作は同年1月28日、「ココロヲ・動かす・映画館○」で初見(本ブログ〈January 28, 2018〉)。



ジョン・マッデン監督(John Madden、1949~)オフィシャル・インタビューCinemaTribune-2017年10月19日) :
Q:ジェシカ・チャステインについて
エリザベス・スローン役はジェシカ・チャステインにぴったりだ。以前『ペイド・バック』(2010・日本未公開)という作品で彼女と一緒にしたことがある。当時『ツリー・オブ・ライフ』の撮影は終わっていたが、まだ公開はされていなかったから、彼女は有名人じゃなかった。その頃のジェシカは僕にとって埋もれたダイヤだった。当時から彼女の実力には驚いていた。今回の主役も彼女しかいないと思ったよ。脚本を読み、すぐに決めた。そして初めて本作の打ち合わせをした日にジェシカ側から連絡があった。僕はあるイベントでニューヨークにいたんだが、「脚本が気に入ったから出演したい」と電話が来たんだ。

Q:脚本のどこが気に入っているか
実によくできた脚本だ。台詞がごく自然な会話になっている。アイロニーや間接的な表現が多く、ウィットに富んでいて非常におもしろい。だが、一番の売りは「驚き」だろう。すべてが策略によって進められる業界だからね。ロビー活動のポイントはいかに他人を感化し、賛同得るかということなんだ。そのためにはあらゆる手を尽くす。最近ではすっかり評判の悪い仕事だ。

Q:エリザベス・スローンを動かすものについて
エリザベス・スローンは監督にとって最高のキャラクターだ。彼女はすっかり仕事に取りつかれている。彼女の言動の動機は、どうしても議論に勝ちたいという意地と法案を勝ち取ることだ。お気づきのとおり、彼女は目的のためなら、なりふり構わず行動する。まったく手段を選ばないから法廷で批判を受けることもある。彼女は、とてつもないエネルギーの持ち主であり、そのすべてを仕事に注ぐ。ほとんど休むことなく猛進していくんだ。

Q:脚本の特徴について
本作の脚本が持つ最強の武器は、ネタバレになってしまうが、「驚き」に満ちていることだ。予想できるような方向には決して進まず、思いもよらない展開が続いていく。だからこそ本作には他とは違う魅力がある。そして、2番目の特徴として挙げたいのは、キャスティング中に気づいたんだが、複数の物語が同時進行し、魅力的な人物が大勢登場することだ。

Q:ジェシカ・チャステインの演技について
ジェシカは驚くほど才能のある役者だ。内面の感情の動きが手に取るように分かる。動作でいちいち表現しなくても気持ちが伝わる。特別な才能だと思う。感情をどこで表現すべきか的確に見極め、自在に調整できる。僕らは以前にも一緒に仕事をしたから、お互いへの理解がある。とにかく彼女はあふれる才能の持ち主だ。この役には重要なことだ。

Q:物語の魅力について
僕にとって今回の脚本の魅力は業界をのぞき見るようなストーリーだ。ドアの鍵穴から見ているような感じだね。ロビイストの仕事を知る人は少ないと思う。普通の人には全く分からない世界で、説明も難しい。だが本作を観ることによって業界の実態も分かるだろう。良くも悪くも、これはアメリカの政治の一部であり、彼らは絶対に欠かせない存在だ。それだけでも興味深いが、本作にはさらに別の見どころがある。主人公が業界の裏の面までも徹底的に利用する点だ。僕たちはそんな姿にどこか魅了されてしまう。そしてこれも本作の重要な要素の一つだが、物議をかもすような題材が扱われている。結局のところ、本作が描いているのは、主人公の人となりだと思う。ある人物の驚くべき生き方を追っていく物語だよ。

Q:本作の見どころについて
映画が小説より優れているところは、総合的なメディアだから、登場人物の心の中に入りやすい点だ。彼らの視点を体験できる。本作の主人公エリザベスは少し変わったキャラクターだ。特殊な職業に就き、普通ではない働き方をする。ある意味、古典的なアメリカ映画だと言えるね。主人公は業界のアウトサイダーで、ルールに従うことを拒絶している。どこまでも世の中の流れに逆らって進む人間だ。そう聞いて、普通、頭に浮かぶのは男性だろう。だが、本作の場合は男性ではなく女性だ。そしてこれも特筆すべきことだが、この女性キャラクターが中心となって物語が展開する。普通なら男性が演じるような役だよ。

私感
今回も、約2時間10分、冒頭からラストまで、目一杯、本作を堪能した。

政治もマスコミも世論さえも動かす「ロビイスト」の驚くべき戦略と活動!
「銃規制法案」をめぐる権謀術数が二転三転して予測不能な着地点へ向かう、何とも堪(こた)えられない劇的な展開~通常の映画に比べてセリフ量も情報量も多い、小気味よいスピーディな流れ~!
そして何よりも私を魅了してやまないのが、辣腕で聞こえた女性ロビイスト、ミス・スローンにおける、“仕事人”としての矜持~戦う強さ~と、人間臭さ~戦い続ける苦しさ~の両面(双極性)を見事に体現したジェシカ・チャステイン(Jessica Chastain)の快演(怪演)ぶりだ。彼女はさすがに天才肌の女優だけあって、スーパーウーマンでありつづけながら自らの“脆(もろ)さ” を垣間見せる場面で、水際立った演技を見せている。

エンドロールが終わり、幕が閉じた後、私はしばし腕を組んで瞑目、そして深々と満足の溜め息を漏らした。〈たっぷり見応えのある映画だった!!

▼ cf. Jessica Chastain wins Best Actress - Golden Globe Awards(2013)
【ゴールデングローブ賞(アメリカ合衆国における映画とテレビドラマに与えられる賞)の「第70回」(2012年の映画とテレビ番組を対象とする)授賞式が、2013年1月13日にカリフォルニア州ビバリーヒルズのビバリーヒルトン・ホテルで行なわれた。
同賞〈映画部門〉主演女優賞(ドラマ部門)では、『ゼロ・ダーク・サーティ』(Zero Dark Thirty)(本ブログ〈January 28, 2018〉参照)のジェシカ・チャステイン、『君と歩く世界』(Rust and Bone)のマリオン・コティヤール(Marion Cotillard)、『ヒッチコック』(Hitchcock)のヘレン・ミレン(Helen Mirren)、『インポッシブル』(The Impossible)のナオミ・ワッツ(Naomi Watts)、『愛情は深い海の如く』(The Deep Blue Sea)のレイチェル・ワイズ(Rachel Weisz)の5人がノミネートされ、ジェシカ・チャステインが受賞。】




右上矢印 cf. 『ゼロ・ダーク・サーティ』予告編 :


右上矢印 cf. 『ゼロ・ダーク・サーティ』特別映像 :