光の章〔4〕心の距離 | 星流の二番目のたな

星流の二番目のたな

デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

 草原の町を全滅させてから、ガルルモンは少年王と一度も話していない。それどころか、間近で姿を見ることもなかった。

 それでいて、ガルルモンへのいたずらは過激になった。

 

 ガルルモンが城の廊下を歩いていると、反対側からララモンが飛んできた。

 ララモンはガルルモンを見つけて「あっ」と声を上げた。ガルルモンが足を止める。

「ララモン様、俺に何か?」

「ううん、別に」

 ガルルモンが聞くと、ララモンはそう答えながらも、何か迷っているような表情を見せた。自分が来た方向を、そっと振り返る。

 ララモンの様子に、ガルルモンはおおよその事態を察した。

 ララモンが不安そうに見守る中、ガルルモンは周囲に注意を払いながら歩きだす。

 窓と窓の間、他に比べてやや暗い場所。その床に、何か光るものが落ちている。

 ガラスの破片だ。気づかずに踏んでいたら、足の裏が悲惨なことになっていただろう。

 ララモンが寄ってきて、一生懸命に訴える。

「ボクは危ないからやめようって言ったんだ。でも殿下が」

「心配しなくても、怒りませんよ」

 ガルルモンは静かに答えた。

 ララモンはいたずら好きだが、デジモンを傷つけるようないたずらはしない。

 それは、少年王も同じだったはずなのだが。ガルルモンは小さく嘆息する。

 通りかかった掃除係を呼び止めて、ガラスの破片を片付けるように言いつける。

 それから、改めてララモンに向き直る。

「殿下はどこに?」

「この後は、テラスでケンタルモンの授業を受けるはずだけど」

「では、一緒に行きましょう」

 ララモンの先導で、ふたりはテラスに向かった。

 

 テラスでは、ケンタルモンが浮かない顔で待っていた。

「ケンタルモン様、殿下を探しているのですが」

 ガルルモンが聞くと、ケンタルモンはため息をついた。

「私もです。ここ最近、殿下は授業を欠席してばかり。探しても逃げ回ってしまって、話もろくにできないのです」

「ケンタルモン様でさえ、お話ししていないのですか……」

 ガルルモンだけならまだしも、教育係のケンタルモンとすら関わりを断っているとは。

 少年王の心持ちは、ガルルモンが思っているよりも深刻のようだ。

 ケンタルモンが口を開く。

「ガルルモン、よろしければ貴方が殿下と話してくださいませんか」

「俺が」

 ガルルモンは内心尻込みした。

 少年王に随行せず、手を汚させた自分に、今さら何ができるというのだろう。

 ガルルモンの心境を知らずに、ケンタルモンは言葉を続ける。

「貴方が相手ならば、殿下も遠慮なく何かを話せるかもしれません」

 遠慮なく。

 自分も少年王に対して遠慮していたのかもしれない、とガルルモンは思った。

 少年王に手を汚させたという自責の念が、少年王から距離を取る原因になっていたのではないか。

 ガルルモン自身も、草原の町の一件に向き合う時が来たのか。

 ガルルモンは腹をくくった。

 力強く顔を上げて、答える。

「分かりました。殿下を探して話してみます」

 少年王にどんな言葉をぶつけられても、自分にはそれを受け止める義務がある。

 

 

 

☆★☆★☆★

 

 

 

2020年最初の小説更新。改めまして、今年もよろしくお願いします。

1000字程度と短くなってしまいましたが、この後のガルルモンとルーチェモンの会話が丸っと1話分かかりそうなので、ふたりの会話を1話にまとめるためにここで切ります。

本当は、今回の話とふたりの会話で1話になる予定だったのですが、星流のいつもの長くなる病が発症しまして(汗)

これだけ書いていて、いまだに執筆した時の文章量が予測できないとなると、もう一生予測できない気がします(泣)

 

余談ですが、アイコンとヘッダーを変え(て)ました。

アイコンは星流の特撮オタクの相棒が作ってくれたものです(感謝!)。

これをアイコンにするのに伴い、アイコンで使っていた十闘士の紋様とドット絵をヘッダーに移しました。