〔54〕爆発する感情 | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

 突然現れたダスクモンにエレベータを破壊された。

「暗黒の海ならヒカリちゃんに聞いたことがある。でもどうしてこんな砂漠になってるんだ!?」

 ヒカリをかばう位置に立ちながら、大輔は敵に問いかけた。逃げる手段を封じられた以上、輝二に似たこの少年との会話か、戦闘か。二つに一つだ。

 少年の視線が大輔に向いた。

「俺達の行動の発端が2002年の冬にお前達がデーモン様を封印したことだ、というのは以前に話したな。デーモン様が封印されたのがこの暗黒の海だ」

「じゃあ、この砂漠はデーモンがやったのか」

「理解が速いな。この海の主を倒した時に手加減をされなかったらしく、あまりの業火に海まで干上がり、今ではこの有様だ」

 この有様、という割に誇らしげに手を広げ、周りの砂漠を示す。

「海の主は世界や時間軸に干渉できる力を持っていた。そのデータを吸収することでデーモン様も同じ力を身に着け、世界をねじ曲げられるようになったのだ。有り余る自らのデータから、お前達に倒された部下を再生することさえできた」

「ってことは、ここはおまえたちのアジトなのか? デーモンとかほかのやつらもいるのか!?」

 チビモンが急いで左右に視線を巡らせる。今の話では、どこからデーモンが現れても不思議ではない。

 少年は首を横に振った。

「ここにいるのは俺とお前達だけだ。デーモン様は、現在二つの人間世界の狭間で世界の融合を進めておられる」

 幸か不幸か、ラスボスは近くにいない。

 いや、ボスの居場所を聞き出せたのは一歩前進だ。デーモンは別の世界から干渉しているはずだという、光子郎の推測は当たっていたことになる。

「……なら、なぜお前は俺達をここに誘い込んだ」

 黙って話を聞いていた輝二が口を開いた。

「お前の行動には前から違和感がある。デーモンは選ばれし子ども達に復讐するために行動している。俺達十闘士はその途中で邪魔になるおまけ程度だ。なのにダスクモン、お前だけは大輔のいなくなった後の俺達を攻撃した」

 少年は半ば睨むように輝二を見つめている。

「今回も妙だ。俺達は世界の融合のせいで、時間が経てば存在が消えてしまう。なのに、なぜ俺達をおびきよせた?」

 大輔にはもう一つ気になることがあった。

「それを言うならさ、お前もデーモンの部下の中では変わってるよな。他はデジモンなのに、お前だけ人間の姿を持ってる。進化した姿も十闘士に似てる。どっちかっていうと、輝二達の世界にいそうな見た目だ」

 少年は握りしめたこぶしを震わせ、答えない。

 大輔は重ねて問いかける。

「お前は何が目的で」

「輝二は! 輝二だけは俺がこの手で消す!」

 少年の感情が爆発した。怒気を帯びた声に、大輔達は気おされる。

「デーモン様が世界の融合を進めるためには、十闘士側の協力が必要だった! デーモン様は、俺が部下になれば輝二を消せる力を与えてくれると言った! だから俺は、あの方に従ってここまできた! 輝二! お前をここで倒す! 他の誰も手出しできない、この場所で!」

 頬を紅くたぎらせ、怒声を叩きつける。目はただひたすらに、輝二だけを見すえている。

 ひっ、とヒカリが小さな悲鳴を上げ、大輔の背中にしがみついた。大輔達と同じ体格とは思えないほどの気迫。大輔も、ヒカリを守るという意識がなければ後ずさっていたかもしれない。

 異常だ。

 大輔は直感した。

 この少年は怒りの感情が異常に強い。デーモンへの忠誠心か、輝二への怒りか。少年を突き動かしているのはその二つだけだ。

 輝二が両足で地面を踏みしめ、少年の視線を真っ向から受け止める。

「なぜだ? なぜ俺をそんなに憎んでるんだ!?」

「お前が知ることはない! なぜ自分が憎まれるのか、理解できず苦しみながら死ねばいい!」

 絶叫と共に、少年の体がデジコードに包まれた。ダスクモンへと姿を変え、輝二に斬りかかる。

「やめろ!」

「手出しはさせない!」

 チビモンとテイルモンがダスクモンに向かって駆け出した。

 

「チビモンしんかー!」

「ブイモン!」

 

「ブイモン進化ー!」

「エクスブイモン!」

 

 エクスブイモンとテイルモンがダスクモンに組みつき、動きを押さえる。

「輝二、今のうちに!」

「言われなくても!」

 大輔が言う前に、輝二はデジヴァイスを構えていた。

 

「スピリット・エボリューション!」

「ヴォルフモン!」

 

 剣と剣、鎧と爪が火花を散らす。

「……ヒカリちゃん」

 大輔は自分の背中を振り返った。いつもならテイルモンをアーマー進化させるヒカリが、デジヴァイスを握ったまま固まっている。

 うろたえた表情で大輔を見る。

「アーマー進化が、できないの。デジメンタルアップって言っても、光のデジメンタルが反応してくれない。こんなこと、今までなかったのに」

 ヒカリの言う通り、デジヴァイスは沈黙している。

「怖いのか?」

 前に渋谷駅で少年を見かけた時、ヒカリは恐怖を感じたと言っていた。今も同じなのか。

 ヒカリは「うん」とも「ううん」とも聞こえるつぶやきをこぼした。

「怖い。でもそれよりも可哀想」

「え?」

「自分でもよく分からないんだけど、ダスクモンを見てると無理やり戦わされてるみたいで、可哀想で……攻撃したくない」

 その気持ちがアーマー進化を妨げているようだった。

 大輔は少し考えてから口を開いた。

「俺もなんとなく分かる。あいつデーモンに利用されてるのかもって。もしそうだったら、俺達が止めてやらないと」

 大輔は戦いの方にちらりと目をやった。ダスクモンはエクスブイモンとテイルモンに妨害されながら、ヴォルフモンへと一心不乱に剣を振るっている。

「デジモンカイザーだって元の一乗寺賢に戻せた。ダスクモンもきっと、俺達が止められる」

「……うん。あんな風に暴れてるの、これ以上見ていられない」

 ヒカリが表情を引き締めた。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

書いてて楽しいけど同時に辛い(←)そしてうっかり本名書きそうになる。自重しろ自分。

 

それはさておき、バクモンが気になる今日この頃。バクモンってキービジュアルに載るほど活躍したことあったっけ……?