〔42〕大輔と拓也大決断! | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

 セラフィモンの城へと伸びる道中。濃霧の中、太い木の幹を階段状に削った道を進む。

 拓也は城に着くのも待ち切れずに、別れた後の話を語っていた。

「とにかく、友樹と純平が無事で安心したよ」

 拓也が友樹の頭を帽子ごと掻き回した。友樹は嬉しそうに肩をすくめて答える。

「ボコモン達が逃がしてくれた後、トレイルモンに乗ってここまで来たんだ。そうしたら、森のターミナルの奥にお城があって」

 直後、視界が開けた。目の前に虹色の水晶の城がそびえている。太陽を受けてきらめく城に、大輔達は目を丸くした。

「うわあ。ここがセラフィモンの城なのか」

 大輔が聞くと、セラフィモンがうなずいた。

「詳しい話は歩きながらしましょう」

 セラフィモンが近づくと、水晶の門がひとりでに開いた。城の扉もまた、同じように開く。

 廊下を歩きながら、セラフィモンが話し始めた。

「私は以前、この世界を治める一人でした。しかしケルビモンにより、ここで長く眠りについていました。それを友樹さんと純平さんがデジヴァイスの力で目覚めさせてくれたのです」

 大輔が純平を見ると、純平はえっへんと胸を張った。

「この世界の現状も、お二人から聞きました。しかし、ケルビモンが何者かに倒されたとは……」

「お城にも噂は届いてたんだ。その犯人が俺達を襲ったのと同じだとは思わなかったけどな」

 純平が難しい顔をして腕を組む。

 泉がそこで、気が進まなそうに口を開いた。

「ねえ、ところで輝二は? 一緒じゃないの?」

 その言葉に、友樹と純平が顔をこわばらせた。

「うん、この城にいるにはいるけど」

「様子見て騒いだりしないでくれよ」

 その言い方に、大輔達は顔を見合わせた。輝二になにかあったのだろうか。


 突き当たりの部屋に、セラフィモンが入っていく。続いて大輔達も中に入った。

 中は十二畳ほどの寝室だった。奥のベッドのそばに白い人型デジモンが座っていて、一同に気づき立ち上がった。

 その姿を見て、ヒカリとテイルモンがはっと息をのんだ。

「ウィザーモンにそっくり」

「ああ。だが、似てはいても彼は別のデジモンだ」

 テイルモンが寂しそうに耳を垂らした。

 帽子やマントをまとった見た目は似ているが、そのデジモンのそれは全て白だった。持っている杖も氷の結晶をかたどっている。

「彼はソーサリモン。私の部下で、輝二さんの看病をさせています」

 セラフィモンの紹介を受けて、ソーサリモンが丁寧に頭を下げた。

 看病と聞いて、大輔達の視線は自然とベッドに向いた。

「輝二!」

 拓也が目を見張った。眠っている少年は今度こそ自分達の仲間に間違いなかった。が、その顔色は、別れる前より青白かった。それに指から首まで、何か所も包帯が巻いてある。

 ソーサリモンが口の前で指を一本立てた。

「お静かに。睡眠薬で眠っているところです」

「ってことは輝二また起きようとしたな」

 純平がため息をついた。

「また?」

 ヒカリが聞き返す。その質問にはセラフィモンが答えた。

「ケガが治りきっていないのに、外に出ていこうとするんです。じっとしていられないらしくて」

「ケガ……あのダスクモンってやつにやられたのか」

 大輔が聞くと友樹が迷いながらうなずいた。

「そうみたい。森で倒れてるのを見つけたんだけど、切り傷だらけだったんだ」
「傷もひどかったですが、その後高熱も出して。回復の魔術が効いたから助かりましたが、そうでなければどうなっていたことか」

 ソーサリモンがほっとため息をついた。

「大変だったのね、友樹達も」

 泉がぽつりと言った。


 部屋を出た大輔達は、食堂に案内された。ソーサリモンは紅茶と焼き菓子を出した後輝二の部屋に戻っていった。

 マフィンを頬張って一息ついた後、ブイモンが口を開いた。

「さっきは嫌な目にもあったけど、新しく分かったこともあったな」

 テイルモンが次を引き取る。

「状況を整理しよう。ヒカリ達の世界と拓也達の世界を融合させようとしている敵がいる。輝二そっくりの少年――ダスクモンとスカルサタモンはその一味だ」

「ダスクモンが輝二そっくりだっていうのも変だよな。輝二の姿をコピーでもしたのかな」

 拓也が腕を組む。それをちらりと見て、テイルモンが話を続ける。

「彼らの主はデーモン。半年後の未来で私達が封印したらしい。だが、過去の時間に干渉することで選ばれし子ども達を『消去する』つもりだと言っていた」

「どういう意味かは分からないけど、放っておくわけにはいかない。あいつらは現実世界に行くって言ってた。だったら俺達も戻ろうぜ!」

 大輔の言葉に、ブイモンも気合の入った声を上げる。

「そうだな! 奇跡の紋章とデジメンタルも手に入ったし! ……デジメンタルは、なんか封印されちゃったけど」

「それを言うなよブイモン~」

 手首にはまったままのリングをつかんで、大輔が肩を落とした。結局、外れる気配がない。

 話を聞いていた拓也がテーブルに手をつき、身を乗り出した。

「なあ、俺達にもできることないか?」

「え?」

 ヒカリが拓也を見てまばたきする。

「だって、俺達の世界にも影響を与えてるやつなんだろ。だったら俺達にも関係がある」

「俺達が大輔達の世界に行っていいのか? 違う世界の人間が行くと、混じり合いが加速しちゃうんだろ?」

 純平の疑問に、全員が一度考え込む。ヒカリが慎重に口を開いた。

「多分、平気。だって、大輔くんと拓也くん、輝二くんは前に現実世界で会っているでしょう? もう世界の混じり合いが進んでいるってことだと思うの。拓也くん達が戻る世界と私達戻る世界はほぼ同じ。だったら加速の心配より、少しでも味方が多い方がいいんじゃないかしら」

「でも、この世界のことはどうするの?」

 友樹が心配そうに聞く。その問題にはセラフィモンが答えた。

「こちらのことなら心配いりません。私は目覚めさせていただき、元凶であるケルビモンもいなくなった。後の処理は私が指揮を執ります。本来なら、お礼にあなた方を手伝うべきでしょうけれども」

「心配しないで、セラフィモン。あなたはこの世界をまとめられる数少ないデジモンだもの。私達の世界の事は、私達でなんとかするわ」

 泉が力強い笑顔を見せた。

 よし、と大輔が立ち上がった。

「なら、みんなで戻ろうぜ、現実世界に!」


◇◆◇◆◇◆




大輔、ブイモン、ヒカリ、テイルモン、拓也、泉、友樹、純平、セラフィモン、ソーサリモン、輝二(寝てるけど)……やっぱりこの人数を一気に書くのはきついです。いや、ここで弱音を吐いている場合じゃないのですけどね。

次回は一同が現実世界に戻ります。つまり留守番してたメンバーと合流するということで更に人数が……うん、頑張るしかないです。