禁止令とは、心理学の交流分析の概念の一つです。
子ども時代に、親や重要な養育者から受け取る
「否定的なメッセージや指示」のことです。
これらのメッセージは、子どもが無意識のうちに取り込まれ、
その後の人生における行動や感情、自己評価に影響を与えます。
禁止令は、個人が成長しても無意識のレベルで働き続け、
その人の行動や選択を制約する可能性があります。
今回は、３つの禁止令をご紹介します。
下記の言葉はイメージです。
この言葉をそのまま子どもに言うわけではありません。
あなたは、このようなイメージのメッセージを受け取ったことがありますか？
1. 存在するな
2. 考えるな
3. 感じるな
1. 存在するな
自分の存在価値を否定するメッセージです。
子ども時代に親や養育者から暴力を受けることで存在を否定されたり、「お前さえいなければ、〇〇〇」というような暴言で、親の不幸の原因にされてしまった場合に、子どもは「存在するな」というメッセージを受け取ります。
子どもは、親から「死ね」と言われているのと同じ意味だと受け取りますので、最もつらいメッセージです。
大人になっても、自分は生きていてはいけないという無意識の価値観から、自分の心や身体を大事にしない自傷行為などの行動を取ってしまいやすくなります。
2. 考えるな
自分の考えや意見を持つことを禁止するメッセージです。
例えば、親が「黙って親の言うことを聞け」と𠮟りつけたり、イライラして子どもを怒鳴り散らすことが多い家庭環境で育つと、子どもは自分で考えるのをやめてしまいます。
大人になっても、じっくりと自分の頭で考えることをしなくなり、他者に依存しやすい傾向があります。
3. 感じるな
自分の感情を表現することを禁止するメッセージです。
泣いても親に無視されて放置されたり、「泣くな、我慢しろ」と言われ、素直に感情や自分の欲求を表現できないことが多い家庭環境で育つと、感じることそのものをやめてしまいます。
大人になっても、色んなことに興味や関心が持てなくなり、感動もしにくくなります。
親からの何気ないメッセージですが、
それを子どもが頻繁に経験すると、
そのことが価値観（判断基準）として無意識の領域に刻み込まれ、
大人になっても、そのメッセージどおりの行動を自動的に取ってしまうのです。
人間の脳は、現実に起きた出来事を、
自分の「身体反応」「記憶」「言語」を通して再構築します。
そうして、出来上がったものが、主観のイメージです。
現実に起きた出来事に遭遇した人が10人居れば、
それぞれ全く違う10個の主観のイメージがあります。
それは、例え家族でも千差万別。
しっかりした子どもが話していると、
つい自分と同じ大人の思考で話していると思ってしまいますが、
それは単なる思い違いです。
子どもは大人と比べて、
圧倒的に「身体反応」「記憶」「言語」の情報量が少ないですし、
脳という臓器そのものがまだ発達途中です。
その上、親と子どもでは立場が違います。
会社で考えるとわかりやすいですが、
お給料を支払ってくれる社長が親で、
お給料を支払ってもらっている従業員が子どもです。
ただでさえ、脳の言語機能が発達途中な上に、
この立場の差では言いづらいのは当然ですよね。
子どもはこの立場上、多くの子どもが親の顔色を見て育ちますが、
親側も子どもの顔色や言動を観察してみると、
いつもと違うことに気づくでしょう。
気づいた時が、変わり時。
変えるタイミングです。
まずは、親御さんが一人で抱え込まずに、
余裕を持つことが大切です。
しんどい時は、心理カウンセラーや精神の専門家に頼って自分を取り戻し、
元気な姿を子どもに見せれば、
自然と家族みんなが元気になっていくと思いますよ。
【参考文献】
鈴木, 敏昭. 人生の99％は思い込み. ダイヤモンド社, 2015.
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