第168話 太陽と月の祈りを胸に! 古く新しき進化 | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

「拓也お兄ちゃん!」

「逃げろ!」

 ルークチェスモンに追いつめられる仲間を目にし、フロストモンとライノカブテリモンが声を上げる。駆けつけようにも、敵が目の前に立ちふさがる。

 両腕の砲門が拓也と輝二に向けられる。

「拓也!」

「輝二ー!」

 ジェットシルフィーモンとライヒモンが叫んだ。

 それに答えるように、二人のデジヴァイスから二つの光が飛んだ。

 一つは太陽のような赤。

 一つは月のような白。

 光が拓也達の元に達すると同時に爆風が巻き起こった。

 四人の闘士は、思わずその場で立ちつくした。




―――




 俺達は、傷一つ負わなかった。

 見上げると、俺達とルークチェスモンの間には、赤と白の光がオーロラの盾として現れていた。

「アポロモンのデータが勝手に」

「ディアナモン……」

 闇と風の闘士の言葉が俺の耳にも届く。

 彼らは十闘士の戦いのために、命を託してくれた。それが今、俺達を助けてくれた。

 オーロラが俺と輝二のデジヴァイスに飛び込んだ。俺のデジヴァイスが熱い炎を、輝二のデジヴァイスが凍てついた光をまとう。

 これによく似た力を、二年前手にしていた。どう使えばいいかも、よく分かっている。

 デジヴァイスを握り、再び立ち上がる。

 左手にデジコードが幾重にも現れる。



「ダブルスピリット・エボリューション!」


「アルダモン!」

「ベオウルフモン!」


 初めて世界に誕生したダブルスピリットが、時を経て蘇った。

「アポロモン様とディアナモン様が、十闘士に力を与えただと」

 ルークチェスモンが初めて一歩下がった。口では裏切りを気にしていないと言っていたが、実際に神が十闘士に味方したのを見て動揺したか。

 俺は両腕のルードリー・タルパナを半回転させ構える。ベオウルフモンも大剣トリニテートの切っ先を敵に向ける。

「うろたえるな! 目の前の敵に集中しろ!」

 ルークチェスモンが指示を飛ばす。自分に言い聞かせているようにも聞こえた。

 ここで時間を食っている暇はない。ルードリー・タルパナの先に熱を集め高速連射。

「《ブラフマストラ》!」

「くっ、《ルークガトリング》!」

 敵は弾丸を飛ばし対抗する。弾幕の量は敵の方が上。

 が、こちらの超高熱弾がすれ違うだけで、弾丸の全てが蒸発し消えていく。

 俺に届く弾丸は、ない。

「まだまだ!」

「《リヒトアングリフ》!」

 弾丸の消えた隙を突いて、俺の高熱弾とベオウルフモンのミサイルが攻める。

「《キャッスルウォール》!」

 敵が腰を落とし、両腕を顔の前に掲げる。熱の前に鎧が溶け、ミサイルによってひびがいくつも入る。それでも膝をつかない。防御力の高さか、強い意志のおかげか。

 ベオウルフモンが駆ける。トリニテートを体の前で垂直に構え、その体が白光の狼と化す。

「《ツヴァイハンダー》!」

 ルークチェスモンが地面に足を踏ん張る。が、狼が腹に食らいついた瞬間、巨体が押されていく。足跡が二本のレールのように直線を描く。

 それが止まった直後、狼が離れベオウルフモンに戻る。ルークチェスモンが腹を押さえる。指の隙間から、黒い城砦の破片が落ちていく。

「ユピテルモン、様――」

「ここまでだ」

 俺の両手の中で、既に凝縮された熱が燃えている。頭上に掲げると、それが一気に何十倍に膨れ上がった。

「《ブラフマシル》!」
 投げつけた太陽球が、火柱となって燃え上がる。

 黒いルークチェスモンを赤く焼き尽くす。その体がゆっくり倒れ、デジコードが浮かぶ。

「汚れた悪の魂よ、このデジヴァイスが浄化する! デジコード・スキャン!」

 俺のデジヴァイスに全て取り込み、戦いは終わった。




 息をついて振り返ると、フロストモン達も敵を一掃していた。降伏する敵は一体もいなかったか。

 進化を解き、歩いてそっちに戻る。

「拓也お兄ちゃん!」

 友樹が駆け寄ってくる。右手に何か握っている。

 俺の目の前に来たところで、一息ついて右手を開いて見せた。

「これ、近くに落ちてたんだ」

 友樹の手でも握りこめるくらいの、小さな機械だった。砂ぼこりをかぶっているけど、色ははげていない。まるで、つい一日二日前に誰かが落としていったような見た目だ。

 まさか、と思って手に取る。持ち主が分かる特徴はない。腕時計のようにバンドが着けてある。バンドは刃物で切られていて、留め具は留まったままバンドと一緒にぶら下がっている。

 試しに自分の手首に巻いてみた。中一の俺の腕には、バンドは短すぎる。

「友樹、手首貸してくれ」

「? うん」

 出された手首にバンドを当てる。切り口同士を合わせると、ちょうどいい長さになった。

「信也が落としたんだ」

 こんな人気のない土地に、小五の手首に合った機械が落ちていた。持ち主は信也にしろ一緒にいる人間にしろ、信也達がここを通ったのは間違いない。

「信也、こんな機械持ってたっけ?」

 友樹が考え込むと、横で純平が肩をすくめる。

「あいつが仲間と別れてずいぶん経つんだ。持ち物が増えてたって不思議じゃないさ」

「敵が妨害してきたのもいい証拠ね。この先に行かせたくないのよ」

 泉の目が荒野の向こうに向く。

 そこには、さびれた白い城が見える。

「よし、行こう!」

「待ってくれなはれ~!」

「オレ達を忘れないで~!」

 俺が気合いを入れた直後、悲鳴を上げながらボコモンとネーモンが走ってくる。

「やべ、崖のそばに残してきたんだった」

 うっかり置き去りにするとこだった。

「締まらないなあ」

 輝一が苦笑する。

 二人と無事に合流して、俺達は早足に城へと向かった。




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というわけで、満を持してアルダモンとベオウルフモン登場回でした。ルークチェスモンなんて敵じゃなかった。

そして、第158話での落とし物を回収。


ここで裏話をしますと。

フロ02のスタート時点で、元・悪の四闘士のスピリットにも何らかの役目を負わせたいなという考えがありました。

が、実体化させるとキャラが増えます。小説はアニメ以上にキャラを絞らないと誰かが必ずかすむので、レギュラーキャラの増加は望ましくない。

そこでダブルスピリットを出したいという考えとあいまって、ダブルスピリットを補助させよう! というアイディアが生まれました。

しかし、ここでまた問題が。

ダブルスピリットは炎と光を合わせると6体。補助にできるスピリットは4組。2つ足りません。


「とりあえず拓也と輝二は置いといて、信也もダブルスピリットさせないから置いといて。4人に補助スピリットを渡そう。で、拓也と輝二は後で考えよう!」


はい、見切り発車ー(笑)

そして執筆する中でネプトゥーンモンを善キャラにしたところ思いのほか好評となり。


「もう一人二人善キャラにしてもいいなあ。アポロモンとディアナモンはゲームで主人公張ってるから悪玉にしづらいし。あっ、太陽と月って炎と光に上手く対応しそう!? よし、これだ!」


と、太陽と月の力をダブルスピリットに生かそうと決まったのが、アポロモン初登場辺りでした。116話。既に100話超えていました。

星流のストーリー展開はこんな場当たり的に、さも前から伏線を張っていたかのように決まっていきます(笑)

こんな危なっかしい作者ですが、エンディングまで見守っていただけるとありがたいです。



今回初登場のデジモン

アルダモン (拓也初進化のため再掲)

ベオウルフモン