第189話 信也の命を巡って! 審判と神罰 | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよび
デジモンアドベンチャー02の
二次創作(小説)中心に稼働します。

注)『デジモンフロンティア02~神話へのキセキ~』は
管理人が勝手に想像するフロンティアのその後の物語です。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。


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 サッカーも好きだけど、走るのも好きだ。
 サッカーのように攻め方を考えることもなく、ただ足を動かしていくだけ。単純な運動をしているうちに、頭の中が空っぽになって、走ることだけに集中していく。今の状況も、悩みも、頭から抜けていく。
 森の中は風も涼しくて、ただ城の周りを走っているだけで落ち着いてくる。
 俺の斜め前を、兄貴が走っている。デジタルワールドに来る前は、2歳分の体格差があってがむしゃらに走らないと追いつけなかった。それが、今は自然と兄貴と同じ速さで走っている。ハードな旅をしているうちに、体力がついたのかな。
 30分くらい走ったところで休む。城の壁にもたれかかって、水を飲む。冷たい水がほてった体に染みる。
「信也、走り方上手くなったな」
「そうか?」
 急に言われて、俺は首を傾げる。走り方を変えたつもりはないんだけど。
「無駄な力が抜けたって感じでさ。前は肩に力入ってて、こんな風に走ってたよな」
 兄貴が大げさに肩を上げて、走る真似をしてみせた。
「っ、そんな走り方してねえよ!」
 俺が半笑いでつかみかかると、兄貴もげらげら笑って応戦してきた。
 兄貴が俺を励まそうと、わざとふざけてるのが分かって嬉しかった。
 
 しょうもないじゃれあいの後、ふと思ったことを口にしてみる。
「あのさ、ノゾムの考えたパワーアップが上手くいったとして、それをユピテルモンが知ったらどんな反応するかな」
「昨日戦った時、俺達が勝てば引っくり返せるみたいなこと言ってたよな。新しい手段を考えたって知ったら、興味持つんじゃないか?」
 兄貴の意見にうなずきながら、自分の胸をさする。
「ユピテルモン自身の命が危なくなっても正々堂々と戦ってくるかな。もしそうなら、心臓の爆弾を心配しなくて良くなるんだけど」
  一番怖いのは、戦ってる最中に心臓をぶっ飛ばされることだ。ユピテルモンは倒したいけど、あっちが不利になった時に爆弾を利用するかもしれない。っていうか、俺がユピテルモンの立場だったら絶対そうする。
 俺の悩みに、兄貴が腕を組んでうーんとうなる。
「俺もユピテルモンのことはよく知らないからなあ。一番知ってそうなデジモンに聞いてみないか?」
 兄貴はそう言って、城を見上げた。
 
 
 
 ネプトゥーンモンの部屋に入ると、ユニモンが怒っていた。
「そんな体で動いても傷が開くだけです。アンブロシアも全部十闘士にあげたから、もうないんですよ。戦いは十闘士に任せて大人しく寝ていてください」
 ネプトゥーンモンが槍を杖にして立ち上がろうとしていた。治りかけてはいるけど、まだ包帯だらけだ。ネプトゥーンモンは部屋に入ってきた俺達に気づいて、不満そうにベッドに座り直した。
 兄貴がベッドに近づく。
「俺達が負けたのは……ごめん。でも、ユニモンの言う通り、そのケガじゃ戦うのは無理だ」
「十闘士の盾くらいにはなれる」
「ダメです。僕が許しません」
 ネプトゥーンモンの反論を、ユニモンがばっさり切り捨てた。
 ネプトゥーンモンがやっと諦めて、槍を床に置いた。改めて俺達に顔を向ける。
「何か聞きたいことでもあるのか」
 俺が戦いと心臓の爆弾の心配について話すと、ネプトゥーンモンはふむ、と考え込んだ。
「二人の言う通り、心臓の刻印はユピテルモンの有効手段だ。しかし、それは審判に負けた者への刑罰であって、戦いの手段ではない」
「つまり、俺が戦いに負けたって決まるまでは気にしなくていいってことか?」
 俺が聞くと、ネプトゥーンモンがうなずいた。
「狂ってしまったとはいえ、ユピテルモンの審判の方式に変わりはない。十闘士が勝つのならば、ユピテルモンは素直にそれを受け入れるだろう」
「そっか……良かった」
 俺は安心して深く息を吐いた。命を握られてるってことには変わりないんだけど、少し気が楽になった。
「ネプトゥーンモン、ありがとな。これで思いっきり戦える」
 俺がお礼を言うと、ユニモンが歯を見せて笑った。
「ほら、戦えなくたってネプトゥーンモン様はちゃんと役に立ってるんですよ」
「……そうか」
 ネプトゥーンモンはいまいち納得できていないような、不思議そうな顔をした。
 
 
 
 夜になっても、純平の体にはデジコードが浮かんだままで、意識も戻らない。エンジェモンとボコモン、ネーモン達が必死に看病してくれている。
 ノゾムとテイルモンも部屋に引きこもったままだ。スピリットを下手に動かすと、ノゾムの体が危険にさらされる。時間をかけて、慎重に進めているらしかった。
 自分の部屋に戻る途中で、窓から月を見上げる。三つの月の中で、今日は黄色の月だけが満月だ。
 その形を見て、ケーキみたいだな、と思った。丸い、バースデーケーキ。
 誕生日の朝、寝坊してベッドから飛び起きた。あの時は、サッカーの試合に行って、父さんが買ってくれた誕生日プレゼントを開けて、母さんが用意してくれたバースデーケーキを家族四人で食べる。そんな一日になると思っていたんだ。
 それが、デジタルワールドを知って、デジモンになって戦って、もうすぐ最後の戦いに挑もうとしている。こっちの世界に来てから何日経ったのかも、もう分からない。
 空の向こうの月と同じくらい、バースデーケーキを遠いものに感じる。
 父さん、母さん。
 心の中で呼びかけながら、黄色い月に手を伸ばす。
 俺、ユピテルモンとの戦いに勝って、兄貴と一緒にあの日の家に帰るから。
 だから、待ってて。
 
 
 
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夜の展開をどう書くか迷って時間かかりました(汗) 短めですがキリがいいのでここまで。
1日経過。ユピテルモン襲来まで残り1日です。

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