〔18〕スピリットのありかを追え! | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

 重い爆発音と揺れで、大輔は起こされた。

 慌ててベッドから降りようとして、床に転げ落ちる。まだぼんやりした目で辺りを見回す。

「何だ!? デジモンか!?」

「そうみたい!」

 ブイモンは大輔を踏み台にして着地する。大輔がぐえ、と声をあげたが、おかげで目は覚めたようだ。

 枕元のデジヴァイスとD-ターミナルをひっつかんで、外に飛び出した。

 紫の傘のキノコデジモンが三体。逃げ惑うフローラモンにキノコ爆弾を投げつけている。爆発に巻き込まれたフローラモンは爆風に吹き飛ばされ、あるいその場に笑い転げる。逃げる方向もばらばらで、集団でパニックに陥っている。

 花壇は踏み荒らされ、看板が壁から落ちた。

 拓也達も部屋から走り出してきたが、目の前の状況に呆然としてる。

「何なんだよあいつら!」

 拓也の声にフローラモンが答える。

「マッシュモン三兄弟です! 昔は一緒に働いていたんですが、最近は嫌がらせばかりで」

 嫌がらせの域を超えている。建物壊れてるし。

 純平の陰に隠れたボコモンが声を張る。

「あれはきっと、ケルビモンの魔力のせいじゃ! きっとスキャンすればきっと元通りになるハラ!」

「ずいぶん『きっと』の多い話だな」

 ブイモンが呆れて頭を掻いた。

「でも、それしかないんでしょ。だったらやるよ! こんな意地悪許さない!」

 友樹がデジヴァイスを出した。輝二のいない今、スキャンができるのは友樹しかいない。

 大輔も負けじと、デジヴァイスをパートナーに向ける。

「俺達も行くぞ!」


「スピリット・エボリューション!」

「チャックモン!」


「デジメンタル・アップ!」

「ブイモン、アーマー進化!」


「燃え上がる勇気、フレイドラモン!」


 チャックモンとフレイドラモンがマッシュモン達に立ちふさがる。先頭にいたマッシュモンが片眉を上げた。

「何だお前ら、フローラモンをかばうのか?」

「当たり前だろ! 見過ごせるか!」

 フレイドラモンが言い返し、炎のこぶしで殴りかかる。

「《ナックルファイア》!」

 こぶしはマッシュモンの傘に直撃。紫の傘が弾ける音を立て、香ばしい煙が上がる。

「ぎゃああ、お、俺の傘が!」

「アニキ、大丈夫か!」

 長兄の悲鳴に弟二人が駆け寄る。次兄が慌てて辺りを見回す。

「水、水を!」

「氷ならあるよ」

「よし、それ……だ?」

 三男が振り向くと、ランチャーを構えたチャックモンが。

「《スノーボンバー》!」

 大量の雪玉に、三兄弟はまとめて吹き飛ばされた。

「よし、いいぞチャックモン! フレイドラモン!」

 拓也も威勢よく応援する。

 マッシュモン達が目を吊り上げて立ち上がった。

「お前ら、よくも俺達をこけにしてくれたな!」

「……コケ?」

 泉が首をかしげる。その隣で純平もつぶやく。

「あいつら、コケじゃなくてキノコだよな、どう見ても」

「そのコケじゃなーい!」
 マッシュモン長兄が絶叫した。

 息を切らす長兄の横から、三男が口をはさむ。

「とにかく! 俺達の本気を見せてやる!」

「《ポイズン・ス・マッシュ》!」
 三人が赤色のキノコを次々と投げつける。着弾した場所から爆風が吹き荒れる。しかしフレイドラモン達は軽い動きでそれらを避けていった。

「へへっ、これくらい簡単……あ、れ?」


 急にチャックモン達の動きが鈍くなった。武器を取り落し、その場に膝をつく。

「どうした、フレイドラモン!」

「だ、いすけ、体が、動かない……!」

 大輔はマッシュモン達をにらんだ。三人は不敵な笑みを浮かべている。

「俺達が爆弾キノコや笑いキノコしか持ってないとでも思ったか!」

「赤色キノコの中に紫キノコを混ぜて投げたのさ!」

「麻痺キノコの威力、思い知ったか!」

 マッシュモン達の笑い声に、大輔は奥歯を噛んだ。フレイドラモン達はどうにか立ち上がろうとしているが、その動作はあまりにもぎこちない。パートナーがピンチだというのに、自分にできることはないのか。

「まだ手はあるわ」

 振り向くと、泉の目には光があった。

「スピリットよ。この村のどこかにスピリットがある。それを見つけて、進化さえすれば」

「でも泉ちゃん、俺と拓也が昨日村中探したけど見つからなかったぜ」

「反応があるのは確かでしょ! それとも、このままやられちゃっていいの!?」

 迷う純平に、泉が言いつのった。

 まだできることは、ある。大輔はデジヴァイスを握りしめた。

「分かった。ここは俺が引き受ける。みんなはスピリットを探しに行ってくれ!」

 泉達は頷いて、三方向に駆けていった。

 大輔は勇気のデジメンタルを一旦手元に戻した。

「ブイモン、ライドラモンで行くぞ!」

「あ……ああ!」


「デジメンタル・アップ!」

「ブイモン、アーマー進化!」


「轟く友情……ライ、ドラモン!」


 ブイモン自身が食らった麻痺を消すことはできない。でも元々動きの速いライドラモンなら、まだどうにか動ける。泉達に攻撃の矛先を向けるわけにはいかない。少しでも引きつけておかなければ。

「頼むぞ、ライドラモン……みんな、早くスピリットを見つけてくれ!」

 大輔は、祈るような気持ちでつぶやいた。




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フロ02の反動か、前半のギャグっぷりがひどくなりました(苦笑)