2月8日に投開票を控えた衆院選は、最終局面を迎えている。その中で、報道各社が実施した終盤情勢調査は、驚くべき一致を見せている。読売、日経、朝日、産経、共同、TBSなど、主要メディアのほぼ全てが、自民党の圧勝を予測している。
日経と読売が共同で実施した終盤調査では、自民党が240~280議席超を獲得する見込みで、朝日は与党合計で310議席超の可能性にまで言及している。産経の調査でも、自民党は小選挙区で200以上の選挙区で優位に立ち、300議席台をうかがう勢いだという。
これだけ各社の予測が一致するのは、極めて異例である。通常、調査手法や分析方法の違いから、報道機関ごとに予測にはある程度のバラつきが生じるものだ。しかし今回は、週刊文春が自民単独過半数割れという予測を示している以外は、自民大勝で一致している。
この状況は、21年前の郵政解散選挙を彷彿とさせる。当時、小泉首相は郵政民営化法案の参議院否決を受けて衆議院を解散した。郵政民営化の是非を争点に掲げ、刺客戦術などで注目を集めた結果、自民党は296議席という歴史的大勝を収めた。
今回の高市首相による通常国会冒頭解散も、郵政解散と極めて似た構造を持っている。両選挙の共通点としては、高支持率を背景とした電撃解散、明確な争点設定、短期決戦、野党の準備不足、首相個人への高い支持、メディア報道の一方的な勝利予測などが挙げられる。
ただし、決定的な違いもある。2005年は自民・公明の与党連立だったが、2026年は自民・維新の連立である。中道改革連合という「野党第一党+旧与党」の新党が誕生したことで、政治的な構図は2005年よりもはるかに複雑となっている。
郵政解散時の自民党の戦績を振り返ると、自民党獲得議席は小選挙区219、比例77の296議席、自民党得票率は小選挙区47.8%、比例代表38.2%、投票率は67.51%となっている。この時の定数は、480議席である。
この選挙で、自民党は小選挙区で75.8%の議席を獲得した。小選挙区制の勝者総取り効果が最大限に発揮された結果である。比例代表は38.2%で定数180の42.8%を獲得している。小泉内閣の支持率は解散直前で55~60%程度、自民党支持率は40%前後だった。
では、今回の選挙で自民党はどの程度の議席を獲得する可能性があるのだろうか。その前提条件は、内閣支持率57~73%、自民党支持率40%程度、定数は465議席で、投票率はおそらく60%前後になるものと予想している。
現在の高市内閣の支持率は、小泉政権と同等かそれ以上である。自民党支持率も40%前後と、2005年よりは若干下回ってはいるが、ほぼ同水準である。それらを踏まえて、報道各社の予測を総合すると、自民党の直近の議席予測は以下のようになっている。
日経・読売は240~280超、朝日は250~290程度、産経は250~300超、共同は240~260程度、TBSは240~330である。最も保守的な予測でも240議席、楽観的な予測では300議席超となっている。中央値をとれば、自民党は260~280議席程度である。
自民党が270議席を獲得した場合、維新の30議席前後と合わせると与党で300議席となる。これは定数465の64.5%に相当し、2005年の自公の合計327議席(定数の68.1%)にはやや及ばないものの、それに近い地滑り的勝利となる。
2005年の郵政解散で自民党が圧勝した最大の要因は、小選挙区での圧倒的な勝利である。289選挙区のうち219選挙区で勝利し、驚異的な議席ボーナスを獲得した。今回の選挙でも同様の、小選挙区での勝者総取り現象が再現される可能性は高い。
報道各社の分析によれば、自民党は小選挙区289のうち180~200以上の選挙区で優位に立っている。これは全体の62~69%に相当し、中道改革連合は優勢な選挙区が20にも届いていないという厳しい数字である。
接戦区での情勢が自民に傾けば、小選挙区で200議席を超え、比例は75議席程度という数字も十分にあり得るため、その場合は、自民党単独で275~280議席に達し、与党合計では310議席(3分の2)を超える可能性もある。
深刻なのは中道改革連合である。自民党の上昇気運に反し、失速が止まらない。中道改革連合は、公示前は167議席で野党第一党の地位にあった。地方議員数では自民党を上回る組織力を持ち、労働組合と創価学会という二大組織基盤を併せ持つ。
しかし、報道各社の予測は一様に厳しく、日経・読売は80~100議席と半減、朝日は80~100議席と半減の可能性、産経は80議席前後と半減の可能性、共同は80~100議席と公示前から大幅減、TBSは55~130議席と最悪の場合3分の1となっている。
最も楽観的な予測でも100議席程度、悲観的な予測では50議席台まで落ち込む可能性がある。中央値をとれば、80~90議席程度である。これは公示前の半分程度であり、合併効果どころか合併が逆効果になっていると言って良い現象だ。
なぜこれほどまでに失速したのかといえば、結党が選挙直前だったこと、政策の不透明さ、高市旋風に飲み込まれたことなどが挙げられる。日本初の女性首相という歴史的意義と、70%前後という圧倒的な内閣支持率の前に、対立軸を打ち出せないまま埋没した。
2005年の郵政解散と今回の選挙の大きな違いとしては、新興政党の台頭が挙げられる。郵政解散当時も国民新党が結成されたが、獲得議席はわずかに留まった。今回は、参政党やチームみらいなどが躍進する見込みで、両党合わせて15~25議席を獲得する可能性がある。
これらの新興勢力の躍進は、自民一強への消極的な支持や、中道改革連合への失望の受け皿になっていると見られる。2005年の郵政解散が自民 vs 民主という二大政党対決だったのに対し、2026年は多極化の様相を呈している点が興味深い。
もう一つの重要な変数は、投票率である。2005年郵政解散の投票率は67.51%で、戦後7番目の高さだった。小泉劇場への関心の高さと、郵政民営化という明確な争点が、有権者を投票所に向かわせた。
しかし今回は、1月27日公示・2月8日投開票という真冬の選挙である。しかも、戦後最短の16日間という短期決戦だ。東北や日本海側では積雪の影響も懸念され、総務省によれば投票所の42%で終了時間の繰り上げが予定されている。
過去の冬季選挙の投票率を見ると、おおむね60%台前半に留まる傾向がある。報道各社の調査でも、投票先未定層が小選挙区で約2割、比例で約1~3割存在し、これらの層が実際に投票に行くかどうかが不透明だ。
もし投票率が60%程度に留まった場合、2005年と比べて約450万人の有権者が投票所に行かないことになるが、それでも前回の衆院選よりは6%程度高いという状況であることは踏まえる必要がある。ちなみに、2024年は53.85%、2021年は57.21%であった。
以上、報道機関の分析から総合的な最終予測を総合すると、自民党265~280、維新の会28~35、中道連合75~95、国民民主党22~28、共産党5~8、参政党12~16、チームみらい6~10、れいわ新選組2~5、その他5~10となる。
この予測は、報道各社の中央値に基づいており、先日の日本みらい研のシミュレーション結果にも近い数値となっている。この結果を踏まえれば、自民党は265~280議席を獲得し、単独で絶対安定多数を確保し、連立与党全体で295~310議席となる見込みである。
この先も自民党に追い風が続けば、衆議院の3分の2である310議席に達する可能性も十分にあり得るが、これは郵政解散時の自公合計327議席には及ばないとしても、ほぼ同等の数字であり、地滑り的な勝利になる可能性が高いということを示している。
興味深いのは、週刊文春が自民単独過半数割れ(210~230議席)という独自予測を発表していることだ。週刊文春は、中道改革連合が票を固めたと分析しており、労働組合と創価学会という二大組織が終盤に本格稼働すれば、情勢が逆転する可能性があるという見立てだ。
しかし、これほど多くの報道機関が自民圧勝で一致している状況を考えると、週刊文春の予測が的中する可能性は低いと言わざるを得ない。今の状況ではアンダードッグも起きにくく、自民圧勝報道が投票行動に影響を与えるバンドワゴンが起きている可能性の方が高い。
結論としては、2月8日の衆議院議員総選挙は、高い確率で自民党の地滑り的勝利に終わると予測する。報道各社の予測がこれほど一致することは稀であり、高市内閣発足後の内閣支持率でも同様の傾向が見られていることから、メディアの予測通りになる可能性は高い。
自民党は265~280議席を獲得し、単独で絶対安定多数を確保、維新との与党合計では295~310議席に達する。再可決や憲法改正発議に必要な3分の2も視野に入るが、有権者の絶妙な肌感覚で3分の2に少しだけ足りないという結果に落ち着く可能性の方が高い。
その受け皿が、参政党とチームみらいになる。両党が衆議院で18~26議席を獲得すれば、政党の多極化も進む。これは2005年にはなかった新しい現象であり、今後の政治地図を塗り替える可能性もある。
一方、中道改革連合は公示前の半分程度の75~95議席に留まり、立憲+公明の合併効果は完全に失われる。野党第一党の地位は維持するものの発言力は一気に弱まり、野党再編へ向けた動きが加速するかもしれない。
今回の選挙が小泉劇場を再現しているかといえば、ほぼ再現していると言って良いだろう。議席数では2005年に及ばないかもしれないが、それは定数の違いと新興勢力の台頭によるものであり、地滑り的勝利を生み出すという本質は変わらない。
挑戦しない先に未来はないと訴え、わかりやすい言葉で政策を語る姿は、今までの日本の首相にはないタイプだ。日本初の女性首相という言葉だけでは括れないほど、何かを変えてくれるという期待感が若い人たちを中心に広がっている。
高市政権を批判する人たちは、明確な対案や独自の考えがあって批判しているというより、古い体制や固定概念に縛られ、新たなものを創り出そうとする動きに本能的に反発しているように感じられ、ネガティブな印象となっている。
高市首相が国民に政権選択を訴えた以上、野党も国家のあるべき姿を示さなければ、議論は噛み合わない。明らかにフェイズが変わったにもかかわらず、選挙のことしか頭になく与党の批判を繰り返すので、中道連合には支持が広がらないという悪循環に陥っている。
真冬の選挙、戦後最短の選挙期間、自民圧勝という報道が、投票意欲を削ぐ可能性もあるため、2005年のような熱狂を生み出せるかは微妙かもしれない。しかし、高市首相の政治スタイルが、今まで政治に関心のなかった人にまで大きな影響を与えて始めている。
総裁選や首班指名、日中問題など、節目となるタイミングでは、メディアや抵抗勢力が批判の声を強め、全力で高市首相の行手を阻み、ガラスの天井となってきた。今回の総選挙は、その意味で乗り越えるべき最後の大きなガラスの天井とも言える。
この天井を破ることができれば、この先は安心して政権運営を進めることができる。中国は中道改革連合を支持するとし、様々なタイミングで期待の声を発信している。これに対し、米国はトランプ大統領が昨日、選挙中にも関わらず異例の高市首相への支持を表明した。
この両国の対応を見ても、向き合う方向は明らかである。2月8日にはこれらの答えが出る。今回の総選挙が、日本政治の新たな時代の幕開けとなるのか、それとも失速の歴史を繰り返すのか、判断は有権者の投票行為に委ねられている。




