第221回国会が閉会した。閉会後の7月27日には、高市首相が出席する衆議院予算委員会の閉会中審査も行われ、今国会をめぐる一連の論戦は、ひとまず一区切りを迎えた。
高市首相に対しては昨今、「首相の国会出席が少ない」「選挙で約束した法案を実現していない」「公約にない法案ばかり審議している」「約束を守らず、嘘ばかりついている」「そのため支持率が下がった」などの批判が繰り返されている。
しかし、こうした批判が妥当かどうかは、一部の審議や報道だけを見ても判断できない。国会での質疑時間、提出法案数、成立率、公約の工程、支持率と政党支持率の推移を丁寧に比較することでわかることも多い。
実際に、2000年以降の歴代政権の事例と比較してみたら、高市政権は総理の予算委員会出席時間を近年より抑えながらも、野党の質疑比率を高く確保し、政府提出法案をすべて成立させた政権であるということが判明した。
閉会中審査を含めた出席は38時間30分
第221回国会の衆議院予算委員会においては、高市首相は7月24日の国会閉会までに、予算委員会の質疑に7回出席し、合計35時間30分にわたって答弁した。さらに、国会閉会後の7月27日にも、3時間の首相出席の閉会中審査が行われている。
双方を加えると、高市首相の衆議院予算委員会への出席は8回、合計38時間30分となる。閉会中審査は、形式上は第221回国会の会期中の審議ではないが、国会最終日の予定が延期されたものであることから、第221回国会の審議時間に加えている。
その上で、2000年から2026年までの27国会を調べてみると、首相出席の審議は短い方から数えて9番目程度に位置している。そのため、直近の政権と比べれば少ないのは事実だが、過去最短というのも誤った認識である。
高市首相が出席した38時間30分の審議時間は、2000年代の内閣の平均を約2時間30分上回っている。民主党政権以降は、「首相を予算委員会に50時間前後拘束する国会運営」が半ば慣例化していたが、これを2000年代に近い水準へ戻した形となる。
したがって、メディアや野党が審議時間が短いと主張するのは、自分たちに都合の良い期間を切り取って比較しているだけであり、印象操作に近いものがある。
また、首相が委員会に出ることと、国会審議の質が高いことは同義ではない。省庁の個別事業、行政手続、地方の個別案件、過去の発言、週刊誌記事の真偽まで、あらゆる問題に首相本人の答弁を求める仕組みが、効率的であるかは検討の余地がある。
なお、ここでの数値は、2000年から2024年までは公開資料に基づく推計であり、2025年と2026年は質疑者別の時間を集計した実測値を中心としている。歴代順位は、政治的傾向を把握するための参考値として見る必要がある。
野党の質疑は30時間59分、全体の80.5%
ここで注目すべきは、首相の出席時間が近年より短くなった一方で、その時間に占める野党質疑の割合が極めて高いことである。衆議院では、与党が圧倒的な多数であるにもかかわらず、野党に手厚く質疑時間を配分していることがわかる。
予算委員会における高市首相の出席時間の38時間30分のうち、野党の質疑は30時間59分あり、野党質疑比率は80.5%となる。これは、2000年以降で最も高い水準である。
首相の答弁時間の約5分の4が野党に割り当てられており、「野党との論戦を避けた」「野党の質問機会を奪った」という批判とは整合しない。一方で、野党の多極化が進んでおり、1党あたりの割合で見た場合は、質疑時間が減ったと感じる野党がいるのも理解できる。
しかし、野党全体の質疑時間は、2010年代以降の平均よりは短いが、2000年代の平均を9時間以上も上回っており、2000年以降の27国会中では、短い方から12番目程度とほぼ中位に位置しているため、今国会の野党の持ち時間は、議席数で比べても多い方である。
そのため、第221回国会での首相の出席時間は近年では短い方だが、野党の質疑時間は中位程度を確保しており、配分比率で見れば過去最高水準であるという特徴がある。
従って、「首相が野党の質問から逃げている」というのは適切ではなく、首相の拘束時間全体は抑えながらも、野党に対しては8割以上の質疑機会を確保したと表現するのが正しい。
海外と比べて日本の国会拘束は長い
各国との比較では、制度が異なるため単純比較はできないが、日本の国会が首相を長時間拘束する傾向があることは、かねてより指摘されてきた。
英国の首相質問は、原則として毎週水曜日の約30分間に集中して行われ、担当分野の詳細は、各省の大臣が責任を持って答弁する。ドイツなど他の議院内閣制諸国でも、首相本人が各行政分野の個別問題を何十時間も連続して答弁を求められる仕組みとはなっていない。
日本では、首相が各省庁の細かな行政問題にも答弁を求められる一方で、党首同士が国家の基本政策について集中的に論争する機会は少ない。そのため、首相の出席時間を減らすには、制度全体の再設計も必要となる。
国会改革を進めるのであれば、党首討論の定例化や国家の基本政策は首相が答え、個別政策は担当大臣が責任を持って答える、同じ質問の反復は避ける、質疑通告を早期化・適正化する、首相出席の委員会と担当大臣中心の委員会を整理するなどの対応が求められる。
首相を長時間拘束すること自体を審議の目的とするような国会運営は、国際比較上も適切ではない。拘束時間の長さではなく、政策論争の質と、問われた事項については政府が適切に説明責任を果たすという、2つの質を高めることが重要である。
法案成立率は最高水準の100%
国会運営の成果を測るもう一つの数字が、内閣提出法案の成立率である。2001年から2026年までの通常国会、または通常国会に代わる国会に提出された内閣提出法案は合計2,029件、このうち成立したものは1,842件で、期間全体の加重平均成立率は約90.8%である。
これに対し、第221回国会では、内閣提出法案64件がすべて成立し、成立率は100%となった。最後まで残っていた建築物省エネ法改正案と予防接種法改正案も、会期延長後の7月24日に参議院本会議で可決された。
2001年以降、通常国会またはその代替国会で政府提出法案が100%成立したのは、2022年の岸田内閣で61件中61件と、2026年の高市内閣の64件中64件の2例だけである。100%成立は、2000年以降の国会運営と比較しても最高水準の実績となる。
法案数を絞っただけではない
成立率が高いのは、提出法案を少なくしたからではないかという見方もあり得る。確かに、2001年から2026年までの提出法案数の平均は約78件であり、高市政権の64件は長期平均を下回っている。
小泉政権期には、2003年に126件、2004年に127件が提出されており、法案数そのものでは及ばないが、近年は政府提出法案数自体が減少しており、2020年から2025年までの平均は約61件となる。高市政権の64件は、近年の平均をやや上回る件数である。
したがって、「極端に法案を絞り込み、成立率だけを高く見せた」と評価するのは難しい。近年並み以上の64法案を提出し、そのすべてを成立させたというのが実態である。
ねじれ国会との比較で分かる国会運営力
法案の成立率は、政権の政策遂行力だけでなく、衆参両院の議席構成、野党との協議、法案の内容にも左右される。2001年以降で成立率が特に低かった国会を見ると、2008年の福田内閣が78.8%、2011年の菅内閣が80.0%、2012年の野田内閣が66.3%である。
いずれも、衆議院と参議院で多数派が異なる「ねじれ国会」の影響を強く受けた時期である。これに対し、高市政権は自民党と日本維新の会の連立を軸にしながら、法案ごとに国民民主、中道、参政党、チームみらいなどとも協議し、成立に必要な合意を形成した。
国家情報会議設置法案は、衆議院で自民、維新に加え、中道、国民、参政、チームみらいが賛成し、参議院でも可決された。2026年6月3日に公布され、法律第28号となっている。
この実績は、「野党を無視して法案を押し通した」というより、法案ごとに異なる政党との合意形成を行った結果と見るべきである。
政府法案以外でも連立合意を実行
政権の実績を、内閣提出法案だけで測ることも適切ではない。国会では、政党間の合意に基づき議員立法で成立させる法案も少なくない。高市政権下では、国旗の損壊等の処罰に関する法律案が、自民、維新の会、国民民主、参政党の共同提出で議員立法として成立した。
外国の国旗を損壊した場合に刑罰がある一方、日本国旗については同様の規定がないという制度上の不均衡を改める法案であり、紆余曲折を経ながらも成立した。
また、副首都整備を含む国家社会機能継続性確保法案も、自民と維新の会が協議して提出した議員立法である。同法案は、首都直下地震や大規模災害、テロなどに備え、国家機能の継続性を確保するため、副首都となり得る地域の整備や政府機能の分散を進める。
審議の過程では、政府に毎年の国会報告を求める修正なども加えられた。高市首相は、副首都法案と定数削減法案を、連立合意のセンターピンと位置付けており、定数削減法案は次の国会で審議が行われる予定である。
政権公約や連立合意の実行状況を評価する際には、内閣提出法案、与党提出の議員立法、他党との共同提出法案、予算措置、行政組織の新設、閣議決定、制度設計の着手などを合わせて検証する必要がある。
公約は約束された期限ごとに評価
選挙公約には、実施時期の異なる政策が混在している。高市首相は施政方針演説で、自民党の政権公約と日本維新の会との連立政権合意書に掲げた内容を「一つ一つ実現していく」と明言したが、公約の全てを第221回国会で成立させるとは説明していない。
公約には、今国会で成立を目指すもの、次期国会で提出するもの、国民会議などで制度設計を進めるもの、複数年度で実施するもの、各党協議を経て結論を出すものなどがある。
例えば、時限的な食料品の消費税率ゼロは、選挙前の記者会見で、給付付き税額控除を含む社会保障・税一体改革を議論する国民会議で検討すると説明し、スケジュール感を示していた。そのため、第221回国会で即座に税率をゼロにする約束ではない。
出産費用の自己負担軽減、給付付き税額控除、社会保障制度改革なども、それぞれに制度設計や法案提出の時期が示されている。
期限が到来していない段階で、今国会で成立していないから公約違反と断定するのは、工程を無視した評価である。一方で、衆議院議員定数削減など、今国会では決着しなかった項目も残っているのは事実である。
したがって、高市政権の公約評価は、成立・実施済み、一部実施、法案提出・審議済み、制度設計中、与野党協議中、未着手、期限未到来を、区別して行うべきである。重要なのは、約束された期限までにどこまで進んだかを評価することである。
公約にない法案ばかりという批判
国会では、公約に明記された政策だけを審議すればよいというわけではない。政府には、社会経済情勢の変化、災害、感染症、外交・安全保障、行政上の制度不備、最高裁判決への対応などに応じ、必要な法案を提出する責任がある。
公約に一字一句書かれていない法案を提出したこと自体を問題視すれば、政府は選挙後に発生した課題へ対応できなくなる。
評価すべきなのは、公約外の法案を提出したかどうかではなく、公約実現を放棄していないか、法案に必要性と合理性があるか、国会で十分な審議が行われたか、政府が国民に説明したかである。
高市政権では、政府提出64法案を成立させる一方、公約や連立合意に関する法案、議員立法、予算措置、制度設計も並行して進めている。したがって、「公約にない法案だけを審議し、公約には手を付けなかった」という批判は、実際の政策進捗とは一致しない。
小泉内閣に匹敵する高い支持率
支持率についても、歴代政権との比較が欠かせない。報道各社の平均では、高市内閣の支持率は、2025年10月63.8%、11月70.5%、12月69.0%、2026年1月65.2%、2月66.6%、3月64.8%、4月64.0%、5月62.6%、6月61.4%、7月54.6%と推移している。
2025年11月の70.5%を頂点に、2026年7月までに15.9ポイント低下しており、支持率が下落基調にあることは否定できないが、高市内閣は発足から支持率は高く、政権発足直後には80%を超えたものもある。これは、小泉内閣に次ぐ高い水準である。
したがって、現在の支持率低下には、異例に高かった発足時の期待値、いわば「発足時プレミアム」が平常水準へ修正される過程も含まれていると考えるべきである。
小泉政権も高支持率から大きく下落
高市内閣と比較しやすいのは、小泉内閣である。小泉内閣は2001年の発足直後、各社の世論調査で70~80%台という極めて高い支持率を記録した。しかし、その後は経済情勢、構造改革への反発、閣僚人事、外交問題などを受けて大きく低下した時期もある。
それでも、郵政民営化など政策上の争点を明確にし、選挙によって国民の信任を問い直すことで支持を回復し、5年以上にわたる長期政権を維持した。つまり、発足時に70~80%台の高支持率を得た政権が、その後15~30ポイント低下すること自体は珍しくない。
重要なのは、支持率が一時的に下がったかではなく、政策課題を明確にできるか、成立させた制度が成果を生むか、支持低下後に回復局面を作れるか、選挙で改めて信任を得られるかである。
高市内閣の7月の54.6%という支持率は、ピークから見れば大幅な下落だが、2000年以降の多くの政権と比較すれば、なお高い水準にあるということである。
麻生政権末期とは異なる構造
支持率低下が政権交代に直結する局面では、政権支持が下がるだけでなく、その支持が野党へ移る。2009年の麻生内閣では、支持率が10%台まで落ち込み、民主党の政党支持率が自民党を上回った。
民主党は政権交代の受け皿として認識され、衆議院選挙で308議席を獲得し、実際に政権交代を実現した。これに対し、現在の高市政権では、内閣支持率が低下しても、主要野党の支持率は大きく上昇していない。
2026年6月から7月にかけての調査では、自民党と維新の合計支持率は約2.3ポイント低下、掲載された野党各党の合計は約0.4ポイント上昇、支持政党なしは約1.3ポイント上昇となっている。
政権への不満の多くは、野党支持ではなく、無党派化や判断保留へ向かっている。これは、2009年の政権交代前夜とは明確に異なる。国民は、高市政権に注文を付けているが、同時に、野党を代替政権として積極的に評価しているわけでもない。
政権批判だけでは野党支持は増えない
2000年以降の政党支持率の推移を見ると、与党への批判が強まれば、自動的に野党の支持が上がるわけではない。
2009年に民主党が支持を伸ばしたのは、麻生政権への批判だけが理由ではない。民主党が、政権交代の受け皿として認識され、具体的なマニフェスト、候補者、組織、政権構想を持っていたからである。
現在の野党が政権支持率の低下を取り込めていないのは、政権批判の量が足りないからではない。批判の先にある政策、財源、工程、政権構想が十分に伝わっていないからである。
国会では、物価高、外交、安全保障、社会保障、地方政策などに関する実質的な質疑も行われた。したがって、野党質疑のすべてを「中身がない」と決め付けるべきではない。
一方で、週刊誌報道、発言の一部分、人物関係、過去の動画などを材料にした追及が繰り返され、法案や予算に対する具体的な代案が見えにくくなった場面も少なくなかった。
疑惑を検証し、政治家の説明責任を問うことは国会の役割である。しかし、報道された疑惑と、客観的に確認された事実は区別しなければならない。
根拠が確定していない情報を前提に人格や動機を攻撃し、同じ質問を繰り返すだけでは、国民には「政策論争ではなく、相手を傷つけることが目的化している」と映る。
支持率が下がっても野党支持が上がらない背景には、こうした国会論戦への冷めた視線もあると考えられる。
人格批判より対案が求められている
野党が政権を批判すること自体は、議会政治に不可欠である。政府に誤りや不透明な点があれば、厳しく追及しなければならない。しかし、政権担当能力を示すためには、批判だけでは足りない。
物価高を批判するのであれば、どの税を下げ、どの給付を行い、財源をどう確保するのかを示す必要がある。社会保障改革を批判するのであれば、給付と負担のどこを変えるのかを示す必要がある。
外交・安全保障政策を批判するのであれば、中国、ロシア、北朝鮮、米国との関係をどのように構築するのかを示さなければならない。法案に反対するのであれば、単に廃案を求めるだけでなく、修正案や対案を提示することが望ましい。
人格批判や誹謗中傷に近い言葉を重ねても、政権を担う準備があることの証明にはならない。国民が見たいのは、誰をどれだけ強く批判したかではなく、自分たちの生活をどう改善するかである。
メディア報道が逆に政権を支える構図
メディア報道にも検討すべき点がある。首相の衆議院予算委員会への出席時間だけを示し、国会出席率が低いと報じれば、参議院、本会議、他委員会、閉会中審査、外交日程などは見えなくなる。
第221回国会についても、当初予算審査の35時間30分だけを示せば、7月27日の閉会中審査3時間は反映されない。政府提出法案の成立状況についても、会期途中の数字を最終結果のように扱えば、64件すべてが成立した事実を見誤る。
公約についても、「今国会で成立」「次期国会へ提出」「制度設計を開始」という工程を区別せず、今すぐ成立していないものをすべて「公約破り」と報じれば、政策評価ではなく印象評価となる。
疑惑報道においても、疑惑が報じられた、関係者が主張した、客観的証拠が確認された、違法性が認定された、という段階を区別しなければならない。
こうした区別を欠く報道が続けば、政権批判を強めるどころか、「また印象操作ではないか」という反発を生み、政権支持層を結束させる可能性がある。
高市政権の発足後、批判的な報道が強まる局面で、逆に支持率が上昇した時期があったことも、こうした反作用と無関係とは言い切れない。
もっとも、世論調査だけで報道と支持率の因果関係を証明することはできない。メディア不信は政権を一時的に下支えしても、国民生活を改善する実績の代わりにはならない。
支持率維持より政策実行を優先
国家情報機関、皇室制度、国旗損壊、副首都、外国人政策、経済安全保障などは、いずれも賛否が分かれやすい政策である。
支持率の維持だけを優先するのであれば、対立を生む法案は先送りし、給付や補助金など、短期的に受け入れられやすい政策だけを前面に出す方が政治的には安全である。
しかし高市政権は、国論を二分する可能性のある政策についても、国会での審議と法案成立を進めた。高市首相自身も、選挙の段階から、国論を二分する政策を推進するには国民の明確な信任が必要であるとの考えを示していた。
つまり、対立を生み得る政策を進めること、その結果として一定の支持を失う可能性を、選挙前から説明していたことになる。この点から見れば、支持率の低下は、単なる失政の結果だけではなく、対立を避けずに政策を進めたことによる政治的コストという面もある。
もちろん、対立的な政策を進めたというだけで、その内容が正当化されるわけではない。法案の必要性、立法事実、基本的人権への影響、財政負担、制度の運用については、今後も厳しく検証されるべきである。
高市政権の現在地
質疑時間、法案成立率、支持率という3つの指標を、2000年以降の歴代政権と比較すると、高市政権の特徴は明確である。
首相の予算委員会出席時間は、2010年代以降の平均よりは短いが、2000年代を上回り、2000年以降では短い方から9番目程度であり、極端に少ない水準とは言えない。
野党質疑時間と配分率は、2000年以降ではほぼ中位に位置する。首相出席時間に占める野党質疑比率は80.5%であり、2000年以降では最も高い。そのため、首相の拘束時間は近年より減らしながら、野党の質問機会の比率は削っていないと言える。
政府提出法案成立率は、内閣提出法案は64件中64件が成立し、成立率は100%である。2001年以降では、2022年の岸田内閣と並ぶ最高記録であり、法案数も近年平均を上回る。
公約・連立合意の実行は、公約や連立合意に関連する政策が、政府法案、議員立法、組織新設など複数の方法で進められており、一部に未達や継続審議となった項目はあるが、公約を何一つ実現していないという評価は成立しない。
内閣支持率は、発足時は小泉内閣に次ぐ最高水準であり、ピークから約16ポイント下落しているが、7月平均でも54.6%を維持しており、歴代政権との比較では高い水準にある。
野党への支持は、2009年の麻生政権末期とは異なり、内閣支持率の低下が大幅な野党支持増につながっていない。支持率低下分の多くは無党派層や態度未定層へ移っている。
これらの内容から判断すれば、高市政権は、国会答弁時間の長さより立法成果を優先し、野党へは高い質疑比率を確保しながら、対立的な政策を含む法案を成立させた政権と位置付けられ、支持率を一部失いながらも、野党への政権交代期待は高まっていないと分析できる。
次の焦点は「成立数」から「生活実感」
今国会における立法実績は高いが、法案を成立させれば政策が成功したことになるわけでもない。今後の焦点は、成立した制度が国民生活の改善につながるかである。
第1は、物価と実質賃金である。高い法案成立率を示しても、食料品やエネルギー価格の上昇が続き、家計の負担が軽くならなければ、支持率の回復にはつながらない。
第2は、未完了の公約である。定数削減、消費税を含む負担軽減策、出産費用、給付付き税額控除、社会保障改革など、次の国会で何を提出し、いつ実施するのかを示す必要がある。
第3は、成立法の運用である。国家情報会議、副首都、経済安全保障、皇室制度などの仕組みが実際に機能するか、権限濫用や制度の形骸化を防ぐ仕組みが働くかが問われる。
第4は、国会改革である。総理出席を減らすだけではなく、党首討論を定例化し、担当大臣が政策の詳細について責任を負う仕組みに改めなければならない。
第5は、国民への説明である。政策の工程と実施時期を繰り返し示し、成立したもの、進行中のもの、期限未到来のもの、未達のものを明確に区別する必要がある。
支持率を左右する3つのシナリオ
今後の政治情勢は、大きく3つに分かれる可能性がある。
第1のシナリオは、成果が見え、支持率が回復するシナリオである。成立した法案の効果が見え、実質賃金、物価、教育費、医療費、地方経済などで改善が実感されれば、支持率は再び上昇する可能性がある。
小泉政権が支持率を上下させながら長期政権を維持したように、政策の争点化と成果によって再浮上する余地は十分にある。メディアや野党による批判が、客観的な事実を欠いた人格攻撃や印象論に傾けば、その反作用によって政権支持層が再結集する可能性もある。
第2のシナリオは、50%前後で安定するシナリオである。政策への評価と反発が拮抗し、支持率が50%前後で推移する可能性もある。
この場合、野党が支持の受け皿にならなければ、高市政権は一定の安定を維持できる。ただし、無党派層が増え続ければ、平時には安定して見えても、選挙時に有権者が一気に動く不安定さを抱える。
第3のシナリオは、生活実感が改善せず、支持率が続落するシナリオである。物価高が続き、公約の実施が遅れ、成立法の効果が見えなければ、支持率はさらに低下する。
野党が財源と工程を伴う現実的な対案を示し、政権を担う準備を整えれば、2009年のように政権批判が政権交代期待へ転化する可能性が生まれる。逆に、野党が人格批判や疑惑追及に依存し続ければ、支持率低下分は無党派層に滞留し、政権交代にはつながりにくい。
結論
2000年以降の歴代政権と比較した結論は明確である。
高市首相の衆議院予算委員会への出席時間は、2010年代以降の政権の中では短かったことは事実である。しかし、出席時間38時間30分は、2000年代の平均は上回っており、2000年以降で見れば極端に短い水準ではない。野党質疑は30時間59分確保しており、首相出席時間に占める割合は80.5%と、野党の質問機会を一方的に奪ったとも言えない。
政府提出法案は、64件すべてが成立し、成立率は2001年以降で最高水準である。国家情報会議、国旗損壊、副首都、皇室制度など、公約や連立合意に関連する政策も、政府法案、議員立法、組織新設などの形で進められた。
支持率は、ピークから下落しているが、発足時が2001年以降で小泉内閣に次ぐ最高水準であったことを考慮する必要がある。さらに、低下した分が主要野党へは大きく移っておらず、2009年の政権交代前夜とは状況が異なる。
参照
数字で読み解く高市政権の国会運営
数字で読み解く高市政権の国会運営解説動画
