風の章〔7〕待ち伏せる賊 | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

 イリス隊商は丘の町に一週間滞在した後、西へと旅立った。

 グリズモンを始め、屈強なビーストデジモンがバシャを引いていく。その周りを、ジオグレイモン達護衛が歩く。

「ピヨモン、次に行く十字路のバザールってどんなところなんだ?」

 ジオグレイモンが頭上を見上げて聞いてくる。ピヨモンが頭に座ることが、最早日常となっている。

 ピヨモンがジオグレイモンを見下ろす。

「十字路のバザールはね、東西南北からの道が交わっている場所で、光の城下町の次に大きな町なんだ。私達は、草原や丘の町で仕入れたものを、十字路のバザールに売りに行くってわけ」

 ピヨモンの説明を噛み砕くように、ジオグレイモンは何度か頷いた。

「でも、そう気安く行けるところじゃないみたいだな」

 ジオグレイモンの言葉に、ピヨモンは頷いた。

 丘の町を出る前に、隊長から「この先、十字路のバザールまではいつも以上に警戒するように」と指示があった。

 隊商の面々も言葉少なで、護衛達は絶えず周囲に目を配っている。

 ピヨモンもジオグレイモンの頭の上で背伸びして、辺りを見回す。そうしながら、ジオグレイモンに説明する。

「この大陸から十字路のバザールに抜ける隊商は、みんなこの道を通るの。大きな乗り物が走れる道がここしかないから。だから、隊商を狙った盗賊もよく出る」

 それに、と言いながら、バシャを見るように促す。

 隊商は仕入れた荷物を大量に積んでいる。乗り物の動きは鈍く、時折車輪がきしむ。

「今、襲われたら、素早く動けない。それに、バシャが一台壊されるだけで、売り物がたくさん盗られる」

 あと、とピヨモンが付け足す。

「この辺りの盗賊が何か企んでいるらしいって情報もあるから、普段以上に気をつけないと」

「何かって?」

 ジオグレイモンに聞き返されて、ピヨモンは口ごもる。これ以上は推測も含まれるし、どう言えば良いだろう。

 しかし、ピヨモンが口を開く前に、斥候のバードラモンが飛んでくるのが見えた。

 

 隊長の指示で、隊商は一旦歩みを止めた。

 バードラモンが隊長のそばに下りた。ピヨモンとジオグレイモンも話の聞こえる場所に近づく。

 バードラモンが隊長に報告する。

「この先に、急ごしらえの関所ができています。しかも、ガルダモンの命を受けていることを示す赤布が巻いてありました」

 ツチダルモン隊長が、ほう、と怪訝そうな顔をする。

「関所にはビーストデジモンが5体。ゴリモンやキュウビモンです。揃いの鉄爪を装備しているのが見えました」

「キュウビモン」

 ピヨモンがつぶやく。菓子屋に来ていたキュウビモンと同個体だろうか。

「奴らに気づかれない高度で観察していましたが、どうやら道を通る隊商から通行料を取っているようです」

 以上です、とバードラモンが告げて、隊長の指示を待つ。

 隊長はあごを指で叩きながら数秒考え、話を飲み込んだようにうなずいた。

 それから、ピヨモンに目を向けた。

「ピヨモン、問題だ。この状況、どう考える?」

 ピヨモンはジオグレイモンの頭に座り込み、考えながら少しずつ言葉を口にしていく。

「ヒューマンデジモンの長、グレイドモンが死んだことで、ビーストデジモンの長のガルダモンは反撃に出ようとしている。でも、指導者の指示が末端に下りるまではまだ時間がかかるはず」

 ここまでは、ウィッチモンから聞いた情報だ。

「そこから推測すると、関所にいるデジモン達は、ガルダモンの指示を受けていない。赤布を巻いて、そう見せかけているだけ」

 ピヨモンの答えに、隊長が満足そうにうなずく。

「では、関所にいるデジモン達は何が目的だと思う?」

 二つ目の質問のヒントは、菓子屋での店主とキュウビモンのやり取りだ。

「彼らの正体は隊商を狙う盗賊。今までのような襲撃では収入が少ないから、ガルダモンの指示を受けて関所を作ったように見せて、通行料を取ろうとしている」

 菓子屋で武器をまとめ買いしていったのも、統一した武器を持つ兵士のように見せたかったからだろう。

 ピヨモンは隊長の顔を見つめた。今の答えで正解だろうか。

 隊長は心配そうなピヨモンに、満足げな笑顔を返した。

「私も同じ意見だ。このまま関所に行ったら、目の飛び出るような通行料を払わされるだろう。断れば、周りの森に潜んでいる盗賊の仲間達に囲まれて、積荷を奪われるだろうな」

 ピヨモンは「やった、当たった!」と跳ねたくなる気持ちをどうにか抑えた。すぐ先に盗賊が待ち構えているのは、「やった!」という状況ではない。

 隊長が真剣な表情になり、隊商のデジモン達に指示を飛ばす。

「駆け足で関所を突破する。護衛の中でも火力の高い者は最前衛へ。装甲の堅い者はバシャの両側面と最後尾を守れ。バードラモンは先行して関所を燃やせ」

「了解!」

 その一言で、隊商の面々は各自の持ち場に散った。

 

 

 

 ジオグレイモンは最前衛を駆けた。目前には木製の簡素な関所。それがバードラモンの放った炎で燃え上がっている。その周りで、ゴリモンやキュウビモンが慌てふためいている。

「どけえっ! 《ホーンインパルス》!」

 ジオグレイモンの巨大な角が、盗賊ごと関所を吹き飛ばした。開いた道を、バシャが猛スピードで駆け抜けていく。

 横からこぶしが飛んできた。体をひねったが、腕を殴られうめき声が漏れた。

 足を止めて振り向くと、ゴリモンが再度殴りかかってきた。

「《マジカルファイアー》!」

 ゴリモンの顔面に、緑の炎がぶち当たった。ピヨモンが吹き出した炎だ。

「今のうちに!」

「ああ!」

 ジオグレイモンの尻尾が一閃。ゴリモンを森の中に弾き飛ばした。

 それを最後まで見送ることもなく、ジオグレイモンは隊商と共に走り去る。

 ピヨモンがバシャの上に着地し、ジオグレイモンに大声でたずねる。

「腕! 大丈夫!?」

「大丈夫だ! さっきはありがとな!」

 猛スピードの中でも一瞬目を合わせ、お互い満足そうに笑いあう。

 イリス隊商は罠を脱し、土埃を上げながら森を駆け抜けていった。

 

 

 

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どうにか年内に投稿できました!

これにて風の章も一旦終了です。次は……光の章の続きかな?

 

微細な変更ですが、「馬車」の表記を「バシャ」に変えました。この世界において、引いてるのは馬とは限らないので。

 

さて、今年はこの記事が最後の投稿になります。

皆様良いお年を!