第188話 相棒を守るために! ノゾムの戦い | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

 敵に完敗した後でも、心臓に爆弾を仕込まれていても、成長期の男子の腹は減る。
 部屋の机に置いてもらったカレーライスを、ノゾムと二人で食べる。コンソメスープもついていて、ノゾムは嬉しそうに飲んだ。
 純平の命が危ないって時に腹いっぱい食べるのは気が引ける。でも、悔しいけど俺に純平を助けることはできない。
 俺にできるのは、まず食べること。
 十二神族の世界から帰ってきてから、もう半日経っている。ユピテルモンが俺に残した時間はあと1日半。
 食べ終わったら、ユピテルモンに勝つ方法を考えること。そして心臓の刻印の問題を解決すること。
 最後の一口を飲み込む。
「むっ、げほっ」
 変なところに入ってむせた。ノゾムが慌てて水を渡してくれる。
「大丈夫、焦らないで」
 ノゾムに言われて、自分が焦って食べていたことに気づく。1日半なんて、たまった夏休みの宿題を片づけることさえできない。そんな時間で、俺の命とデジタルワールドを救う方法を考えるなんて。
 水を飲んで、深く息を吐く。ノゾムが俺の背中をさすってくれた。
「お皿は僕が台所に持っていく。信也は吐き気が収まるまで休んでて」
「ああ、ありがと」
 ノゾムが二人分の皿をお盆に乗せて、部屋を出ていった。俺はイスの背もたれにもたれかかって、吐き気がなくなるのを待つ。
 俺が落ち着いた後も、ノゾムは戻ってこなかった。
 この城に来るのは初めてだし、迷子になったかな。
 俺は探しに行こうと立ち上がって、ベッド横に置いたデジヴァイスを取りに行った。
 伸ばした指が、途中で止まる。
 
 デジヴァイスがない。
 
 床に落としたのか、と思ってベッドの下ものぞいてみるけど、ない。
 ノゾムと話した後、確かにここに置いたはずだ。
 あの後、この部屋に来たのは食事を持ってきたデジモンだけ。でも、ベッドには近づいていない。
 ってことは……ノゾムが俺に黙って持っていった?
 嫌な予感がする。すぐに部屋を出て、ノゾムを探しに走った。
 城を出てはいないはずだ。襲撃に備えて入り口は全部閉められている。
 廊下を走り、ドアを片っ端から開けていく。
「信也!」
 兄貴の声に、足を止めて振り返る。
 兄貴がノゾムを背負っている。ノゾムはぐったりとして、肩で息をしている。
 はっと息をのんで駆け寄る。ノゾムの顔は青白く、汗をかいている。
「ノゾム! どうしてこんな」
「俺もたまたまドアの開いた部屋で見つけただけで、よく分からない。とりあえずお前の部屋に運ぶから、テイルモン呼んできてくれ」
 兄貴に言われて、俺はすぐさま廊下を走った。
 
 
 
 手当てをしてすぐに、ノゾムは目を覚ました。まだ顔色は悪いけど、とりあえずベッドで体を起こせるようになった。
 テイルモンがノゾムの胸に手をかざしている。
「胸の中心辺りにケガをしていました。それも、内側から圧迫されたような傷つき方です」
 その言葉に、ノゾムが気まずそうに視線をそらす。
 俺の手にはノゾムから回収したデジヴァイスがある。それをノゾムに見せる。
「俺のデジヴァイスで何しようとしたんだ?」
「…………」
「お前がケガをして倒れたことと関係あるんだろ?」
 ノゾムがしかめ面をした。
「信也が気にすることじゃないから」
「お前なっ! 意地張ってる場合じゃないだろ!」
 カッとなってベッドを叩く。こっちは心配してるってのに。
 ノゾムが肩をすくめながらにらみ返してくる。二人の間で火花が散る。
「ぷっ、あはははっ!」
 急に兄貴が噴き出して、俺はぽかんと兄貴を見た。ノゾムも笑い転げる兄貴を見て戸惑っている。
「いや、ノゾムって本当に信也に似てきたなと思ってさ。悪いとこばっか似てるよなあ」
 なぜか嬉しそうに俺とノゾムの頭をつかんで、わしゃわしゃとなでてきた。笑顔で言われてるけど、こっちは全然嬉しくねえ。
 でも、おかげでイライラがどこかにいった。
 兄貴が改めてノゾムの顔を見る。
「信也のためなんだろ」
 優しい言い方に、ノゾムはうつむいて、でもはっきりとうなずいた。
「信也は僕のこと励ましてくれたけど、本当はこのままじゃユピテルモンに勝てないってこと分かってる。だから、僕がスーリヤモンを強くする」
「強くって、どうやって」
 俺が聞くと、ノゾムが自分の胸に手を当てた。
「僕の中にあるスピリットには、信也をプルートモンに進化させられるだけの力がある。でも僕の体が邪魔になって、力が信也まで届いてない。だから、スピリットをできるだけ体の表面に引き寄せる」
 テイルモンが俺のデジヴァイスに目をやって、うなずいた。
「確かに、デジヴァイスにはスピリットを引き寄せる力があります。信也さんのデジヴァイスをノゾムさんの胸に当てれば、体の中のスピリットを移動させられる」
「そんなの無茶だ」
 俺にだって分かる。人間でいうと、心臓を移動させるってことだ。肋骨とか肺とかにぶつかって、傷つく。ぶっ倒れて当たり前だ。
 俺が顔をしかめても、ノゾムの目は変わらなかった。真剣で、頑固な目。
「でも、俺が止めても諦めない、よな」
 ふっと笑うと、ノゾムもにやりと笑った。
「信也の相棒だから、ね」
 兄貴が仕方なさそうに首を振った。
「だってさ、テイルモン。ノゾムの体を傷つけずに、スピリットを移動させられるか?」
「ノゾムさんの体はデジモンと違うので上手くいくか分かりませんが……」
 テイルモンの言葉を聞いて、一つ思い出した。
「そうだ、前に異世界に行った時に、ノゾムと俺の体を調べてもらったことがあるんだ」
 ポケットから、バンドのちぎれた通信機を出す。旅の途中でなくしてしまったのを、友樹が見つけてくれていた。バンドは切れたけど、機械の方は無事だった。
 中には調べてもらった結果が保存されている。俺が見ても難しくて分からないけど、テイルモンがノゾムの構造を考えるのに役に立つかもしれない。
 よし、と兄貴が膝を叩いて立ち上がった。
「スピリットのことはノゾムとテイルモンに任せる。俺はあんまり休んでても体がなまるし、ちょっと城の周り走ってくるよ」
「俺も行く。心臓の刻印のことも、気分転換したら何か思いつくかもしれないし」
 最後の戦いに備えて、少しでも自分にできることをする。
 そのために、俺は兄貴を追って部屋を出た。
 
 
 
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レポや感想書いたり、体調崩し気味だったりして小説投稿の間が空いてしまいました(汗)お待たせして申し訳ない。

時々アクセス解析を見ていると、「一気読みしてくれた方がいるのかな?」と思う時があり、嬉しくなります。頑張ります。