〔55〕ねじ曲げられた物語 | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

 決意を固めたヒカリの手の中で、デジヴァイスが輝きを放つ。
 大輔は安心してうなずいた。パートナーへ振り向き、気合いの入った声を上げる。
「エクスブイモン! 俺達も行くぞ!」
 
「エクスブイモン! 超・進化ー!」
「エアロブイドラモン!」
 
「テイルモン! 超・進化ー!」
「エンジェウーモン!」
 
 奇跡と光の力を得て、二体の完全体が飛ぶ。
 エアロブイドラモンが上空から接近し、ダスクモンの腕をつかみ上げた。
「そこまでだ!」
「っ!」
 エアロブイドラモンが羽ばたき、ダスクモンの体は宙に浮く。拘束から逃れようともがくが、エアロブイドラモンの強靭な握力は全く弱まらない。
 ダスクモンの鎧の7つの目がぎょろりとエアロブイドラモンを見上げた。
「《ガイストアーベント》!」
 瞳からの紅い光線がエアロブイドラモンの肘を射る。
「ぐっ」
 エアロブイドラモンが顔をゆがめ、ダスクモンを取り落とす。
 落下しながら体勢を立て直すダスクモン。
 しかし、エンジェウーモンは弓を引き、既に狙いを定めていた。
「《ホーリーアロー》!」
 光の矢は一直線に飛び、ダスクモンの胸の瞳に突き刺さった。聖なる力に焼かれ、ダスクモンが苦しみの声を上げる。そのまま地面に激突し、砂ぼこりを巻き上げた。
「はああっ!」
 ヴォルフモンが跳び、光剣を振りかぶる。
「《リヒト・ズィーガー》!」
 空気をも切り裂き、ダスクモンの頭へと振り下ろす。
 甲高い金属音が響く。
 ダスクモンは膝をつき、頭上に双剣を掲げて攻撃を受け止めていた。
「くっ」
 ヴォルフモンが剣に体重をかける。光剣と双剣に互いの力が籠もって震える。
「輝二……お前だけは、お前だけはこの手で仕留める!」
 ダスクモンが足を地面につき膝を伸ばす。光剣が徐々に押し戻されていく。
「ヴォルフモン、踏ん張れ!」
「ダスクモン、これ以上戦うのはやめて!」
 大輔とヒカリがそれぞれに向かって叫ぶ。
 ヴォルフモンは食いしばった歯の隙間から声を出した。
「お前がなぜ……俺に執着するのかは分からない。だが、これだけは分かる。お前はその執着のせいで……俺達に負ける」
 言い終わった時には、エンジェウーモンが上空で技の準備を整えていた。
 掲げた両腕から光の輪を生み出し、一帯に聖なる光の雨を降らす。
「《セイントエアー》!」
「なっ……」

 ダスクモンが気づいた時には、光が力を奪っていた。頭をぐらつかせ、よろめく。

 一方のヴォルフモンの光剣は輝きを増した。

「はああっ!」

 まぶしいほどのそれで、袈裟懸けに斬りつける。

 ダスクモンの双剣が根元から折れ、宙に舞った。

「エアロブイドラモン! 決めてやれ!」

「おう!」

 大輔の言葉に応えて、エアロブイドラモンが白炎を身にまとう。

「くらえ、《ドラゴンインパルス》!」

 反動で一回転しながら、竜頭の衝撃波を放つ。

「う……あああ!」

 ダスクモンを中心に爆風が巻き起こった。大輔はとっさにヒカリの前に立ち、巻き起こる風からかばった。腕で顔を覆っても、飛んでくる砂粒が痛かった。

 

「終わった……のか?」

 風が収まったところで、大輔はゆっくりと腕を下ろした。

 砂漠には家二軒が収まりそうなクレーターができていた。デジモン達はその縁から中を見下ろしている。大輔達も横に並んだ。

 クレーターの底には、少年の姿に戻ったダスクモンが気を失って倒れている。その胴体にはデジコードが浮かび、黒いスピリットが埋め込まれているのも確認できた。

「あのスピリットを取り除けば、きっと闇の呪縛から解いてあげられる」

 ヒカリの言葉に、ヴォルフモンがデジヴァイスを取り出した。

「俺が行ってくる」

「! 待って!」

 エンジェウーモンが突然ヴォルフモンを止めた。

 ダスクモンのすぐ後ろの時空が裂け、暗い向こうからスカルサタモンが現れた。

 スカルサタモンは少年と大輔達を見比べ、不快そうに頭蓋骨の表情をゆがめた。

「勝手に行動した上にこのざまか。そろそろ感情の制御が効かなくなってきてるな」

「そこをどけ! お前達が与えた闇の力は俺達が取り除く!」

 接近しようとするエアロブイドラモンに対して、スカルサタモンは尖った杖の根本をのど元に向けた。

 倒れている少年ののど元に。

「お前っ……!」

 動けなくなったエアロブイドラモン達を見て、スカルサタモンがにやりと笑った。

「利口だな。少しでも怪しい動きをしたらこいつののどを掻き切るぜ」

「ダスクモンはお前達の仲間じゃないのか!?」

 ヴォルフモンの問いに、スカルサタモンが答える。

「こいつは世界を混ぜるのに便利だったから仲間に引き入れてただけだ。それに、ここでダスクモンのスピリットをスキャンされたら、せっかくねじ曲げた物語が修正されちまう」

 スカルサタモンが少年の首根っこをつかんで引き上げる。

「こいつはもらっていくぜ」

「くそっ、待ちやがれ!」

 大輔の言葉も虚しく、スカルサタモンは時空の向こうに消えた。

 時空の裂け目は少しずつ閉じていく。

「ヒカリ、あの時空の裂け目にD-3で干渉すれば、リアルワールドにつなげられるかもしれない!」

 エンジェウーモンの言葉に、全員がはっとした。

 今なら暗黒の砂漠から脱出できるかもしれない。

「急げ!」

 ヴォルフモンが叫んで、クレーターを駆け下った。

 大輔とヒカリもパートナーデジモンに抱えられて一気に降下する。

 二人がD-3をつかんだ手を伸ばす。

 暗かった裂け目の向こうが揺らぎ、渋谷駅の構内に変わった。

 裂け目はもう、子どもが通れるくらいの幅しかない。デジモン三体が進化を解く。
「間に合えー!」

 三人と二体は押し合うように裂け目に飛び込んだ。
 
 
 
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闇の闘士はもう一つだけやりたい話があるので引っ張ります。闇堕ちしてる方が作者が書いてて楽しいからという理由も……あります←

 

あと、疑問に思った方がいらっしゃると思うのであとがきでも書きます。
ユナイトの、彼には、デジコードが、出ます。