〔53〕地下の奥底に広がるもの | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

 デジタルワールドで、伊織達が紋章を手に入れた頃。

 大輔、チビモン、ヒカリ、テイルモン、輝二の五人は渋谷駅の改札口を出た。今日も渋谷はたくさんの人でごった返している。人の波に追いやられるように、大輔達は壁際に寄った。

「うひゃあ、これじゃ人ひとり探すのは大変だなあ」

 大輔は人ごみを見回して目を白黒させる。ダスクモンか敵の隠れ家への入り口か、どちらかを探そうと来てみたが、ダスクモンの方を探すのは無理だろう。

「俺達がトレイルモンに乗ったホームに行ってみないか」

 そう提案したのは輝二だった。

「でも光子郎さんが前に、そのホームは消滅したって。私達が十闘士のデジタルワールドに行けないように、敵が潰したんだろうって言ってた」

 ヒカリが記憶を掘り起こして、輝二が少し黙って考える。

「それでも、敵につながる手がかりが残っているかもしれない」

 ヒカリに抱えられているテイルモンが片手を上げる。

「私も賛成だ。ここまで来たんだし、一度行ってみる価値はあると思う」

「じゃあきまり! はやくいこーぜ!」

 大声を出すチビモンの口を、大輔が慌ててふさいだ。

「こら、誰かに聞かれたらどうするんだよ! 人形のふりだっ」

「はあい……」

 全く、すぐ忘れて話し出すんだからな、と大輔は自分のことを棚に上げて思う。


 輝二が先頭を進み、地下へのエレベータに乗り込む。

 ヒカリとテイルモンに、大輔が解説する。

「前は、ここから地下深ーいところにあるトレイルモンのホームまで行ったんだ」

「ボタンは地下2階までしかないけど……」

 ヒカリがそう言う横で、輝二が「B2」のボタンを押した。

「一番下を押せばいい。俺は、前に来た時そうした」

「そういえば、さいしょにエレベータにのってたの、こうじだったな!」

 チビモンが丸い手で輝二を指さす。

 後はこのエレベータが地下2階を通り越してくれるかどうか。全員の目線が階数表示に注がれる。オレンジ色の光が一つずつ左へ移っていく。

 B1

 B2

 ・

 ・

 文字のない黒い余白部分を、オレンジ色の点が動いていく。

「よし!」

 大輔が右手でガッツポーズをする。選ばれし子どもを運ぶエレベータは、まだ機能を失っていなかった。
 視線を外に向ければ、ガラスの壁の向こうは暗く、エレベータは速度を増してはるか地下へと突き進んでいく。
 10秒、15秒経っても速度は緩まない。

「おかしい」

 最初に言いだしたのは輝二だった。

「前に来た時はこんなにかからなかった」

「そういわれてみれば、もう着いてもいい頃だよな」

 大輔もガラスの壁に張りついて下を見る。鉛筆で塗りつぶしたような暗闇があるだけで、下は見通せない。

 ヒカリとテイルモンは不安げな顔で、表示の消えた階数表示を見上げている。

「ホームが壊された時に、エレベータもおかしくなったのかしら」

「それか、敵の罠か」

 テイルモンの言葉に、全員が息をのむ。
「だいすけ、てんじょうぶっこわして、ここからでるか?」

 チビモンが右腕に力こぶを作ってみせる。よし、と大輔もデジヴァイスに手を伸ばした。

「待て。速度が緩んできた」

 輝二の言葉通り、エレベータが遅くなってきた。

 どこに止まるというのか。チビモンとテイルモンが床に下り、子ども三人はデジヴァイスを握る。全員の目が扉に集まる。

 微かな振動とともに、エレベータが止まった。扉が音もなく開く。

 砂漠が広がっていた。地下に潜ってきたはずなのに、砂漠は地平線まで続き、頭上には曇天の空が広がっている。

「どこだ、ここ?」

「ホームとは別の空間みたいだな」

 チビモンと大輔が話しながら、砂漠に足を踏み入れる。時々奇妙な形の石が転がり、不気味な雰囲気が漂っている。

「誰もいないな」

 後をついてくる輝二は、油断なく辺りを見回す。

 最後にエレベータを下りたのはヒカリとテイルモン。その足取りは重い。

「ヒカリ、ここは邪悪な気配の名残がある」

「私も感じる。前に出会ったことのあるような」

 ヒカリの言葉が途切れた。

 異変を察知して、大輔が振り向く。ヒカリは立ち止まり、一点を凝視している。大輔もその方向を見た。

 黒い巨大な石が転がっていた。よく見れば、それは円筒形で塔のような形をしている。建物だったらしいそれは、高熱で炭化していた。

 輝二が怪訝そうに目を細める。

「灯台、か?」

「みんな、早くエレベータに戻って!」

 ヒカリの悲鳴が響いた。突然の声に、大輔達は訳が分からず立ち尽くす。

 大輔の元に駆け寄って、ヒカリが懸命に袖を引く。

「早く、この世界から出よう!」

 引かれるままに、走り出す大輔。輝二もひとまず後をついてくる。

「ヒカリ、どうしたんだ!?」

 慌てて大輔の腰に飛びついて、チビモンが聞く。それが聞こえているのかいないのか、ヒカリはエレベータへと走りながらつぶやく。

「ここにいてはダメ。ここは、ここは――」

「っ!? 危ない!」

 エレベータから殺気を感じ、大輔はヒカリの肩をつかんで伏せた。

 エレベータのガラスの壁に、一瞬でひびが入り、砕け散った。伏せる大輔達の周りに破片が舞い散る。

 顔を上げると、ガラスが割れたエレベータの枠組みに十字の亀裂が入った。枠組みが重い音を立てて崩れ落ちる。

 その向こうに、黒い鎧をまとったデジモンが立っていた。

「ダスクモン……!」

 輝二がこぶしを握り、その名前を歯の間から漏らす。

 ダスクモンがエレベータの残骸を踏みこえた。足を止め、その体がデジコードに包まれる。輝二と瓜二つの少年に変わった。

 薄い笑みを浮かべて、ダスクモンが大輔達を見回す。

「ようこそ、暗黒の海へ。いや、海はもう存在しないから、暗黒の砂漠とでも呼ぶべきかな」




◇◆◇◆◇◆




ども。仕事と暑さのせいで少々体調不良に陥っていた星流です。暑さの苦手な星流にとって、8/1より後の夏は消化試合です。早く秋になれ。

あ、でもだいぶ良くなりましたので、ご心配なく。今朝のニチアサ見たら元気出ました(笑)

だってゴーカイジャーのゲスト回なんですもん。もちろんM・A・Oこと市道さんと池田さんも出るのですよ。

で、特撮の撮影って撮ってからおよそ1か月後に放映なんです。つまり、9/4放映分の撮影は8月の初め頃撮ったと推測されるわけで。

ってことは7/31のイベント付近で撮影やってたわけです。映像見ながら「うんうん、こんな髪形だったね!」って思い返してます。

一粒で二度おいしいというか、デジモンと特撮両方のファンで良かったなあというか、要するに疲れが吹き飛ぶほど幸せです(笑)