最愛 | KeyboardだってROCKだぜ

KeyboardだってROCKだぜ

引き際を見誤った、金髪ロックキーボーディストのよもやま話。

どうしても忘れられない話。
今回は音楽まったく関係なしで。

もう17年も前ですが、大好きだった【ヤツ】が逝ってしまいました。
いつも実家に戻ると真っ先に玄関に迎えに来てくれて、滞在中は家の中をついて回り、側を離れませんでした。それほど仲がよかった【ヤツ】。

父が大の犬好きだったので、物心ついた頃から常に家には犬がいました。動物好きな方は皆さんそうだと思いますが、失った直後は『もう二度と飼わない』と思うものの、また欲しくなって迎えての繰り返し。そういう中で、【ヤツ】もウチに来ました。

犬種はポメラニアン、初代→その実子と続き、【ヤツ】は血の繋がりのない3代目。
人間側の勝手な思い込みかも知れませんが、それまでと違って心が通じあっているような気がした、特別な【ヤツ】でした。血統書によると、1989年の2月生まれ。

2001年の7月19日、とても暑い日の夕方。
所用で実家に戻った時、いつもと変わらず玄関で出迎えてくれました。そのままリビングまで付いてくるのが常でしたが、その日はなかなか来ません。『おい何やってんの?』と玄関に様子を見に行ってみたら、息があがって苦しそう。
実家の近所に住んでいる姉がちょうど来ていたので、姉の車で一緒に実家から10分程の、かかりつけの病院に連れて行きました。そのまま入院、一晩様子を見てもらうことに。
『あまり楽観的に考えないでください』と言われてもピンと来ずに、姉と実家に戻りました。

玄関先で靴を脱いでいると、携帯に着信。
『容態が急変したので、すぐに来てください』。姉とふたたび病院へ。

そこには酸素吸入の処置がされて診察台に横たわる【ヤツ】がいました。目を疑う光景。
たまらず涙が溢れ、名前を呼んだら、急に我に返ったように口に咥えさせられたチューブを前脚で外そうともがく仕草。まるで「なんでこんなものが口に入ってるの!」とでも言いたいかのように。
『持ち直しましたね!』と驚く獣医師、そのままガラス張りの酸素ケージへ。何事もなかったかのように“お座り”してこちらを見ています、「なんともないよ」とでも言いたげに。
「引き続き宜しくお願いします」ということで姉と実家に戻り、ほどなくして姉は自宅へ。
ここでまた携帯に着信。
『また容態が変わりました、すぐ来てください。』と。今度は自分の車で、ひとり病院へ。

そこにはさっき見たものと、まったく同じ光景。酸素吸入のチューブを咥えさせられ、診察台に横たわる【ヤツ】が。


『せめて到着するまではもってもらいたかったのですが…』
『心音のようにも聞こえますが、これは酸素吸入の雑音です』
『チューブ、外しますね』
『綺麗にしますから、少し待合室でお待ちください。』
涙が止まりませんでした。


それから【ヤツ】は、かわいい動物の絵があしらわれた箱に収められて帰ってきました。



翌日、ペット霊園で火葬。
煙突から煙。
メソメソしていたら、煙が下に流れてきて、なかなか昇っていきませんでした。
それは『ほら!あんたが泣いてるから天国に行けないってさ!』と姉に言われたほど不思議な現象でした…何かの偶然だと思いますが。

火葬が済み、骨を拾い、実家に戻り。
そこかしこに落ちている【ヤツ】の毛や、カーペットの下に隠されたままのおやつ。
当時実家には【ヤツ】を含めて4匹の犬がいましたが、カーペットの下に物を隠すのは【ヤツ】の仕業。


その後少し経ってから“虹の橋”の話を知りました。ご存知の方も多いと思います。それで気持ちが少し救われました。

盟友ちえぞう(原田千栄)がやっているユニット【299(にくきゅう)】にも、“虹の橋”という曲があり、何度か一緒に演奏させて頂いてますが…正直辛いです(笑)。


きっと今も待っていてくれてます。
もうすぐ行くよ。





それと……。
もうこのさいだからカミングアウトしますが、金髪にした理由のひとつは【ヤツ】です。笑っちゃいますよね?ポメラニアン色だなんて。
あまりにもロックじゃなさすぎて。