公園でグループごとに分かれてから1時間後。
拓也、泉、友樹、京、ポロモンの五人は、タケル宅で待っていた。今日も母親は出かけているということで、タケルは五人をここに通して出かけていった。
京は太一から借りてきたタグを首から下げている。
「すみません! 遅くなりました」
インターホンを押して、伊織が入ってきた。喪服を普段着に着替え、ウパモンを抱えている。
「大丈夫よ。こっちこそ帰ってきたばかりなのに呼び出しちゃって」
「お線香をあげて、少し話をしてきただけですから。それに、世界や僕達の存在が危険にさらされているなんて聞いたら、じっとしていられません」
伊織はいつも通り背筋を伸ばして生真面目に答えた。
「それじゃ行こっか」
「行くって、もしかして……これ?」
拓也が少し考えてから、目の前のパソコンを指さす。昨日こちらの世界に帰ってきた時に、パソコン画面から出てきたような覚えがある。
「パソコン画面からどうやってデジタルワールドに行くの?」
泉の問いに、京が自慢げに自分のデジヴァイスを出してみせる。
「これを使うのよ」
きょとんとする十闘士組三人を、選ばれし子ども達二組がパソコンの前に連れていく。
「はい、たくやさんたちも、かまえてかまえて」
「デジヴァイスをパソコンのまえに出すんだぎゃ」
ポロモンとウパモンに言われて自分達のデジヴァイスをパソコンの前で構える。その両脇に京と伊織が立った。
「デジタルゲートオープン! 選ばれし子ども達、出動!」
京の掛け声とともに、パソコン画面から真っ白な光があふれだした。
「……すごい、京達はこんなに簡単にデジタルワールドに来られるのか」
目の前に広がる森に、拓也は目を丸くした。
拓也達にしてみれば、デジタルワールドに行く手段は渋谷駅地下のトレイルモンだけ。帰る手段が見つからず、デジタルワールドをうろついた。
それが、パソコンとデジヴァイスさえあればいつでもどこでもデジタルワールドに行ける。便利過ぎて頭痛がしそうだ。
「京ちゃんと伊織の服もさっきと違う」
二人の服をまじまじと見る泉に、京は胸を張ってみせた。
「さて、と。紋章の近くに行かないとタグは反応しないのよね。ああ伊織、これヒカリちゃんから。伊織が来るって聞いて、ヒカリちゃんのタグも貸してくれたの」
京が伊織にもタグを手渡す。伊織がタグをしげしげと眺める。
「僕達にも紋章があれば、これが教えてくれるんですね」
「でも、デジタルワールドも広いわよ。小さなチップ一枚探すのに手がかりなしなんて……」
泉が不安そうに言うと、拓也が苦笑する。
「俺達だって、手のひらサイズのスピリット探して歩き回ってたんだぜ。大して変わんないじゃないか」
「そうです。デジメンタルを見つけたように、紋章もきっと見つけられます」
ホークモンも子ども達を励ます。
「それじゃ、私はホルスモンで空から探すね」
「空ならフェアリモンで一緒に行くわ」
京の言葉に、泉も右手を上げる。
「伊織~、オレ達はあっちの谷の方を探そうや」
アルマジモンがパートナーのズボンのすそを引っ張る。
「じゃあ俺と友樹は伊織と一緒に行くか」
「うん!」
ちょうど男女に分かれる形で、それぞれ紋章探しに出発した。
森を引き裂くように深い谷があった。
切り立ったその壁を、アグニモンが器用に駆け下りていく。出っ張った部分を蹴って勢いを殺し、真っ先に谷底に降り立った。
「先行って怪しそうなところがないか見てくる!」
「待ってよー!」
チャックモンは体を氷に変えて壁に張りつき、一度元の姿に戻って落ち、また張りつくという地道な方法で降りてくる。
谷に降りる頃には、アグニモンは奥の方へ行ってしまっていた。
と、土壁を壊してディグモンが現れた。黄色いアーマーに鼻と両手のドリルが目立つモグラのようなデジモンだ。その背中には伊織を背負っている。
ディグモンが進化を解き、アルマジモンに戻った。チャックモンも進化を解く。
「拓也は?」
「あっちに行ったよ。僕達も行こう」
アルマジモンに聞かれて、友樹は奥を指さした。
三人で谷を歩きだす。
「伊織くんって、三年生だっけ」
友樹が聞くと、伊織がうなずく。
「友樹くんも三年生だったよね」
「うん。今までは年上の仲間ばかりだったから嬉しくて。でも、しっかりしててすごいな。僕は泣き虫で、みんなに迷惑かけてばかりなのに」
「そんなことない」
凹む友樹に、伊織が語気を強めた。
「友樹くんはスピリットで自分がデジモンになって戦える。僕は戦いはアルマジモンに任せっきりだ」
「そ、そうかなあ。でもほら、昨日はデジモンに乗ってたよね」
「ああ。サブマリモンの時は伊織を乗せて泳げるんだぎゃ」
「うーん、デジモンに乗るのと自分がデジモンになるのとでは反応する速さが違うんじゃないかな」
「僕はデジモンに乗ったのってトレイルモンしかないからなあ。どうなんだろう」
伊織につられて友樹も考え込む。
「おーい早く来いよ!」
谷の向こうから拓也の声がした。
「こっちに入れそうな洞窟があるぞ!」
三人は顔を見合わせて、早足に声の方へ向かった。
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アルマジモンの名古屋弁は何となーくで書いてるので、エセになってても暖かい目で見逃してください(汗)
方言分からないよー。