「拓也達から聞いてるわ。ユニモンがあなたに真実を話したのね」
私が確認すると、ディアナモンは頷いた。
「人知れず私の元にやってきて、世界が崩壊した真の理由を教えてくれた。実際、言われたとおりに自分のデジコードを調べてみると、ウイルスが発見された」
ディアナモンが顔をしかめた。私には、泣くのをこらえているように見えた。
でもそれは一瞬のことで、ディアナモンは話を続けた。
「私はユピテルモンが休息を取っている時間を狙い、城のデジモン達を集めた。自分から取り除いたウイルスを示し、このままではユピテルモンに滅ぼされる。生き延びたければ私と共に来いと告げた。神が次々と倒れていくことに不安を覚えていた者も多く、ほとんど全員が私の船に乗り脱出を図った」
「ほとんど、ってことはあっちに残ったデジモンもいたの?」
友樹が聞く。
「残念ながらそうだ。私の言葉よりユピテルモンを信じる者もいた。アポロモンの後ろでいつも黙っていた私より、ユピテルモンの方がカリスマは上ということだ。先程のメガシードラモンもユピテルモン側について襲ってきた。私達はルートの確立されていたこの世界に来るのがやっとだった」
船からバクモンが飛んできた。ディアナモンに耳打ちする。ディアナモンが頷くと、バクモンは船に戻っていった。
「船に取り付けていた次元移動用の駆動部がやられたそうだ。あれを製作したウルカヌスモンはもういない。今から他の世界に移るのは困難だ」
改めて、ディアナモンが私達を見る。
「私達がこの世界を攻撃したのは事実だ。だが、指揮したのは私達オリンポス十二神族。私はいかようにされてもかまわない。だから、民は救ってやってほしい」
ディアナモンは黙って私達の答えを待った。堂々として見えるその立ち姿。でも私は、その目が微かに震えているのに気づいていた。
「この船にどれだけ乗ってるんだ?」
純平が船を見上げる。甲板からデジモン達が顔を出していた。ディアナモンと私達のやり取りを見守るために。種族は色々だけど、その顔には同じ不安がにじんでいた。自分達がこの世界で受け入れてもらえるのか。やっとたどり着いたここから追い出されたりしないだろうかって。
「ユピテルモンの攻撃を受けながらの避難だったため正確には数えていないが、およそ三百人。デジタマがおよそ二百個だ」
五百。
「そっちの世界から逃げてこられたの、それだけなんだ」
友樹の言う通り、生き残った人数としては少なすぎて。
「でも、急に保護してくれって言われても」
純平の言う通り、簡単に受け入れられる人数かというと多すぎる。
どうしよう。一度、トゥルイエモンに相談した方がいいかしら。今連絡すれば、拓也達も一緒にいるし。
でも、私が悩むまでもなく、純平が大きく頷いた。
「分かった。とりあえずみんな客車に乗せよう。この寒さじゃ体調を崩すデジモンが出るかもしれないし」
「そうだね! 客車の中ならストーブもあるよ」
純平と友樹の言葉を聞いて、ディアナモンが肩の力を抜いた。
「ありがとう。小柄なデジモンもいるし全員乗れるだろう」
ディアナモンが一度船に戻り、デジモン達に指示を出す。デジモン達は順番にタラップを降り、トレイルモンに向かっていく。みんな寒さで背中を丸めている。
友樹がブリザーモンに進化して、けがをしたデジモンを背負って運んだ。私は全客車のストーブに炭を足して、デジモン達が凍えないように準備しておいた。
移動がほとんど終わった頃、純平がデジヴァイスを手に戻ってきた。
「トゥルイエモンと連絡ついたぜ。とにかくみんな城まで連れてきてほしいって。ウイルスを抱えているデジモンがいないか、一応検査しておきたいし」
土地のデータを破壊するウイルス。こちらの世界では大して影響は出ないらしいけど。突然変異でも起きたら怖いし、念のため取り除くって考えには賛成。
最後にディアナモンが船全体を見回ってから降りてきた。
「これで全員だ」
私達に伝えてから、客車を見回す。
「私まで乗る余裕はなさそうだな」
デジモン達は席か床に座っていた。混みあってはいるけど、詰めれば乗れないこともない。
「大丈夫じゃない? ディアナモンはブリザーモンより小さいし」
友樹が客車とディアナモンを見比べる。ディアナモンは首を横に振った。
「私の体は絶対零度でも活動できる。それなのに余計に場所を取りたくない。また襲撃があるかもしれないし、客車の屋根でいい」
ディアナモンは頑固に客車に乗るのをこばんでいる。……というか、嫌がってる?
「いいわよ。ディアナモンがそうしたいって言うなら」
私はディアナモンに答えてあげた。ディアナモンが私の顔を見る。
「風の闘士よ。良ければ同席してもらえないか、その」
言いかけてから、理由に口ごもった。私はディアナモンの気持ちを察して口をはさんだ。
「見張りは二人いた方がいいものね。十闘士と十二神族と」
ディアナモンは黙ってこくりと頷いた。
よく晴れた空の下。乗客をたっぷり乗せたトレイルモンのフランケンが走り出した。
屋根の上は私が思っていたより寒かった。ほっぺたや耳が冷たい空気にさらされて痛くなる。純平が心配して毛布を二枚持たせてくれたけど、正しかった。頭から毛布をかぶると、だいぶましになった。
丸くなっている私と反対に、ディアナモンはのびのびとしていた。屋根の端に腰かけて両足を下に垂らしている。手は後ろについて、楽な姿勢を取っている。口元が防具に隠れてて分かりにくいけど、表情もさっきより生き生きしている。
それを見て、私は自分の勘を確信した。
「ディアナモン。あなた本当は、デジモン達と一緒にいるのが苦手なんじゃない?」
思い切って聞くと、ディアナモンは背中を丸めた。
「やはり、あなたにはばれていたか」
「うん。無理して気を張ってる感じがしたから。あと、私をここに呼んだのも、二人だけで話したいことがあるからでしょ?」
女の勘を甘く見てはいけない。
ディアナモンは観念したのか、大きく息を吐いた。
「そこまで気づいているのなら、遠回しに言う必要もないか」
私はディアナモンの顔を見て、続きを待つ。ディアナモンは凍った大地に目を向けたまま言った。
「あなたは戦いの中で手を抜いている。本当なら洞察力も戦力もあるのに。あなたが今のままでは、十闘士はいずれ滅びる」
淡々とした指摘。毛布をきつく巻いているはずなのに、自分の体がびくりと震えた。
何か話があるんだとは思っていた。でも、こんなこと言われるなんて予想してなかった。
「そんなことない。私は、自分にできることを精一杯やってるわ。私の持ってるのは、もとから攻撃力の弱いスピリットだし」
私の言葉が、風に流されて消えていく。心の中で思っていたことなのに、口に出すとすごく頼りなく聞こえた。
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ども。ちょっとリアルが忙しかったり体調崩したりで更新遅くなりました。(今はぴんぴんしてます。ご心配なく)
次回からディアナモンによるお説教(?)タイムです。
そしてユニモンは誰にも安否を確認してもらえませんでした(泣)状況が慌ただしいですし、この三人ユニモンとはほとんど接触してませんので……「あれ、そういやいないな」レベル。拓也と輝二が出てきたら、きっと確認してくれる←
あと、triの新情報もUPされたみたいですね。PVのショートカットさん、女だったんだ……ずっと男だと思ってた←