2026年度予算案が、122.3兆円規模で最終調整されている。メディアは予算額が過去最大であることを強調し、財政規律の緩みを批判する。しかし、当初予算額が過去最大となるのは毎年のことであり、このような報道には辟易する。

 

実際、第2次安倍政権以降で前年度予算を下回ったのは2024年度予算(112.6兆円)のみで、この年も2023年度(114.4兆円)からわずか1.8兆円の減額に過ぎなかった。予算規模だけを取り上げて「過去最大」と騒ぐのは、毎年繰り返される無意味な議論である。

 

立憲民主党などの野党は、国債発行額が前年度を超える規模で財政規律が緩んでいると批判する。だが、野田内閣時代の2012年度予算を振り返ってみると、一般会計90.3兆円のうち、新規国債発行額は44.2兆円で、国債依存度は実に49.0%に達していた。

 

それに比べれば、2026年度の新規国債発行額は30兆円を超えない規模との見通しが報じられている。これは今年度の28.6兆円に次いで2番目に低い水準だ。当初予算額が前年度より約7兆円膨らむ予定であることを考えれば、国債依存度は最小限に抑えられていると言える。

 

民主党政権で財務大臣を務めた野田氏や安住氏が、財政規律の緩みを声高に批判するのは、自らの政権時代を忘れた議論である。彼らが財政をどこまで理解しているのか、疑問を抱かざるを得ない。歳出の半分近くを国債で補っていた野田政権と現在とでは雲泥の差がある。

 

民主党政権時代の経済状況を思い起こせば、2012年11月時点で日経平均株価は8,757円、為替は2011年10月に対ドルで過去最高値の75.32円を記録した。一時は70円台半ばという超円高に苦しんでいた。

 

それに対し、第2次安倍政権以降の経済政策は、それなりの成長を実現してきた。現時点での予算規模だけを取り上げて財政規律が緩んでいると批判するのは、経済成長の実績を無視した的外れな議論である。

 

予算案の詳細は決定後に改めて評価したいが、高市総理・片山財務大臣のコンビは、従来の政権とは全く異なる考え方を持っている。長期的な視点で財政規律を保つため、まず成長に力を入れるという姿勢が明確である。

 

具体的には、少子化対策の拡充、デジタル化推進といった成長投資や、防衛力の強化を重視している。同時に、今後は補正予算の編成をできるだけ抑制し、当初予算で必要な施策を盛り込む方針を示しており、従来の補正予算ありきの予算編成から脱却しようとしている。

 

財務省で主計官を経験した片山大臣が、財務大臣に就任した意味は大きい。予算編成の実務に精通した人材が、財政規律と成長戦略のバランスを取りながら、様々なことを考えた上で編成作業を進めているのは、高市総理にとっては心強いはずだ。

 

メディアは、そろそろ国債発行額のみで財政を批判するのはやめた方が良い。個々の予算項目についての取材を深め、どのような意図で予算を配分しているかを詳しく報道する方が、国民の知りたい事実であり国益にかなう。

 

例えば、社会保障費(38兆円超)の自然増への対応、国債費(28兆円超)の金利上昇への備え、地方交付税(19兆円超)による地方支援など、予算の中身を精査すべきだ。単純な規模の比較ではなく、政策の優先順位や財源配分の妥当性を議論することが重要である。

 

2026年度予算は、様々な意味で興味深い予算となる。メディアは報道姿勢を改めなければ、ここでもオールドメディアと揶揄され、国民から見放されることになる。予算案の決定過程やその意味、国会での審議の見通しなどを、詳しく丁寧に解説する報道を期待したい。

 

 

 

12月の各社の世論調査の結果が出揃った。高市内閣発足後3回目の調査となるが、どの調査でも内閣支持率は引き続き高い状況が続いている。懸念される日中関係の悪化も、支持率にはほとんど影響を与えていないことが明らかとなった。

 

主要報道機関全社の調査結果の平均値は68.87%で、前回調査から1.6ポイントの微減となったが、依然として高水準を維持している。発足から3回目の調査を経て、なお7割近い支持を集めている事実は、国民の期待の高さを如実に示すものである。

 

報道機関別の調査結果は、JNNが75.8%、産経が75.9%、ANNと日経がともに75%で続いている。読売は73%、朝日68%、毎日67%、共同67.5%、NHK64%と、いずれも60%を大きく超える支持率を記録した。最も低い時事通信でも59.5%と、6割近い水準である。

 

調査手法や対象の異なる10社の調査全てで高支持率を獲得している事実は、極めて注目に値する。偏りがなく、幅広い層からの支持が得られていることの証左である。内閣不支持率は18.5%と前回から若干上昇したが、支持率との差は50ポイント以上ある。

 

注目は、各社調査のばらつきが比較的小さい点である。最高値のJNNと最低値の時事の差は16.3ポイントあるが、10社中8社が65%以上という高水準に集中している。調査方法や質問、対象者の抽出方法が異なる複数の調査で、同じように高い数字が出ることは稀である。

 

特に、産経や読売などの保守系メディアだけでなく、朝日や毎日などのリベラル系メディアの調査でも60%台後半から70%台を記録しているのは注目に値する。これは、高市政権への評価が、特定のイデオロギーを超えた広がりを持っていることも示唆している。

 

政党支持率を見ると、自民党は30.3%と前回から0.1ポイント上昇しているが、内閣支持率に比べるとその勢いは心許ない。しかし、立憲民主党6.2%、国民民主党6.0%、維新の会5%、参政党4.2%と、他党に大きな伸びがないことから、自民党との差は大きい。

 

自民党以外の政党はいずれも一桁台の団子状態であり、無党派が36.8%と多い。特定政党への固定的な支持が弱まり、政策本位で評価する有権者が増えている。高市内閣の高い支持率は、こうした無党派層からも一定の支持も得ていると言って良い。

 

政権発足当初のご祝儀相場と呼ばれる一時的な高支持率は、通常は時間の経過とともに低下していく傾向にある。ここで重要なのは、支持率の水準そのものが依然として高く、かつ各社の調査でも一貫性が見られるという点である。

 

この現象は、小泉政権や第2次安倍政権を彷彿させる。高い支持を背景に、明確なメッセージと強いリーダーシップで政権運営を進める構図は、過去の長期安定政権と重なる部分が多い。余程の失政がない限り、次の総選挙まで大きく支持を失うことはないだろう。

 

高市政権の強みは、目的を国民にはっきりと伝えている点にある。不退転の決意で政策課題に臨み、成し遂げられない場合は責任を取るという姿勢は、信頼感を醸成している。課題に正面から向き合っている時点で、従来の政権とは一線を画していると見られている。

 

また、野党との約束も守り、嘘をつかないという誠実な取組みや国会答弁における真摯な対応、首脳外交で見せた高いコミュニケーション能力なども、国内外に好印象を与えている。こうした要素が重なり、幅広い支持層を形成しているとも言える。

 

この勢いは、次の総選挙にも大きな影響を及ぼすものと思われる。公明党の連立離脱による選挙への影響は、早苗ブームとも呼べる大きな流れとなれば、完全に払拭されるはずだ。小泉政権時の郵政選挙を思わせるような、劇場型選挙の様相を呈する可能性もある。

 

野党にとって、この状況は極めて厳しいものとなる。今までのような責任転嫁や重箱の隅を突くような議論、口やかましく相手を罵るような誹謗中傷は、もはや通用しないと気づくべきだ。正面から政策を論じ合う姿勢を示さなければ、活路を見出すのは難しいだろう。

 

今回の世論調査が示した高市内閣への安定した支持は、早苗現象が単なる一時的なものではないことを示した。この状況が、日本の民主主義をより成熟したものへと導くのか、それとも新たな課題を生むのか、今後の政権運営と野党の対応に注視していく必要がある。

 

 

内閣及び政党支持率(一般社団法人日本みらい研作成)

内閣・政党支持率ダッシュボード

高市内閣支持率・主要政党支持率

 

 

 

12月15日から12月21日までの「政策リサーチ」アクセスランキングTop10は以下の通りとなった。

 

1位 2040年を見据えて社会とともに歩む私立大学の在り方検討会議・文科省(関係データ・事例集、人材育成システム改革推進タスクフォースについて)

2位 ODA・外務省(ホンジュラス共和国、キリバス共和国、キューバ共和国、カーボベルデ共和国、ベリーズ)

3位 労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会・厚労省(労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会開催要綱)

4位 健康経営推進検討会・日本健康会議・健康経営・健康宣言15万社WG合同開催・経産省(ライフデザイン経営とライフデザインサービスの普及拡大に向けて)

5位 政策情報・資源エネルギー庁(最近のエネルギー政策を巡る動向について)

6位 デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会・衛星放送WG・総務省(衛星放送WG第二次取りまとめ案に関する意見募集の結果)

7位 AIロボティクス検討会・経産省(AIロボティクス検討会戦略の方向性の骨子)

8位 労働政策審議会・労働条件分科会・労災保険部会・厚労省(第119回~第125回労災保険部会における委員の主なご意見)

9位 経済安全保障法制に関する有識者会議・内閣官房(推進法改正に関する検討会合の要点)

10位 フュージョン装置の開発を進める事業者等との意見交換会合・原子力規制委員会(FAST概念設計安全確保の基本方針、フュージョン装置の開発スケジュール)

 

 

 

 

 

 

本日、政府・与党は2026年度税制改正大綱を決定する。高市首相と玉木国民民主党代表との党首会談が昨日行なわれ、年収の壁を178万円まで引き上げることで合意したことにより、作業は一気に進んでいる。

 

高市首相は会談後、「強い経済を構築するという観点から最終的な判断を下した」と述べ、玉木代表は「物価高騰の影響を受けている中低所得者に手厚い形で引き上げ、拡大をできたことは大きい」と語り、信頼関係が深まったと政権への更なる関与も匂わせた。

 

同日夜、自民・公明・国民民主・維新の4党税調会長会談が開かれ、178万円への引き上げが正式に確認された。あわせて、自動車の環境性能割を2025年度末で廃止することでも合意し、国民民主が強く求めていた政策は重層的に実現する運びとなった。

 

税制改正をめぐっては、もう一つの注目点がある。高校生の扶養控除縮小である。児童手当が拡充されることを受け、政府内では当初控除の縮小も検討されていたが、国民民主、公明、維新が揃って反対姿勢を示したため、2026年度の改正では見送られることとなった。

 

これらを受け、本日午後、与党税制調査会で大綱が正式に決定されることになる。年収の壁の178万円への引き上げは、2026年1月からの適用を目指す。これによる減税額は、既に実施済みの160万円への引き上げと合わせると総額で約1兆8,500億円となる。

 

このように、税制改正では、補正予算と同様に野党からの要求を大幅に受け入れている。少数与党政権ということから、政権運営の安定が優先されたとも言える。今後の国会審議では、財源をめぐり立憲民主などの野党が厳しく追求することも予想される。

 

年収の壁では、所得税の課税最低限は従来の160万円から178万円へと引き上げられる。これにより、基礎控除と給与所得控除の最低保障額は物価上昇に合わせて4万円ずつ引き上げられ、基礎控除は58万円から62万円、給与所得控除は65万円から69万円へと改められる。

 

さらに、年収665万円以下の中低所得者に対しては、特例的な上乗せが行われることで、実質的な非課税ラインが178万円となるよう調整された。この措置で納税者の約8割がカバーされることとなり、物価高に苦しむ家計の手取りが増えることとなる。

 

一方、所得税の壁が上がっても社会保険料の壁(106万・130万円)や住民税の壁は依然として残っており、これらを総合的にどう設計し直すかが課題として残る。この問題に関しては、人的控除の抜本的見直しが3年以内に予定されていることから今後の注目点となる。

 

税制改正では、NISAと暗号資産でも新展開が図られた。NISAは、これまで18歳以上が対象だった「つみたて投資枠」の年齢制限が撤廃され、0歳から利用可能となる。これにより、大学進学などの将来のライフイベントに向けた長期的な資産形成が可能となった。

 

また、NISAの対象に国内市場の特定の株式指数が追加され、個人の預貯金が国内経済へ投資される流れを強化することとした。暗号資産については、取引による所得を株式と同様の20%分離課税へ移行することとし、投資家の参入障壁を大きく下げた。

 

防衛費増額の財源確保としては、所得税に付加税が新設されることとなった。これにより、2027年1月から所得税額に1%の付加税が課されるが、東日本大震災の復興に向けた復興特別所得税の税率を1%引き下げることで、単年度の国民負担は増えないように配慮された。

 

自動車税制は抜本的見直しをするとし、環境性能割を2026年3月末をもって廃止する。その上で、2028年5月から、走行段階での負担の公平性を図るためとし、電気自動車やプラグインハイブリッド車に対しても、車両重量に応じた一定の負担を求めた。

 

2026年度税制改正は、総合経済対策や補正予算と合わせて、デフレ脱却から物価高への対応、防衛力の強化という、国家の大きな岐路を反映した内容となっている。働く人々を、控えるから積極的に動くにマインドを変える、大きなエンジンになるものと思われる。

 

しかし、これは高市政権にとって、第一関門を越えたに過ぎない。この先も、2026年度予算案編成や通常国会での審議が待ち構えている。衆院では過半数を超えたが、参院では未だ少数与党だ。今回の合意を契機に、国民民主とどのような協力関係を築くかが注目される。

 

高市首相は補正予算成立後の会見で、「常に志を抱きつつ、懸命に為すべきを為すならば、いかなる困難に出会うとも道は必ず開けてくる。成功の要諦は成功するまで続けるところにある。」と述べた。この志をもつ限り、日本のみらいも捨てたものではないと信じたい。

 

 

 

 

観光庁とJNTOが12月17日に発表した2025年11月の訪日外国人旅行者数は、351.8万人となった。これにより、1月から11月までの累計は3,907万人弱となり、年間で過去最高を記録した2024年の3,687万人を上回った。

 

11月は紅葉シーズンの後半にあたり、特に欧米豪・中東を中心に高い訪日需要が見られた。東アジアでは韓国、台湾、東南アジアではマレーシア、インドネシア、欧米豪では米国、カナダを中心に訪日外客数が増加したことが今月の押し上げ要因となっている。

 

今回の発表で特筆すべきは、韓国、台湾、マレーシア、インドネシア、米国、カナダなど19市場が、11月として過去最高を記録した点である。11月までの累計でも17市場が年間での過去最高を更新しており、訪日旅行需要の裾野が着実に広がっていることが確認できる。

 

特に注目されるのが米国市場である。11月は30万人超を記録し、初めて年間累計で300万人を突破した。これにより米国は、中国、韓国、台湾に次ぐ4市場目の年間300万人超の市場となった。背景に、継続する訪日旅行人気や航空座席数増加、クルーズ需要の高まりがある。

 

今回の発表で興味深いのは、中国市場の動向である。11月の中国からの訪日客は56万人で前年同月比3.0%増である。中国政府による日本への渡航自粛を踏まえて、影響を懸念する声も多かったが、それでもプラス成長を維持しているのは意外でもある。

 

これは、現時点での政府レベルでの圧力が、必ずしも個人の旅行行動を大きく抑制していないことをうかがわせるものだが、中国の威圧行動が収まる気配がないことを考えると、来月以降は中国からの訪日客が徐々に減っていく可能性はある。

 

ゼロコロナ政策で渡航自粛が続いた中国の訪日客が、本格的に回復してきたのは昨年後半くらいからだ。しかし、それまでに中国以外の国からすでに多くの訪日客が来ていたことから、中国からの訪日客急増はオーバーツーリズムの引き金となった部分もある。

 

日本が、昨今の訪日客の急増に十分な対応ができていないことを考えると、このタイミングはオーバーツーリズム対策を行なう絶好の機会でもある。今のうちにしっかり体制を整えておくべきだ。中国からの訪日客減少は、プラスの側面もあると柔軟に考えるべきだ。

 

東アジアでは、韓国からは10%増の82.45万人、台湾から11.1%増の54.24万人と、いずれも11月として過去最高を記録した。一方、香港は8.6%減と前年同月を下回っており、中国政府の訪日旅行の自粛要請や航空座席数の減少が影響した。

 

東南アジアは、マレーシアは7.12万人、インドネシアは5.64万人と、こちらも11月として過去最高を記録し堅調であることが判明した。関西方面への直行便数の増加などが訪日旅行を後押しした可能性がある。インド市場も大きく伸びている。

 

欧州市場は、フランス、ドイツ、イタリアと、軒並み大幅な増加を記録した。訪日需要が高まるシーズンであることに加え、訪日旅行の人気や経由便の多様化が影響した。ロシアは前年同月比で倍増しており、この点は注目に値する。中東地域も大幅な増加を記録した。

 

2025年の訪日外国人旅行者数は、11月時点ですでに過去最高を更新し、年間4,000万人の大台突破が確実となっている。航空座席数の増加やクルーズ需要の高まりとともに、継続する訪日旅行人気がこの好調を支えていると言って良い。

 

中国からの政治的圧力という懸念材料があるが、現時点で影響は限定的である。これは、日本の観光市場が、特定の地域に過度に依存しない多様化が進んでいることの証左でもある。中国の威圧が続いた場合、痛みが広がるのはむしろ中国の方なのかもしれない。