風の章〔6〕ピヨモンにしかできないこと | 星流の二番目のたな

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 ウィッチモンに教えてもらった菓子屋は、大通りから入る細道の一角にあった。

 柔らかいクリーム色の壁に、薄ピンク色の扉。小さな窓が二つあり、窓の内側には鉢植えの花が置かれているのが見える。

 これだけ見れば、菓子屋らしい可愛らしい外見だ。

 しかし、ピヨモンの記憶によれば、ここは以前パン屋が入っていた建物だ。

 パン屋の時は正面が一面ガラス張りで、外から店内が良く見えるようになっていた。

 それが大幅に改造されている。

 ウィッチモンの「きな臭い」という話と合わせると、外からの視線を遮る構造に思えた。

 

 ピヨモンは自分の外見を見直して、隊商の一員らしい特徴がないことを確認。

 それから菓子屋の扉を開けた。

「おお、いらっしゃい」

 レジに立っているミケモンが、朗らかな笑顔で声をかけてきた。どうやらこの店の店主らしい。

 ピヨモンは無邪気な笑顔で「こんちは!」と返した。

 店内を見回し、奥にあるクッキーの小袋に歩み寄る。数種類あるそれを、迷うように眺め始める。

 先に店内にいた客が、会計を済ませて外に出る。

 入れ替わりに、キュウビモンが入ってきた。町の外から来たのか、微かに草の臭いがする。

 キュウビモンは店主のミケモンに目配せした後、商品を物色するように歩き始めた。

 時折ピヨモンを気にするように目を向けてくる。今いる客はピヨモンとキュウビモンだけ。早くピヨモンに出ていってほしいのだろう。

 ピヨモンはその視線に気づかないふりをして、リンゴ味とイチゴ味のクッキーを手に取り、うーん、と悩む声を漏らした。

 先に折れたのはキュウビモンの方だった。レジに向かい、ミケモンに声をかける。

「リンゴのクッキーを五袋、イチゴのクッキーを七袋、ケーキのスポンジを十四袋くれ」

「ろうそくはご入り用ですか?」

「じゃあ十本」

「かしこまりました」

 ミケモンが奥の部屋に入っていった。

 ピヨモンは耳をそばだてつつ、今度はレモン味のクッキーをまじまじと眺める。

 

 やがて、ミケモンが台車を押して戻ってきた。小さな木箱が三つ乗っている。

 その蓋を開けて、キュウビモンにだけ中身を見せる。

「リンゴのクッキーを五袋、イチゴのクッキーを七袋、ケーキのスポンジを十四袋。そしてこちらがろうそくです。ろうそくは一本サービスしておきました」

 ミケモンの説明に、キュウビモンは満足そうにうなずいた。

「これが金だ」

 キュウビモンが金を置く音がした。ピヨモンは窓に視線を向ける。

 窓に映ったレジには、千ビット銀貨が光っていた。菓子には不釣り合いな額だ。ミケモンが素早くそれを手に取り、引き出しにしまった。

 ミケモンが木箱をクッション用の布で包み、キュウビモンの背にくくりつけていく。

「最近どうですか、調子は」

 ミケモンが何気ない口調でキュウビモンに聞く。

「グレイドモンが死んだせいで、ヒューマン系の隊商は護衛が増えてる。かといってビースト系の隊商も護衛が減るわけでなし、やりづらいな」

「その割に、今日はたくさん買っていかれますね」

 ミケモンの言葉に、キュウビモンが小さく笑った。

「今までのやり方が上手くいかないから、他の手を考えた。それで、新しいのが必要になったんだ」

「なるほど。上手くいくようなら言ってください。ろうそくの仕入れを増やしますから」

 ミケモンがそう言ったところで、商品の梱包が済んだ。

 キュウビモンは大きな荷物を背負って、店から出ていった。

 

 キュウビモンの姿が見えなくなったところで、ピヨモンはリンゴとイチゴとレモンのクッキーを一袋ずつ持って、レジに行った。

「これくださーい!」

 ピヨモンの元気のいい声に、ミケモンは明るい表情を向けた。

「おお、たくさん買うねえ。お小遣い足りるのかい?」

「うん、ちゃんと数えたから、だいじょーぶ!」

 ピヨモンは大きくうなずいた。それから、お金を一枚一枚数えながらレジに置く。

「あのね、さっきのデジモンがいっぱい買ってたから、あたしもいっぱい買いたくなっちゃったの!」

「そうかそうか。うちのクッキーはどれもおいしいって評判なんだよ。さっきのデジモンも、よく来て買ってくれるんだ」

 ミケモンは嬉しそうに話しながら、クッキーを紙袋に詰めてくれた。

「そーなんだ。ありがと!」

 ピヨモンは元気に答えて、店を後にする。

 

 大通りまで戻ったところで、無邪気な子どものふりをやめる。

 店で見聞きしたことを、頭の中で整理する。

 あの店は、菓子屋の裏で武器を取引している。キュウビモンとの会話は、武器取引の暗号だろう。

 そしてキュウビモンは、ビーストデジモンの盗賊かゲリラ兵の可能性が高い。しかも、隊商をターゲットにしている。

 近いうちに、今までと違う襲撃のされ方をするかもしれない。ツチダルモン隊長に忠告しておこう。

 それから、この町の警備隊に、あの菓子屋の裏取引のことを言っておかないと。

 警備隊の詰め所に足が向きかけたが、思い直して止める。

 幼い見た目の自分が言っても、警備隊は信じてくれないだろう。大抵の成年は、ピヨモンのことを「難しいことの分からない子ども」扱いするのだ。

 警備隊に情報を流すのは、街の住民であるウィッチモンに任せよう。

 自分がやれるのは、この外見を利用して、無警戒なデジモンから情報を聞き出すこと。

 自分はそれしかできないし、それは自分にしかできないことだ。

 

 

 

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Q.どうしてピヨモンが情報収集、分析担当なの?

A.フェアリモンの公式設定に「情報戦に長けている」と書いてあるので反映してみました。

 

昨日「仮面ライダーアクセル」のYouTube配信を見たせいで、今回ピヨモンを書いてて「風都の女みたいな性格してるな……」と思ってしまったり(苦笑)

外見かわいいからまだ許されそうだけど、悪女の素質ありますよ、これ。