〔43〕選ばれし子ども達の帰還 | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

 事情を聞いた輝二は、当たり前のように自分も行くと言った。

 さっそく起き上がりバンダナを縛る輝二。それを見て、拓也が顔をしかめた。

「無理するなよ。まだ動ける体じゃないだろ」

「無理でも何でも行く。お前達が戦うのに俺だけ寝ている気はない。それに、ダスクモンが俺と同じ顔をしているというのも気になる」

「それ、言った覚えないんだけど」

 拓也が大輔に視線を向ける。輝二に余計な心配をかけたくないから黙っていよう、と決めたはずだった。大輔は俺じゃない、と首を横に振った。

「ごめん、僕。輝二さんをだましてるみたいで、ガマンできなくて」

 友樹が申し訳なさそうに右手を上げた。

 大輔と拓也は顔を見合わせて、まあ仕方ないか、と苦笑した。純粋な友樹には無茶な約束だったのかもしれない。

「ところで、どうやってみなさんを元の世界に帰すかですが」

 セラフィモンが話題を変える。

「最初にみなさんが来るのに使ったルートは潰れているようです。私が新しく人間世界にターミナルを形成してもいいのですが、時間がかかります」

「だったら、テレビの森から戻ろう」

 テイルモンの提案に、ヒカリもうなずいた。

「そうね。私達のD-3ならあそこからゲートを開ける」

「よし! じゃあ準備ができたらすぐ出発だな」

「おうっ!」

 大輔が言うと、ブイモンもこぶしを上げて答えた。


 昼過ぎに一同は森のターミナルに移動した。セラフィモンの手配したトレイルモンが待っていてくれた。

 トレイルモンに乗る直前、輝二はソーサリモンから布袋を押しつけられた。

「これは患部に塗る薬。こっちは痛み止めの飲み薬です。一日一回飲んでください」

「余計なお世話だ」

「傷を少しでも早く治したかったら指示通りにしてください。不調のまま戦って勝てると思っているのですか」

 ソーサリモンの厳しい言葉に、輝二は渋々薬を受け取った。

 行きは二日かかった道のりだったが、トレイルモンが飛ばすと半日もかからなかった。大輔達がお礼を言うと、汽笛を鳴らして去っていった。

 時間は夜。適度な雲がかかり、森の木は既に明るく輝いていた。

「大輔、あれタケルの家じゃないか?」

 ブイモンが一本の木を指さした。そこに映っているリビングには、確かに見覚えがあった。

「きっと光子郎さんのパソコンから見た景色だな」

「それにしちゃ、誰もいないみたいだけど」

 純平が不思議そうに画面をのぞき込む。このデジタルワールドと現実世界のつながり方を考えると、向こうではあまり時間が経っていないはずだが。

「考えてても仕方ないだろ。大輔、ヒカリ、頼む」

 拓也がD-3を持つ二人を見る。二人は頷いて、一歩前に出た。仲間が周りに集まったのを確認して、D-3をテレビに向ける。

 テレビからまぶしい光があふれだし、全員を包み込んだ。




 足の裏に、硬い床の感覚。見回すと、そこは高石家のリビングだった。

「無事に戻れたみたいね」

 泉の言葉にうなずきながら、ヒカリが時計を見上げる。

「五時半……。私達が出発してから三時間くらい経ってる」

「ちょっと待ってくれよ。俺達が出発したのは六時なのに」

 ヒカリの言葉に、純平が慌てて時計を見た。拓也も卓上カレンダーを見つけて目を見開く。

「七月!? 嘘だろ三ヶ月後じゃないか!」

 真っ青になる拓也達を、大輔は混乱しながら見ていた。

「俺達がトレイルモンに乗ったのはほんの四日前だろ?」

「違う、四月の初めよ! まだ春休みだったんだもの」

 泉が素早く言い返した。その横で純平がポケットを探る。

「携帯――あ、デジヴァイスになったから使えないや。大輔、近くに公衆電話あるか?」

「ああ、一階のコンビニのそばに」

「僕、うちに電話してくる!」

「俺も!」

「私も!」

 大輔達が止める間もなく、拓也達五人は外に駆け出していった。

「……どうなってるんだ? おれたちも たくやたちも、おなじひに トレイルモンに のったのに」

 チビモンが小首をかしげる。

 その横でテイルモンがあごに手を当てる。

「無理に二つの世界をつなげたせいで、ずれた時間がつながってしまったんだろう。つまり、私達の世界の七月と泉達の世界の四月が」

「そういやみんな春服だったな」

 今さらながら大輔は納得した。


 と、大輔とヒカリのポケットで同時に着信音がした。

 D-ターミナルを取り出し、開く。光子郎からメールが来ていた。

『この世界に戻ってきたら着信するだろうと思い送信しておきます。竹芝ふ頭で怪物が暴れているというニュースがありました。映像からしてデジモンに間違いありません。先に向かっています。 追伸:机の上に玄関の鍵を置きました』

「デジモンが暴れてる?」

 大輔とヒカリは顔を見合わせた。チビモンがテレビに近寄ってスイッチを入れた。

『――お伝えしています通り、現在竹芝の海に謎の怪物が出現し、怪物同士の戦闘が行われています。周辺住民はすみやかに避難し、現場には近づかないようにしてください。なお、この事件の影響でゆりかもめは上下線ともに運転を見合わせ――』

 大輔達の視線は画面にくぎ付けになった。橋よりも背の高い、悪魔ともイカともつかないデジモンが映っている。その周りには、イッカクモンやサブマリモンらしき姿も見える。

「よし、俺達も行こう!」

 大輔がこぶしを握ると、全員がうなずいた。

 玄関に鍵をかけ、エレベータに乗り込む。

「私、光子郎さんに戻ってきましたってメールしておく」

 ヒカリがD-ターミナルで手早く文面を打ちこんだ。


 マンションを出て、コンビニ――アイマートの方に回る。

 公衆電話の前では、拓也達が戸惑った様子で言葉を交わしていた。

「家族と連絡ついたか?」

 大輔が聞くと、輝二があいまいにうなずいた。

「ついたことはついたんだが。俺達が行方不明になっていた様子がないんだ」

「どういうことだ?」

 大輔がぽかんとして聞き返す。三か月行方不明になっていたんじゃないのか。

 純平も腕を組む。

「うちの親なんか、『塾が終わったなら寄り道しないで帰ってこい』だってさ。まるで今日が、俺達が出発した日みたいだ」

「俺んちも。信也が――弟が、『早くしないとケーキ食べちゃうよ』って。確かに俺が出発したのは弟の誕生日だった」

 拓也にも言われて、大輔は頭がこんがらがってきた。

「これも無理やり世界がつながってる影響か……。全く、ただでさえデジモンが現実世界に出てるってのに」

「デジモンが!? どこに!?」

 泉が驚いて聞いてきた。そうだ。ずれた時間の事は気になるが、今は戦ってるデジモンをなんとかしないと。

「竹芝でデジモンが暴れてるんだ。俺達の仲間が戦ってるらしい」

「私達はそっちに行くけど、泉ちゃん達はどうする?」

 ヒカリが聞くと、泉は少し考えて顔を上げた。

「一緒に行くわ。ここで考えててもしょうがないし」

「うん! 僕達も手伝うよ!」

 友樹も元気よく返事をする。拓也、輝二、純平も力強い目で答えてくれた。




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時間のずれは、のちのち光子郎さん辺りが解説してくれるので、こんな現象が起きているらしい、ということだけ覚えておいてもらえれば結構です。自分で書いてて複雑だと思いますし(汗)


ふ頭到着までやるつもりだったんですが、星流あるあるでたどり着きませんでした……。次回こそ戦闘です。