熊谷・千葉市長が森田・県知事に対して下記の要望書を提出したことをFacebook※1で明らかにしました。

 

そもそも「幕張メッセ臨時病院構想」とは、県が30億円の予算を投じ、千葉市の幕張メッセに中症者向けの1000床規模の臨時病院を整備し、5月中に一部稼働を開始させる、という計画です。

 

熊谷市長は要望書のなかで「医師などの医療スタッフ確保にめどがついていない状況と聞きます。また、病院は医師・看護師などの医療スタッフだけでなく、調達も含めて各種事務局が必要となります。そちらもめどが立っていないとのこと」と指摘し「現実的に5月中の稼働は困難ではないか」と指摘しています。関根ジローも市長に賛同します。

 

「幕張メッセ臨時病院構想」に30億円を投資したんだけれど、フタを開けてみたら1000床のうち一部しか活用できませんでした、なんてことにはならないで欲しいと思います。むしろ、最初は実現性のある床数で整備することで30億円の費用を圧縮し、浮いたお金を他の施策に活かすべきではないでしょうか。

 

県立松戸保健所管内である松戸市地域にあっては「地域外来・検査センターの設置※2」「自宅療養者への生活支援※3」「搬送体制の強化※4」等について県が予算を確保しないため疎かになっており、このような取り組みに県が予算を確保するように、安藤じゅん子・千葉県議会議員と連携し引き続き県に求めてまります。

 

※1熊谷俊人Facebook【昨日の感染状況、宣言延長を受けての対応、特別定額給付金、メッセ病院化構想について】https://www.facebook.com/toshihito.kumagai/posts/3013288822073939

 

※2 「森田・千葉県知事が補正予算に『地域外来・検査センター』設置予算を盛り込まなかったことは極めて残念」https://ameblo.jp/sekine-jiro/entry-12592021506.html

 

※3 「千葉県、自宅療養者への支援について答弁せず」https://ameblo.jp/sekine-jiro/entry-12593911570.html

 

※4 「(千葉北西部)「生死を分けた」新型コロナ元患者が語る厳しい搬送体制の現状」https://ameblo.jp/sekine-jiro/entry-12594172099.htm


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【幕張メッセ臨時病院構想に対する千葉市の要望】

 

先月末に県が打ち出した臨時病院化構想について千葉市として県に要望書を提出しましたので、ご紹介します。

 

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幕張メッセにおける臨時医療施設開設にあたっての医療体制等に関する要望

 

新型コロナウイルス感染症患者の増加に伴い、病床確保等医療体制の整備が急務となっております。このような中で、千葉県におかれましては、本市内の幕張メッセに大規模な臨時医療施設を整備する計画であるとうかがっています。

県内における病床不足解消に向けた取り組みが必要であることについては、御賛同申し上げるところでありますが、一方で当該施設の所在市として、開設・運営にあたっては、本市及び周辺の医療提供体制等へ支障が生じることも懸念されるところであります。つきましては下記について、ご対応いただきますよう要望いたします。

 

1 幕張メッセに臨時医療施設を整備するにあたり、医療従事者等を確保する際には、本市内における地域医療に影響が生じることのないよう確保策を講じること。現在、本市の新型コロナウイルス感染症患者の入院治療等は、感染症指定医療機関のほか、一般医療機関の協力の下、限られた資源の中で、実施しており、市内の医療体制の維持に支障が生じかねない対応は行わないこと。

 

2 臨時医療施設を整備する前段として、新型コロナウイルス感染症の医療提供体制構築のため、医療圏ごとに既存病床の効率的・効果的な活用を進め、県全体として医療を支える体制づくりを推進すること。

 

3 幕張メッセの臨時医療施設からの、患者が重症化した場合の転院先の確保、軽快した患者のホテルでの療養施設への受け入れについては、千葉医療圏のみでの対応とせず、県全体での対応とすること。

 

4 医療施設開設にあたっての、保健所による施設基準に基づく審査等については、相当の業務量になると見込まれることから、千葉県による審査など県全体として対応すること。

 

5 本市に広範囲から多くの患者を受け入れる場合、その全ての患者に対して、千葉市保健所が病状の記録、報告等の対応を担うことは不可能であり、また、本市の消防のみで患者の搬送を担うことは、救急業務に支障が生じかねないことから、県全体として対応すること。

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県は新型コロナウイルスの中等症~軽症患者を受け入れる臨時病院を開設する構想を4月下旬に補正予算とともに打ち出しました。想定されているのは幕張メッセとのこと。

幕張メッセが所在し、(株)幕張メッセに出資している千葉市に対して説明が無く、かつ市立青葉病院など県内で新型コロナウイルス患者を受け入れている医療機関などにも事前に説明・相談が無い中で突然出てきた構想に多くの関係者が戸惑いを感じました。

 

30億円という巨額の経費を予算計上し、多くの行政・医療関係者に影響を与える施策である以上、本来は十分な協議・調整があってしかるべきです。

ただし、事前に協議・調整が無かったことは本質的に問題ではありません。緊急時は関係者に十分な説明ができないことはあり得ることですし、中身が十分に詰められた内容であれば経緯がどうあれ評価・賛同すべきです。

新型コロナウイルス対策の権限は特措法上、県にありますし、平時でも医療政策は県の所管事務ですから、新型コロナウイルスに対応するための病床確保に対して千葉市としては積極的に協力するのは当然です。市としても独自に市内医療機関が新型コロナウイルス患者のために病床を確保した場合に支援するため4800万円の予算を計上しています。

 

問題はこの構想が医師を始めとする医療スタッフ確保の算段がないまま発信されたこと、ゼロから病院を立ち上げるために必要となる膨大な手続き・準備が十分に想定された県の体制には思えないこと、爆発的感染を見据えた臨時病院の前に実施すべきステップが飛ばされているように見えること、です。

 

報道では4月末の臨時議会で可決後、速やかに設営に入り、5月中に一部稼働開始となっています。

このスケジュール感は後述する通り相当に無理があるのではないかと考えますが、仮にこのスケジュールで設営・稼働するのであれば当然詰めておくべき医師などの医療スタッフ確保にめどがついていない状況と聞きます。また、病院は医師・看護師などの医療スタッフだけでなく、調達も含めて各種事務局が必要となります。そちらもめどが立っていないとのこと。

 

ゼロから病院を立ち上げるのは簡単なことではありません。通常、病院を新設する場合はそのノウハウを有する人間を多数集め、数年間かけて準備し、各種認可を受ける必要があります。

特措法等に基づき、本来の認可プロセスの一部を省略できたとしても、命を預かる重要な施設として省略してはならない準備・整理だけでも膨大な事務となります。それを短期間でこなすには県職員だけでは難しく、病院立ち上げに詳しい人や厚生労働省など国も巻き込んだ50~100人レベルの組織を立ち上げなければ、短期間に病院として稼働させることは難しいのではないでしょうか。

 

ゼロから病院を立ち上げる難易度を考えれば、その前に病床が不足している東葛北部・南部医療圏において、県がリーダーシップを発揮し、病棟まるごとを含めて抜本的に病床を確保し、集約化するなど、困難ではあれど臨時病院よりは現実的なステップに対して全力を注ぎ、その先のステージである臨時病院の研究・検討を着実に進めることが妥当です。

 

イギリスで同様の趣旨でコンベンションセンターを活用してナイチンゲール病院が臨時病院として作られましたが、利用者が少なく既に閉鎖が決まっています。

感染が抑えられ患者数が想定より少なかったこともありますが、様々な方に聞くと臨時病院は使い勝手が悪く、臨時病院に転院させる病院が少なかったのこと。実際に国策として整備までこぎつけた病院でもこのような状況ですので、県は慎重に検討を進めて欲しいと思います。

 

構想自体に対して上記問題点を指摘しましたが、地元市としてより現実的な課題が要望書の3,4,5に記載した内容となります。

 

まず3について。

幕張メッセ臨時病院が仮に稼働した場合、千葉県全体の中等症~軽症患者が幕張メッセに集約されることになります。搬送時は中等症~軽症であったとしてもその後に重症化することも十分考えられ、その場合、千葉医療圏の病院に多数転院してくることが懸念されます。本来は千葉医療圏以外で受け止めるべき患者を千葉医療圏の病院が引き受けることになれば千葉医療圏の医療崩壊に繋がりかねません。症状回復後にホテル療養する場合も同様です。

事前の取り決めで県全体で引き受けるとしていても、例えば患者が東葛北部・南部医療圏の患者だった場合、重症化した状態で東葛北部まで搬送できるか、さらに言えば東葛北部・南部医療圏の病院が断った場合どうするか、医療現場の人は医療圏外だったとしても命の危険があれば当然受け止めます。結果的には東葛北部・南部医療圏に比べて体制が整っている千葉医療圏が本来以上に重症患者を受け止めることになるでしょう。市民の医療に責任を持つ市長として安易に容認できるものではありません。

 

4について。

病院をゼロから立ち上げるには膨大な事務が必要と述べましたが、その審査は保健所が行うこととなっており、幕張メッセが所在する千葉市保健所が行うことになります。

ただでさえ保健所は業務が集中し、市の各部署から人員を引き抜いて増員し続けている状況です。県の施策に対して千葉市保健所が膨大な審査等を行うことは耐えられず、県が責任をもって県保健所から人を引き抜く等をして審査業務を行って頂く必要があります。

 

5について。

広範囲から多くの患者を千葉市に受け入れる場合、保健所として記録・報告等をする必要がありますが、これも千葉市保健所が引き受けるのではなく県保健所が対応して頂く必要があります。

これら患者の搬送を千葉市消防のみで行うことは千葉市の救急業務に支障が出ますので、こちらも県全体として対応する必要があります。

 

現在は感染者が低減傾向にあり、病床も少しずつ落ち着きつつありますが、今後第2波が押し寄せてくることも十分に考えられます。楽観視せず、最悪期を想定した大規模な病床確保の構想を持ち、検討・準備をすることは十分に理解します。

この案自体は現在実現性に大いに疑義がありますが、この構想に至る関係者の危機感、課題認識、チャレンジ精神については敬意を表するものです。

 

今を第1ステージとすれば、臨時病院が必要になる状態はステージ3です。ステージ3の研究を進めながら、第2ステージに対応した抜本的な病床確保について、県がビジョンと具体策をもって実現して頂くことを切に願います。

 

県に対して少し厳しい指摘になってしまいますが、私たちは県のこれまでの対応について概ね信頼をしています。

休業要請が都や他県と比べて遅れるなど政治決断という意味でスピード感に欠けた時もありましたが、健康福祉部を中心に実務レベルでは対策を積み重ねて頂いています。県自身の指針をしっかりと示して先手先手の対応を取って頂くことを今後も期待していますし、私たちも県と連携を深めていきたいと考えています。