第100話 黄金の竜戦士! 古代の伝説と未来の騎士  | 星流の二番目のたな

星流の二番目のたな

デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

 場所は再び、俺達が見張り番をしてた地点。

「――っていうのがこの世界の大体の事情。理解できたか?」
 俺と友樹の説明を、相手は目を丸くして聞いていた。ただでさえ丸く赤い瞳が大きく見開かれている。確かに異世界に落ちてきたってなれば驚くのは当然だけど。

 すっかり日は落ちたのに、相手の周りだけ少し明るい。昇ったばかりの朝日みたいに黄金の鎧が光を発している。少なくともそう見える。おかげで百八十センチ近くある相手の長身や、鎧の内側にある体の青色まで見分けられる。
 今までと違ってデジモンだけで落ちてきたし、何だか変わったやつだ。
「マグナモン、何か気になる事でもあったの?」
 友樹が相手――マグナモンの顔を心配そうにのぞきこんだ。
 マグナモンが瞬きして、友樹に目線を向けた。
「いや、今日は目まぐるしい日だと思ってな。俺の世界でさえ安寧ではないというのに、時空の歪みに呑まれた挙句、着いた所が古代のデジタルワールドだとは」
 こだい? ……ああ、社会の授業で聞いたんだっけ。つまり昔ってことだよな。
「ひょっとして、マグナモンは未来のデジタルワールドから来たのか?」
 俺が自分の膝を叩くと、本人は考え込んで目を伏せた。
「分からぬ。が、恐らく俺の世界とこの世界は一部分の類似した別世界だろう。十闘士の存在や、十のエリアに分配されたスピリット等は同じだ。しかし、人間がデジタルワールドを訪れたという記録は、俺の世界には残されていない」
「なーんだ。もし未来から来たんだったら、十二神族とどう戦えばいいのか教えてもらえたのにな」
 俺は口を尖らせて木にもたれかかった。
 そんな俺を見て、マグナモンが眉間にしわを寄せた。

「未来は現在の努力の積み重ねだ。結果のみを簡単に手に入れる事などできない。過去を……過ぎた時間を取り戻す事が、できないように」

 最初は刺すように厳しく、最後は自分にも言い聞かせるような静かな口調だった。

 気楽に言った言葉がよくなかったらしい。俺は顔をしかめて、姿勢を正した。

「それもそうだな。気、悪くさせちゃったかな」

「心配には及ばん。俺もきつく言い過ぎた」
 マグナモンは首を横に振って答えた。



 友樹はというと、話よりマグナモンの鎧に気がいっていた。鎧に負けない勢いで目が輝いている。俺達の話が切れたとたん、口を開いた。

「さっきから気になってたんだけど、その鎧かっこいいね! 触ってみてもいい?」

「は?」

「……え?」

 思わず目が点になる俺。友樹をまじまじと見るマグナモン。

 俺達の反応を見て、友樹は顔を曇らせ、肩を落とした。

「……ごめん。やっぱり駄目だよね。強そうだしすごいな、って思ってたんだけど」

 急に凹んだ友樹に、マグナモンは少し考えた。友樹の方に体を向ける。

「突然の申し出で驚いただけだ。触れてくれて構わない」

「やった! ありがとう!」

 友樹は飛び上がりそうな勢いで立ち上がって、マグナモンに駆け寄った。腰から垂れている部分に触れてみたり、手の甲で軽く叩いてみたり、興味津々しんしんって感じだ。

 『信也はいいの?』って顔で友樹がこっちを見るけど、俺は肩をすくめる。俺はヒーロー見てすぐはしゃぐ友樹とは違うの。

 一通り調べてみた後、友樹は満足そうに息をついた。

「きれいなだけじゃなくて、結構硬そうだね。フロストモンの斧でも攻撃を通すのは無理かも」

「無理でなくては困る」

 マグナモンが大げさに顔をしかめた。

 首をかしげる友樹に、マグナモンが丁寧に説明を始める。俺もこっそり耳をそばだてる。

「俺の鎧は超金属のクロンデジゾイドでできている。傷つけられる者などそうはいない。実力とこの鎧とがあるからこそ、今の自分の身分があるのだ」
 友樹が熱心に頷く。

「へえ。じゃあマグナモンって、偉い人なの?」
 俺は耳を傾けつつ、水筒のジュースを口に含む。

「十闘士の時代の者に言って通じるか分からぬが……俺はロイヤルナイツという組織の一員だ」


 吹いた。

 せき込んだ。


「信也! 殴っちゃだめだよ!」

 友樹がこれ以上なく真剣な顔で俺を見る。

「げほっ……分かってるよ! さすがにもう『ロイヤルナイツ』ってだけでぶっ飛ばしたりはしねえよ!」

 俺も胸を押さえながら大声で言い返す。俺にも学習能力ってもんがある!

 そこでやっと危険な雰囲気に気づいて視線を向ける。雰囲気の元はマグナモン。

「信也、貴様……ロイヤルナイツを『ぶっ飛ばし』た事があるのか?」

 ヤバい。どうヤバいのか説明するまでもなくヤバい。これは冗談の通じない目だ。

「あれは事故だから! あと正確には人違いだったし! そもそもこの世界に昔いたロイヤルナイツがとんでもない悪党だって聞いてたから」

 そこで友樹が頭を抱えた。

 もしかして、もしかしなくても、油を注いだか、俺?

 金属質な音は、マグナモンが片膝を立てた音。

「ロイヤルナイツを悪党呼ばわりするとはいい度胸だ。立て」

「ち、ちょっと待て! これには深ーい訳があるんだ! 聞いてくれっ!」


 長い夜になりそうだ。




☆★☆★☆★



……やっぱり、こうなったのか(←頭を抱える作者)

ごめんなさい、とりさん! 忠告されていたのに……っ!


信也のプロフィールに「特技:ケンカを売る事」って書き足そうか真剣に検討します。←


それにしても、100話か。思えば遠くまで来にけるかな。


今回初登場のデジモン

マグナモン(wikimon)