「スマホ依存」の人がハマる宿命的な脳のトラップ ドーパミンの分泌と不安に追われるラットレース | ~たけし、タモリも…「1日1食」で熟睡&疲れナシ~

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人はなぜスマホを何度もチェックしてしまうのか。そのメカニズムについて解説します(Luce/PIXTA)

人はなぜスマホを何度もチェックしてしまうのか。そのメカニズムについて解説します(Luce/PIXTA)© 東洋経済オンライン

 

集中力や記憶力、創造性を減衰させる危険があることも証明されているスマホだが、完全に手放すのはなかなか難しい。

 

そんな中、自身も陥っていたという「スマホ依存」から抜け出すために「スマホ断ち」プログラムを開発したキャサリン・プライス氏が、スマホ依存と脳のメカニズムの関係について紹介します。

 

※本稿はキャサリン・プライス著『スマホ断ち 30日でスマホ依存から抜け出す方法』から一部抜粋・再構成したものです。

ドーパミンの分泌による「新しいもの」中毒

恋愛の初期の、相手に会いたくて何も手につかない感じをご存じだろうか。あれもドーパミンの作用だ。ドーパミンは目新しさを感じるたびに分泌される。

 

ただし目新しさが薄れると分泌量も減る。ちょうどハネムーン直後がこの段階で、そこで関係が終わることも多い。

 

けれど、スマホの場合はそうはならない。付きあいを終わらせようという考えすら浮かばないだろう。なにせ新しさを絶えず提供してくれるツールだ──その結果、私たちはドーパミンの連打を絶えず浴びることになる。

 

何かに飽きたり不安になったりしたときは……メールチェックをどうぞ。

たいしたメールがない? それなら、次はSNSを確認しよう。

 

まだ足りないなら、別のSNSへ。それから、また次のSNSへ。

いくつかの投稿に”いいね”をつけて、新たに何人かをフォローする。

だれかがフォローを返してくれていないかを確認しよう。

 

念のため、もう一度メールをチェックして……こうして、同じアプリを2度使うことなく数時間くらいは簡単に過ごせる──そのうち集中していた時間はせいぜい数秒ほどだろう。

 

あえて伝えておくが、ドーパミンによる高揚感と幸福感は別ものだ。ただし、それを脳に理解させられるかどうかは……どうぞたしかめてみて。

ささやかな「気分のよさ」が満載のスマホ

2、3歳の幼児の相手をしたことのある人ならご存じだろうが、幼い子供は反応が返ってくる行動が大好きだ。

 

壁のスイッチを押すと明かりがつく。ボタンを押すと呼び鈴が鳴る。ほんの少しでもコンセントに興味を示すと、大人が飛んでくる。

 

この特性から私たちが卒業することはない。いくつになっても自分の行動に反応が返ってくるのは嬉しくてしょうがないのだ。

 

こうした反応を心理学用語で”強化”と言う。特定の行為で何度も強化が起きると、その行為を繰り返す確率は高くなる(奇妙なことに、返ってくる反応が望ましいものでなくても強化は起きる。子供が紙粘土を口に入れたので叱ったとする。

 

これでもうやらなくなるだろうと思うかもしれないが、断言してもいい。そうはいかない)。

 

スマホは気分をよくするささやかな強化の集まりだ。ことあるごとにドーパミンを分泌するので、私たちはますます手放せなくなる。

 

リンクに触れるとページが開く。メッセージを送るとシュッと小気味いい音がする。こうした強化が積み重なって心地よい操作感を生み、余計にスマホを触っていたくなるのだ。

 

人にスマホを何度もチェックさせるよう仕向けるには、毎回何かいいことが待っているようにするのがいちばんだと思うかもしれない。

 

じつは私たちが夢中になるのは、結果が一貫しているときではない。むしろ、予測がつかないときなのだ。

 

あることが起きるとわかっているが、それがいつ起きるのか、そもそも起きるかどうかもわからない状況にこそのめりこむ。

 

このように予測不可能な状況で報酬を得ることを、心理学用語では”間歇強化(かんけつきょうか)”と言う。私は”イヤなヤツにはまる理由”と呼んでいる。

 

どんな言葉で表現してもいいのだが、ともかく、こういった予測不可能な要素がスマホのアプリのほぼすべてに組みこまれている。

まるでスロットマシーンのようにのめり込む

スマホをチェックしていると、ごくまれに気分をよくするものに出会う──お褒めのメール、片思いの相手からのメッセージ、おもしろい記事。

 

それでドーパミンが分泌されると、私たちの頭のなかでスマホチェックと報酬の獲得がひと括りに認識されるようになる。

 

不安から逃れるためにスマホを手に取り、いつの間にか忘れられたという経験もあるだろう。この場合も同じだ。

 

行為と報酬とのあいだの結びつきが完成すると、報酬を得られるのが50回に一度でも、そんなことはどうでもよくなる。ドーパミンによって、脳はそのたった一度を記憶に刻みこんでいるからだ。

 

そうなれば、50回のうちでいつあたりが出るかわからないという事実は、私たちをひるませるどころか、ますますスマホへと駆り立てる。

 

スマホの他にも、この間歇強化という報酬システムを使って人を突き動かすデバイスが存在する。なんだかわかるだろうか──スロットマシーンだ。

 

じつのところ、このふたつの機器は共通点があまりに多いことから、倫理的デザイナーのトリスタン・ハリスは、よくスマホをポケットに入れたスロットマシーンにたとえる。

 

「テクノロジーはいかにして脳をハイジャックするか」と題された記事で、ハリスはこう説明する。

 

「スマホをポケットから取り出すとき、どんな通知が出るかとスロットを回している……インスタグラムのタイムラインを下へ下へとスクロールしながら、次にどんな画像が出てくるかとスロットを回している。

 

マッチングアプリでプロフィール写真を右へ左へとスワイプしているときも、次こそマッチする相手かと期待しながらスロットを回している」

 

ハリスのこの指摘には、とりわけ不安をかきたてられる。もうお気づきだろうが、スロットマシーンは、使いたい衝動を抑えられないほど報酬システムを刺激するようあえてつくられた、史上屈指の依存性を持つ機器である。

つねに不安をかきたてるスマホの魔力

進化において不安は重要な要素だ。行動を起こす動機になるからだ(餌の心配をするライオンのほうが、吞気にかまえているライオンより飢える可能性は低そうだ)。

 

とはいえ、不安は起こりやすく、解消できない場合にはストレス性の症状に発展しかねない。

 

カリフォルニア州立大学ドミンゲスヒルズ校の心理学教授ラリー・ローゼンによると、スマホは意図的に不安をあおっているという。

 

手に取るたびに新たな情報を提供し、同時になんらかの感情をかきたてる。それにより、ほんの一瞬でもスマホを置くと、何かを見逃すのではと不安になるのだ。

 

この不安感は、一般にFOMO(何かを見逃す不安:Fear of Missing Out)と呼ばれている。こちらに比べて過小評価されがちな対義語、JOMO(見逃す喜び:Joy of Missing Out)と混同しないよう注意が必要だ。

 

人類はこれまでもつねにFOMOにさらされてきた。それでも、その不安に完全に取りこまれずにすんでいたのは、スマホが登場するまでは自分が見逃したものを知ることが容易でなかったからだ。

 

いったん家を出て(固定電話からも離れ)パーティ会場に行ってしまえば、同じタイミングで別に開かれたパーティのほうが楽しそうだったとしても知るすべはない。

よくも悪くも、目の前のパーティがすべてだった。

結局、スマホがもたらすのは「不安」のループだけ

けれど、スマホがあれば大きな魚を逃しかけていることを簡単に調べられるだけでなく、(通知機能で)くしゃみさながらにFOMOを浴びせかけられる。

 

やがて心の平穏を保つ唯一の方法は、見逃しているものはないかと始終スマホをチェックすることだと確信するようになる。

 

ところが、それではスマホ起因のFOMOは解消されるどころか、悪化してしまうのだ。

 

スマホから目を離すたびに、闘争・逃走反応を引き起こすコルチゾールという、ストレスホルモンが副腎皮質から分泌されるようになるからだ。

 

コルチゾールとは不安を感じさせるものだ。私たちはできるだけ不安を感じたくない。そこで不安を和らげようとスマホに手を伸ばす。

 

一瞬、気が晴れる。ただし、スマホを置くと……またもや不安が襲ってくる。

 

FOMOにとらわれているかぎり、スマホを見て、触れて、スワイプして、スクロールすることを繰り返すしかない。不安を紛らせようとする行動は悪習慣のループを強化し、結局、いたずらに不安を増大させるだけだ。