第105話 騎士達と闘士の衝突! 五秒後の世界 | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
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「貴公の仕える主の名は何だ」

 ロードナイトモンは慎重に言葉を選んでいるように見えた。表情や話し方は俺達と話していた時と変わらない。しかし、話す速度がわずかに落ちている。

 その様子に気づかないのか、デュナスモンはあごを上げて答えた。

「決まっているだろう。オリンポス十二神族……厳密に言えばその一柱たるユピテルモン様だ」
 ロイヤルナイツほど強いデジモンでも、大人しく十二神族に従っているらしい。もしかすると、人造デジモンは従属の感情も含めて「作られて」いるのかもしれない。
 ロードナイトモンとデュナスモンの問答は続く。
「以前の主は異なっていたはずだ。何故宗旨しゅうし替えなどした」

 デュナスモンは目をすがめた。

「彼らがこうして再び命を与えてくださったからだ。それに、スピリットを奪った後は人間界へのキーを探しに出てもよいと言ってくださった」

 デュナスモンの発した言葉に、俺は息を飲まずにはいられなかった。
「何の話だ? そのキーというのは!?」

 問い詰めようとした俺は、「お前には関係ない」と怒鳴られた。デュナスモンは話に割り込まれたのが不愉快らしい。俺には大して構わず、ロードナイトモンに向き直り、語り続ける。

「命からがらデジタルワールドに戻ってきたあの日、二人で誓っただろう。我々を迫害した人間どもを、今度は我等で屈服させると。ルーチェモン様に忠誠を誓ったのも、あの方が人間界への行き方を教えてくださると言ったからだった。忘れたとは言わせんぞ」
 言いながら右手をせわしなく握ったり開いたりする。相手から思ったような反応が引き出せず、落ち着きをなくしかけている。あるいは、自分がいいように情報をしゃべらされている事に気付いたのか。

 注意が向いていない今のうちに、俺は左に数歩動いた。

 三度ロードナイトモンが問いかける。いや、問いかけと言うよりは確認だった。噛み砕くように区切りながら、考えを口に出していく。
「つまり貴公は、人間界を支配する為に、己の力を振るっているのか」

 デュナスモンはとうとう、苛立いらだって声を荒げた。
「力は支配の為にある! 世界が支配者の為に存在するのと同じだ!」

成程なるほど
 ロードナイトモンの物言いに、デュナスモンは一瞬喜色を見せた。

 だがまっすぐな視線を伴って、言葉は続く。

「では私からも言わせてもらう。世界は支配する為にあるのではない。支配者が世界のためにあるのだ。それが分からぬ貴様に支配者たらんとする資格はない」

 不意に浴びせられた清水のごとき言葉を、デュナスモンは理解できずうろたえた。

 それでも、俺が腰を落とし槍を構えるのを見て、次第に察した表情へと変わる。その瞳孔が黒々と膨らむ。

「……まずスキャンすべきはお前達二人のようだな」

 低い声が戦いの合図だった。




 俺の頭上からの突きはデュナスモンの右腕に払われた。右手の横に左手が追いつく。俺は鎧の獅子の目を閃かす。

「《ドラゴンズロア》!」

「《ロートクロイツ》!」
 白と赤の光がぶつかり合い、ぜる。お互いが飛びのき、距離が開く。

 敵の左手へロードナイトモンが跳ぶ。鎧の帯刃が翅のように広がる。

「“スパイラルマスカレード”!」

 次々と襲い来る細身の刃を、デュナスモンは硬い籠手を駆使していなしていく。俺が援護することもかなわない、目まぐるしいやり取りだ。

 さすがは相棒と同個体を相手にしているだけあって、デュナスモンは敵の技を熟知している。それは異世界のロードナイトモンも似たようなものかもしれないが。

 帯刃とこぶしの応酬はロードナイトモンが退いた所で終わった。あのまま競り合いを続ければ、互いに優位に立てることもなく、消耗しあうだけだっただろう。攻撃力と反射神経、相手の戦法への対応において、俺達とデュナスモンは拮抗していた。

 だが、新たなダブルスピリットであるライヒモンの技量を、デュナスモンは知らない。付け入る隙があるとすればそこだ。

 俺は横に立つロードナイトモンにささやいた。

「活路を開く。景色が変わったら五つ数えて、前に駆けてくれ」

 デュナスモンがどれだけの聴力を持っているか分からない。詳しい作戦を口にするのは危険だった。

 そんな事情があっても初対面の相手を頼りにするのは勇気がいる。だからこそ、俺の言葉に頷いてくれたロードナイトモンには感謝した。

 俺は槍の穂先を天に掲げる。

「《シュバルツ・レールザッツ》!」

 月明かりの差す景色は、曇天もかくやの暗夜あんやに変わる。

 その中を二本の足で走り、デュナスモンに迫る。

 一。

 気合と共に、敵の胸へと槍を突き出す。

 二。
 しかし穂先が鎧に届く前に、柄をつかまれた。力ずくで穂先を頭上へと逸らされていく。こちらは両腕を使っているというのに、デュナスモンは右手だけで槍をつかみ上げている。

 三。

 俺は何とか槍を取り戻そうと、腕を震わせる。

 四。

 動けない俺に、デュナスモンが嘲りの声を降らせる。

「二闘士の背中に隠れてた闘士の実力などこんなものか。間近から焼き尽くしてくれる!」

 五。

 ロードナイトモンが動いた。デュナスモンの視線がそちらに向く。

 しかし、彼の動きを目で追う事は出来なかった。

 その姿は闇に掻き消え、瞬時にデュナスモンの懐に現れたからだ。デュナスモンの体が驚愕にこわばる。

 この空間の中では、物理法則に基づく距離感など通用しない。

 ロードナイトモンが盾をデュナスモンの腹に押し当てる。俺に気を取られていたデュナスモンは、対応が間に合わない。

「“アージェントフィアー”!」

 近接からの衝撃波に、デュナスモンは空へと打ち上げられた。

 闇夜は元の月明かりを取り戻し、デュナスモンの体にはデジコードが浮かび上がった。


「乱されし邪悪な心よ、闇に埋もれて眠るがいい! このデジヴァイスで浄化する! デジコード・スキャン!」


 スキャンを終えた俺が進化を解き、二人の騎士と一人の闘士による戦いは終わった。



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ロードナイトモンもライヒモンもカッコいい台詞や地の文がつけやすいので、嬉々として書いていました。とりさんに感情の方向性を教えてもらい、後はいかにカッコよく演出するかという……ええ、ノリノリでした(笑)


アニメでは人間界へのキーの話はルーチェモンとロイヤルナイツの間でしか交わされていないんですよね。という事で十闘士にとっては驚きの新事実だったりします。今更だけど。

二人が人間界へのキーを探していた理由の詳細は、頭の中では大体決まっていますがフロ02にはこれ以上は出しません。……というより、出すタイミングがないので……(汗)

短編なり何なりでそのうち書けたらいいなー、とは思っています。



(1/23 第104話のメルクリモン死亡シーンを改定しました。あれこれすみません(汗))