〔11〕青い稲妻 ライドラモン | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

「敵に囲まれててデジメンタルまで取られたら、勝ち目ないじゃない!」

「ああもう、どこかに俺のスピリットがあったりしないのかよ!?」

 うろたえる泉と純平。

 拓也は涙目の友樹を背中にかばい、精一杯フレイウィザーモンを睨みつけている。友樹の後ろにはボコモンが、ボコモンの後ろにはネーモンが隠れている。
 状況は絶望的だった。

 拓也達にとっては。


「人をだまして盗んでおいて、よくそんな偉そうな口が利けるよな」

 大輔が持ったままのデジヴァイスを顔の横で振った。

 その顔は冷や汗をかいてもいなければ、ひきつってもいない。横で腰に手をやりうんうんと頷いているブイモンも同様だ。

「大輔、俺達のもう一つの力見せてやろうぜ!」

「ああ!」


「デジメンタル・アップ!」

「ブイモン、アーマー進化!」


 黒いデジメンタルを身にまとい、雷の力を持つ四足のデジモンが生まれる。


「轟く友情、ライドラモン!」



「ふ、二つ目のデジメンタルだとーっ!?」

 帽子が飛び上がらんばかりの勢いでのけぞるフレイウィザーモン。

 大輔は得意げに鼻の下を指でこすった。

「へへっ、俺が受け継いだ力は一つじゃないって事さ。行くぜ、ライドラモン!」

 大輔が慣れた動きでライドラモンの背に飛び乗った。

 ライドラモンの足が地面を蹴り、後足がキャンドモン達を蹴散らす。

 額の稲妻状のブレードから青い雷がほとばしる。

「《ライトニングブレード》!」

 直線状のキャンドモンが次々と宙に舞う。フレイウィザーモンは両手のマッチを重ね、辛うじて攻撃を受け止めた。

 対峙するライドラモンとフレイウィザーモン。

「どうだ! 大人しく勇気のデジメンタルを返せ!」

「返せと言われて、はいと返す奴がいるかっ!」

 ライドラモンの気迫にフレイウィザーモンが歯ぎしりする。


「うわあああ!」

 背後から聞こえる悲鳴。大輔は反射的に振り返った。

 拓也達がキャンドモン達に追われている。ライドラモンが蹴散らせなかった残党だ。無力な子ども達に次々と炎が吐かれ、熱いろうが湯気を上げる。

「よそ見をしてていいのか? 《ファイアークラウド》!」

 いつの間にかライドラモンの頭上に赤い雲が。避けるも間に合わず、火の矢が雲から降り注ぐ。

 ライドラモンが片膝をついた。

「うむ、当たった」

 思わずガッツポーズするフレイウィザーモン。

 大輔は慌ててライドラモンの背から滑り降りた。

「大丈夫か、ライドラモン!」

「ああ、大輔こそ……」

 苦しげに、しかしパートナーの事を気遣うライドラモン。

「俺は平気だ。髪がちょっと焦げただけだし。それにしても」

 大輔は厳しい表情でフレイウィザーモンとキャンドモン達を交互に見た。

「これじゃ数が多すぎる。ライドラモンだけじゃ、みんなをかばいきれない」

「なら、早くこいつをなんとかしよう! それしかない!」

 ライドラモンがフレイウィザーモンに向き直る。

 大輔も拓也達から強引に視線を外した。

「そうだな。全力で行け!」

 再び肉薄しようとするライドラモンに、赤い雲が迫る。

「《ライトニングブレード》!」

 雷一閃。雲が真っ二つに割れ、霧散した。

「んなっ! 雷が雲を裂くなんてそんな事――」

「ありだよあり! くらえ、《ブルーサンダー》!」

 ライドラモンの背中の突起から、強烈な電撃が放たれた。フレイウィザーモンの全身が青い電気に包まれ、痙攣する。

 電気が収まると、フレイウィザーモンはぶすぶすと煙を上げながら地面にひっくりかえった。体がデジコードに包まれ、赤い光が大輔のデジヴァイスに飛び込んでくる。

 大輔がD-ターミナルを開くと、デジヴァイスから勇気のデジメンタルが戻ってきた。気絶したフレイウィザーモンもキャンドモンの長老に戻る。体のろうが少し溶けているように見えるが、気のせいだろう。

「よし、勇気のデジメンタルは返してもらったぜ!」

 D-ターミナルを閉じながら、勝ち誇る大輔。

「拓也、みんな、お待たせ……」


 振り返った大輔の視界に飛び込んできたのは、崖のふちに追い詰められた拓也と友樹の姿だった。



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フレイウィザーモン(というか長老)が完全にギャグキャラ化してしまいました(笑)