水の章〔5〕守りたいもの | 星流の二番目のたな

星流の二番目のたな

デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

 マーメイモンの錨が、鳥ののどを貫こうとした瞬間。

「《メガフレイム》!」

 入り江の奥から、火球が飛んできた。

「っ!」

 マーメイモンはとっさに錨を掲げて盾にした。

 が、魚の下半身では踏ん張りが効かず、火球に押されてバランスが崩れる。

 やや飛んで波打ち際にあお向けに打ちつけられた。

「かしら!」

「ピヨモン! 無事か!」

 波打ち際と入り江の奥から、同時に声が上がった。

 ガワッパモンに助け起こされ、マーメイモンが半身を起こす。

 入り江の奥からは、重い足音と共にデジモンが走ってきた。

 身長はマーメイモンの二倍、幅は三倍はあるだろう。二つの足で力強く砂浜を蹴り、牙の生えそろった口からは煙が漏れている。

 確か、先程の船上にいた隊商のひとりか。

 マーメイモンの推測に答えるように、鳥――ピヨモンが口を開いた。

「何であなたがここにいるのよ!」

 走ってきたデジモンは、ピヨモンをかばえる位置で止まり、真面目な顔で答えた。

「何でって、お前がこの辺りに落ちるのが見えたから、助けに来た」

 ピヨモンは咳きこみながら反論する。

「そうじゃなくて! あなたは隊商の護衛なの! それが仕事なの! 隊商を離れちゃ駄目でしょ!」

「ああ、隊長にもそう言われた」

 大柄なデジモンは、うんうんと首を縦に振った。

 そして、ピヨモンの次の言葉を待たずに続けた。

「だから、ピヨモンを探すために、護衛辞めるって言ってきた!」

「はああっ!?」

 ピヨモンの悲鳴は、怪我をしているとは思えないほど大きかった。マーメイモンが、その声量に顔をしかめたほどだ。

「あいつら、何の話をしてるんだ」

 マーメイモンのつぶやきに、大柄なデジモンが改めて向き直った。

「ああ、悪い。俺はピヨモンの仲間でジオグレイモンっていうんだが……えっと、仲間を助けにきた。ピヨモンを隊商に戻らせたいし、必要ならお前ら海賊と戦う、っていう話をしてた」

「違う、そういう話じゃない……」

 ピヨモンの声がしぼんでいく。疲れたのか、反論する気が失せたのか。

 そんなピヨモンを無視して、マーメイモンはジオグレイモンに向かって錨を構えた。今、一番警戒すべき戦力は奴だ。

「あたしは、そのちっこいデジモンにだまされてイライラしてるんだ。あんたがそいつをかばうってんなら容赦しないよ」

「俺も、仲間を傷つけられて許す気はない」

 ジオグレイモンも表情を引き締める。

 お互いがにらみ合い、身構える。

 

 マーメイモンが、ガワッパモンに目配せした。

 その隙を見逃さず、ジオグレイモンが動く。

「《メガフレイム》!」

 海賊達に向かって火球が放たれる。マーメイモンは海辺へ、ガワッパモンは砂浜へ宙返りして避けた。

「まだまだ!」

 ジオグレイモンはガワッパモンに狙いを定め、次々と火球を吐いた。砂が跳ね、焼ける臭いが鼻をつく。

 その中から、銀色に光る円盤が飛び出した。

「《DJシューター》!」

 円盤は砂浜をえぐり、ジオグレイモンに迫る。

「おっと」

 ジオグレイモンは円盤を避けて移動しながら、ガワッパモンに攻撃を続ける。

 ジオグレイモンの右足が、波打ち際を踏んだ。

「《ノーザンクロスボンバー》!」

 突然、海面から水柱が上がった。

 マーメイモンが激しく錨を振り回し、ジオグレイモンの足場を崩す。

 ジオグレイモンは海に倒れこんだ。

 すかさずその首に、マーメイモンが錨をかける。

「あんた、泳いだことはあるかい?」

 その言葉に、ジオグレイモンの体がこわばる。

 マーメイモンはにやりと笑いながら、錨を引いた。

 ジオグレイモンの巨体が引きずられ、顔が水中に沈む。

「ジオグレイモン!」

 ピヨモンが悲鳴を上げる。

 ジオグレイモンは必死に体を起こし、息を吸おうとする。

 しかし、顔が海面から出たのもつかの間、マーメイモンが錨を引き、海中に引きずり込む。

 それを繰り返すうちに、ジオグレイモンの体は少しずつ海へと沈んでいく。

 ピヨモンは激しく視線を巡らせ、何か考えているようだった。が、ガワッパモンが砂浜を歩き、ピヨモンに迫る。

 ガワッパモンがピヨモンをつかもうとした瞬間、ピヨモンが目を見開いた。

「海賊! 戦いをやめて! 提案がある!」

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

更新が遅々としていて申し訳ありません(平身低頭)

デジモン愛と小説愛はちっとも減っていないのですが、リアルの仕事がなかなか減らないのです(泣)

学生の頃(フロ02を書き始めた頃)は週1~2回ペースで更新していたことを思うと、つくづくあの頃は時間と体力があったなと思います。

……いや、体鍛えろって話なんですけどね。運動、嫌だなあ……。