お昼頃、都心の路地裏で、レオモン一族が、肥料を、上司のアヌビモンにバレそうになって誤魔化す話 | 星流の二番目のたな

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 幾多のビルが並び立つ東京都新宿区。

 その一つが5階建ての「アヌビル」であり、所有者のアヌビモンが社長を務める事務所が管理を行っている。

 さて、そのビルの裏。乗用車も入れない細い路地裏がある。 日中ではあるが路地裏は薄暗い。

 そこに四人の事務所員が集まっていた。いずれも「レオモン」の名前を冠するデジモン達である。

 指示役のサーベルが一同を見回す。

「では、カイザー君とレオ君は表からここまで肥料を運んでくれ」

「はい!」

 若手のカイザーと、バイトのレオが元気よく返事をし、表の通りへと駆けていく。

 そこには、軽トラックが一台停まっていた。その荷台には一抱えもある肥料が十袋並んでいる。二人はそれを抱え上げる。

 レオがその重さに顔をしかめる。

「うわ、意外と重いっすね!」

「あんまり大声を出すなよ。お前の声よく通るんだから」

 カイザーが小声で叱り、足早に肥料を裏口へと運ぶ。

 裏口ではグラップとサーベルが待っていた。グラップが受け取った肥料を裏口に積み、サーベルが上へと運び上げる。

 肥料を担ぎながら、レオが口をとがらせる。

「でも、社長は昼飯食べに出かけたばっかだし、そんなこそこそしなくてもいいんじゃないっすか?」

「まあ、俺もそう思うんだけどな。サーベルさん達はすごく気を遣ってるから」

 カイザーの言葉に、グラップが重々しく頷いた。

「うちの社長は地獄耳だし、ビルの変化にはよく気のつく方だからな。注意してしすぎることはない」

 レオが半信半疑そうに頷く。

 その腰をカイザーが軽く叩く。

「そういうことだ。だから、今も『俺達の会話を聞きつけて、通りから社長がにらんでるかもしれない』と思っ……て……」

 言葉の途中で、カイザーの目が見開かれた。レオ達もその目線の先に目を向ける。

 通りでアヌビモンが仁王立ちになり、彼らをにらんでいた。うそん、とレオがつぶやく。

「お前達、ここで何をしている?」

 低い声に、カイザーとレオが跳びあがった。

「しゃ、社長! 出かけたんじゃ!?」

「忘れ物を取りに来た」

 社長は端的に答えながら、レオモン一同に歩み寄ってくる。

 グラップとカイザーが素早く肥料の前に並び、社長の視界から隠す。

 しかし、その動きが逆に目立ち、社長が怪しんで目を向けた。

「何だ、それは!?」

 その気迫に、レオがピンと背筋を伸ばした。

「ひ、ひりょ、むぐぐ」

 自白しそうになったレオの口を、カイザーが押し倒す勢いで塞ぐ。

 その隙に、グラップが答える。

「ひ、非常食です! 乾パンとか、缶詰とか!」

「私は聞いてないぞ?」

「えーと、その、あれです。今の備蓄分が賞味期限間近で。入れ替えなら、事後報告でも良いかと!」

 冷や汗をかきながら答えるグラップ。その後ろで、カイザーとレオが激しく頷いている。

 社長は怪訝そうな表情のまま、鼻を二度鳴らした。その表情が険しくなる。

「臭いぞ」

「えっあっ」

 グラップの冷や汗が増した。

 運んでいたのは、デジモンの排泄物から作られた有機肥料。密封されているためほとんど臭いは出ていないはずだが、アヌビモンの敏感な鼻が嗅ぎつけたらしい。

 非常食からそんな臭いが出るはずがない。万事休すの事態に、レオモン一同はその場に凍り付いた。

 

「社長、それは表の工事の臭いですよ」

 階段上から声が降ってきた。

 見れば、サーベルが階段を悠々と降りてくる。

「数日前から掲示が出ていたではないですか。下水道の工事があるので、臭いの発生する可能性がある、と」

 サーベルの言葉に、社長が表の通りを振り返る。確かに、工事の音が聞こえてくる。

 社長は困惑した表情になりながら、袋の山に視線を戻す。

「しかしサーベル、私の鼻では、この袋から臭っているような」

 サーベルは袋に顔を近づけ臭いをかいだ。そして顔をしかめる。

「確かに、微かに臭いますな。恐らく、袋に工事の臭いがついてしまったのでしょう。食料に影響のないよう、屋内に入れたらすぐに袋から出し、袋は廃棄しましょう」

「そ、そうだろうか」

「ええ。さあ作業は我々がやりますから、社長はランチに行ってらしてください。早くしないと行きつけの店が満席になってしまいますよ」

 サーベルの立て板に水の言葉に、社長は少し納得のいかないような顔をしつつ、路地裏から去っていった。

 その気配が完全になくなったところで、レオモン一同は安堵のため息をついた。

「うわああ、俺、締めあげられるかと思ったっすよ」

「俺も、もう駄目だと思った」

 レオとカイザーがその場に座り込む。

 グラップがサーベルに頭を下げた。

「ありがとうございました、サーベルさん」

 サーベルが鷹揚に笑う。

「私は社長が子どもの頃から、二十年以上の付き合いだからな、これくらいどうということない。さあ、早く屋上に運んでしまおう」

 

 

 一同はそれぞれに肥料の袋を担ぎ、屋上へと上がった。

 屋上の半分が茶色の土で覆われ、木の板で囲ってある。

 その中で、ローダーとバンチョーが作業にいそしんでいた。上がってきた一同を見つけて、作業の手を止める。

「やあみんな、お疲れ様」

「バンチョーさん、作業代わりますよ。耕すのは腰に悪いでしょう」

 グラップの言葉に、バンチョーが苦笑した。

「いざとなったら湿布を貼るからいいよ。まだおじいちゃんには早い」

 一同で手分けをして肥料の袋を開け、土の上に巻いていく。それをローダーがたてがみの削岩機と爪で混ぜ、耕していく。

 最後に、レオがビニール袋から小袋をいくつも取り出した。小袋には鮮やかな花の写真と、その名前が印刷されている。

 小袋を開け、入っていた花の種を土の上に撒いた。

 作業を終え、一同は満足げに土で覆われた場所を眺めた。

 バンチョーが鍬にもたれながらつぶやく。

「後は、交代で水やりだな」

「社長にばれずに、花が咲くところまでいけるっすかね?」

 不安げなレオに、カイザーが笑顔を向ける。

「大きな作業は終わったし、水やりくらい、屋上の点検ですって言って来れば良いだろ」

 グラップが小袋の花の写真を眺める。

「花畑を社長に見せるのが楽しみですね」

 サーベルが大きく頷く。

「社長は庭園が好きだが、最近遠出する暇がなくて気の毒だからな。日頃の恩返しにちょうど良い」

 ローダーが傍らから木製の看板を持ってきた。それを見た一同から、感心の声が漏れる。

「素晴らしいな。君が作ったのか」

 サーベルの言葉に、ローダーがこくりと頷く。

 そして看板を花壇の端に差した。

 

 そこには、『アヌビル屋上庭園』と端麗な字で書かれていた。

 

 

 

終わり

 

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以上、「お昼頃、都心の路地裏で、レオモン一族が、肥料を、上司のアヌビモンにバレそうになって誤魔化す話」でした!

ギャグと言うよりハートウォーミングになってしまった気もしますが、まあ良いでしょう。

ご協力いただいた四名の方々、お付き合いいただきありがとうございましたっ!