漫画家のつげ義春。
作家の椎名誠が彼のエッセイで、
「もし手塚治が大衆文学で、つげ義春が純文学の世界にいたならば、文壇は大きく変わっていただろう」
と書いていたのに700回位頷いたワタシ。
つげ義春を読んだのは、私が中学生だった頃。
まだまだ多感だったから、その衝撃たるや、墓石で後頭部をいきなり殴られた感じ。
子供なりにも、
「漫画にも文学ってあるんだ」
って感じたものです。でも中学でつげ作品は、ちょっとキツかったかな。
その時雑誌、「ガロ」も読んじゃったの
山田花子(24歳で自殺した漫画家)作品もね。
私はあまり漫画は読まないのですが、それはたぶんつげさんやガロを読んで以降、漫画を読む目が変わっちゃったってのがあるかも知れません。
つげ義春の「無能の人」は、竹中直人が監督と主演で映画化もされていますが、私は今でも見ていない。
鑑賞するには、こちら側に相当なパワーがないと無理ですわ。
それを映画化までしちゃった竹中さんの強さに、私は敬意を表します。
「無能の人」をご存知ない方のために、ウィキペディアからごく簡単なあらすじを引用します。
主人公の助川助三は、かつてはそれなりに名の知れた漫画家であった。だが近年は仕事も減り、たまに執筆の依頼が入っても、自ら「芸術漫画家」を自称しているプライドがあるため、断り続けている貧乏な日々を送っている。妻のモモ子からは漫画を描けと時になじられるが、助川は全く描こうとはしない。そこで助川は漫画以外の新たな道を模索するが……。
石を売る [編集]
助川は、中古カメラ業、古物商などの商売がことごとくはずれ、今は多摩川の川原で、拾った石を掘っ立て小屋に並べ石を売る商売を始めた。美術品として愛好家に取引される石とは全く違う「川原の石」が売れるはずもなく、妻に愛想を尽かされ、罵倒されながらも諦めきれずに今日も石を並べて思索にふける。
無能の人 [編集]
古本業者の山井から、石の愛好家の専門誌を貰った助川は、石のオークションに自分の石を出品しようと主催者の「美石狂会」の石山とその妻のたつ子を訪問する。採石した石を抱え、オークションに参加する。
今はアマゾンで安い文庫本なども売られているようですが、昔私が買った「無能の人」は、つげ義春全集のような分厚いもので、チヨジがモチーフのアルミ製の栞が付録の超マニア必見のもの。
神田の古本屋で偶然見つけたものです。古本と言えども持ち主が相当大切にしていたのか、傷など全く付いていない綺麗なものでした。その代わり値段も高かったと思います。
それなのに私は、ある日つげ作品を所持していることに耐えられなくなり、ゴミの日に他の古本と一緒にヒモで縛って捨ててしまいました。
今思えば、古本屋へ持っていけば買ってもらえたはずなのに、私が本当の「無能の人」のようです
そしてまたある日、どこかで同じ全集を見つけ、再び買い戻して更に無能道一直線
案外私が捨てた全集を誰かがゴミ置き場から広い、それを古本屋に売って私の所に戻ってきたのかも知れません。
有吉佐和子の小説、「青い壷」のようだけど、つげ義春の全集だったらそういうことも有り得そうです。
買い戻した「無能の人」、何となく恐いからまだ横浜の実家に置きっぱなし。でも今度帰国したら勇気を出して持って来ようかな、と昨日ふと珍しく思ってみたりしました。
作品のタイトルが「無能の人」って、キッツい、、、、、
やっぱりつげ義春は、天才だわ。