重い爆発音と揺れで、大輔は起こされた。
慌ててベッドから降りようとして、床に転げ落ちる。まだぼんやりした目で辺りを見回す。
「何だ!? デジモンか!?」
「そうみたい!」
ブイモンは大輔を踏み台にして着地する。大輔がぐえ、と声をあげたが、おかげで目は覚めたようだ。
枕元のデジヴァイスとD-ターミナルをひっつかんで、外に飛び出した。
紫の傘のキノコデジモンが三体。逃げ惑うフローラモンにキノコ爆弾を投げつけている。爆発に巻き込まれたフローラモンは爆風に吹き飛ばされ、あるいその場に笑い転げる。逃げる方向もばらばらで、集団でパニックに陥っている。
花壇は踏み荒らされ、看板が壁から落ちた。
拓也達も部屋から走り出してきたが、目の前の状況に呆然としてる。
「何なんだよあいつら!」
拓也の声にフローラモンが答える。
「マッシュモン三兄弟です! 昔は一緒に働いていたんですが、最近は嫌がらせばかりで」
嫌がらせの域を超えている。建物壊れてるし。
純平の陰に隠れたボコモンが声を張る。
「あれはきっと、ケルビモンの魔力のせいじゃ! きっとスキャンすればきっと元通りになるハラ!」
「ずいぶん『きっと』の多い話だな」
ブイモンが呆れて頭を掻いた。
「でも、それしかないんでしょ。だったらやるよ! こんな意地悪許さない!」
友樹がデジヴァイスを出した。輝二のいない今、スキャンができるのは友樹しかいない。
大輔も負けじと、デジヴァイスをパートナーに向ける。
「俺達も行くぞ!」
「スピリット・エボリューション!」
「チャックモン!」
「デジメンタル・アップ!」
「ブイモン、アーマー進化!」
「燃え上がる勇気、フレイドラモン!」
チャックモンとフレイドラモンがマッシュモン達に立ちふさがる。先頭にいたマッシュモンが片眉を上げた。
「何だお前ら、フローラモンをかばうのか?」
「当たり前だろ! 見過ごせるか!」
フレイドラモンが言い返し、炎のこぶしで殴りかかる。
「《ナックルファイア》!」
こぶしはマッシュモンの傘に直撃。紫の傘が弾ける音を立て、香ばしい煙が上がる。
「ぎゃああ、お、俺の傘が!」
「アニキ、大丈夫か!」
長兄の悲鳴に弟二人が駆け寄る。次兄が慌てて辺りを見回す。
「水、水を!」
「氷ならあるよ」
「よし、それ……だ?」
三男が振り向くと、ランチャーを構えたチャックモンが。
「《スノーボンバー》!」
大量の雪玉に、三兄弟はまとめて吹き飛ばされた。
「よし、いいぞチャックモン! フレイドラモン!」
拓也も威勢よく応援する。
マッシュモン達が目を吊り上げて立ち上がった。
「お前ら、よくも俺達をこけにしてくれたな!」
「……コケ?」
泉が首をかしげる。その隣で純平もつぶやく。
「あいつら、コケじゃなくてキノコだよな、どう見ても」
「そのコケじゃなーい!」
マッシュモン長兄が絶叫した。
息を切らす長兄の横から、三男が口をはさむ。
「とにかく! 俺達の本気を見せてやる!」
「《ポイズン・ス・マッシュ》!」
三人が赤色のキノコを次々と投げつける。着弾した場所から爆風が吹き荒れる。しかしフレイドラモン達は軽い動きでそれらを避けていった。
「へへっ、これくらい簡単……あ、れ?」
急にチャックモン達の動きが鈍くなった。武器を取り落し、その場に膝をつく。
「どうした、フレイドラモン!」
「だ、いすけ、体が、動かない……!」
大輔はマッシュモン達をにらんだ。三人は不敵な笑みを浮かべている。
「俺達が爆弾キノコや笑いキノコしか持ってないとでも思ったか!」
「赤色キノコの中に紫キノコを混ぜて投げたのさ!」
「麻痺キノコの威力、思い知ったか!」
マッシュモン達の笑い声に、大輔は奥歯を噛んだ。フレイドラモン達はどうにか立ち上がろうとしているが、その動作はあまりにもぎこちない。パートナーがピンチだというのに、自分にできることはないのか。
「まだ手はあるわ」
振り向くと、泉の目には光があった。
「スピリットよ。この村のどこかにスピリットがある。それを見つけて、進化さえすれば」
「でも泉ちゃん、俺と拓也が昨日村中探したけど見つからなかったぜ」
「反応があるのは確かでしょ! それとも、このままやられちゃっていいの!?」
迷う純平に、泉が言いつのった。
まだできることは、ある。大輔はデジヴァイスを握りしめた。
「分かった。ここは俺が引き受ける。みんなはスピリットを探しに行ってくれ!」
泉達は頷いて、三方向に駆けていった。
大輔は勇気のデジメンタルを一旦手元に戻した。
「ブイモン、ライドラモンで行くぞ!」
「あ……ああ!」
「デジメンタル・アップ!」
「ブイモン、アーマー進化!」
「轟く友情……ライ、ドラモン!」
ブイモン自身が食らった麻痺を消すことはできない。でも元々動きの速いライドラモンなら、まだどうにか動ける。泉達に攻撃の矛先を向けるわけにはいかない。少しでも引きつけておかなければ。
「頼むぞ、ライドラモン……みんな、早くスピリットを見つけてくれ!」
大輔は、祈るような気持ちでつぶやいた。
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フロ02の反動か、前半のギャグっぷりがひどくなりました(苦笑)