第86話 大地の化身 女神ケレスモン! | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

「うーん、さすがに早めに掘り出した方がいーかなー?」

 呆然としている私の横で、葉月は気楽そうにあごに手を当てた。

「ヴルムモンの尻尾ならすぐに掘り出せるんじゃない?」

「俺の尻尾はスコップじゃねえ。でもやるしかないか」

 デジモン2人は心配そうに話し合っている。

 でも落ち着いて救出方法考えてる時点で私との温度差がおかしい。

 だって、目の前で仲間が巨大な物体Xの下敷きになったのよ? 普通焦ったり取り乱したりするもんじゃないの!?

 今度は別の意味で唖然あぜんとする私。信頼してるのか見捨ててるのか……。
 ヴルムモンが尖った尻尾を振り上げて、巨大な土の塊に近づこうとした。


「木達が騒いでいると思ったら……あなた達かぁ」


 ヴルムモンの目の前に人影がいた。

「なっ!」

 ヴルムモンが反射的に飛びのいて、距離をとる。

 その人影はどこからか飛んできたというわけでもなく、地中から生えてきたというわけでもなく、本当に突然その場に現れた、という感じだった。

 密林の花のような派手な仮面をつけた女性だ。両腕を盾が覆っていて、盾や衣服には植物のツタがデザインされている。

 その外見は、ボコモンが見せてくれた十二神族の一人の絵によく似ていた。


「森と大地の女神、ケレスモン」

「なんだ……名乗るまでもなかったね」

 つぶやいた私に、女性――ケレスモンは気だるい口調で答えた。にらみつける私の視線を、ケレスモンは軽く流す。

「ふーん。これが泉達の戦ってる敵ってわけねー」
 葉月が言いながらD-トリガーをケレスモンに向けた。

 ヴルムモンも一歩前に出る。

「ご登場の所悪いが、そこをどいてくれないか? こっちは後ろの土の塊に用があるんだ」

「嫌だね」

 ケレスモンがはねつけて、重心を右足に変えた。

 自分の後ろにそびえる森を手で示す。

「それってこの森を傷つけるって事だろう? 土を切り崩し、根を焼く……そういう奴には容赦しないよ」

 ケレスモンの気配が変わった。

 ううん、ケレスモンじゃない。

「何なの? 木々の様子がおかしい!」

 エルフモンが体を強張らせて、弓を構えた。落ちてきた森だけじゃない。私達の周りに生えている木々全てから敵意を感じる。四方八方から剣を向けられているような、そんな感覚。

 ケレスモンがゆったりと片手を上げた。

 それを合図に、空から枝が、地中から根が一斉に襲いかかってきた。

 私は風で根を吹き飛ばそうとする。けれど、数が多すぎて間に合わない。空へ逃げようとしたヴルムモンも、屋根のように張り巡らされた枝に逃げ道がふさがれた。

「くっ!」

 その場にいた全員が枝や根に拘束された。

「これでどうだ! 《クリムゾンバースト》!」

 ヴルムモンが紅の火炎を吐きだす。辺りの枝が焼きつくされる。

 それを見たケレスモンの顔が怒りに歪んだ。

「大人しくしていればそのままにしたのに、よくも木々を……《飢餓ファミス》!」

 ケレスモンの言葉と共に、枝や根が濃緑色の光を放ちだした。

「うっ」

「力が、抜ける……」

 まるで何日も食べていないみたいに、体がだるく重くなっていく。

 私の進化が解けた。ヴルムモンとエルフモンもリオモンとピクシモンに戻ってしまった。

 私達が戦う力を失った後も、光は消える気配がない。胃がひきつれるような感覚がする。

 金属の落ちる音がした。葉月の手からD-トリガーが落ちていた。葉月の顔色は悪くて、とても銃を握る力は残っていそうにない。

 そんな、このままじゃ――。



「強化弾、アンドロモン――ガトリングミサイル」


 二発のミサイルがケレスモンの体を吹き飛ばした。

 直後に枝や根の光も消えた。締め付けも緩んで、私達は地面に転がり落ちた。
「今の、一体?」

 腕に力を入れて、どうにか顔を上げる。

 崩れ落ちるケレスモンの向こうには、銃を構えた少年が立っていた。

 私達を見て、力強く笑う。

「待たせたな。心配かけて悪かった」

 巧だった。

 ゴーグルから靴の先まで泥だらけで元の色も分からないくらいに汚れていたけど、間違いなく巧だった。

「ほんとーにねー。もうちょっと早く来てもよかったんじゃない?」

 葉月ののんびりした言葉に巧が苦笑する。

「お前……一体どこから?」

 ケレスモンが顔を巧に向ける。

 巧は顔の泥をぬぐいながら答えた。

「どこからって言われると、あの森の下からか? 岩の間に挟まったのはよかったけど、そこから強化弾何発も使わないと外に出られなくてな。これだけ時間かかっちまった」

 ちょっと約束に遅れたみたいな口調だった。しかも何種類の弾を撃ったのかのん気に数え始めている。

「巧って、不死身なの?」

 私の言葉に、葉月が肩をすくめた。

「単にものすごーく運が悪いだけ。丈夫なのはそのおまけ」

 「丈夫」の範囲を超えているような気もするけど。

 とにかく、無事でよかった。


 ケレスモンの体が土のように崩れ始めた。

「多少予定は狂ったけど……いいか。『この体』ぐらいどうってことないし……」

 それだけ言って完全に消えた。

「これだけか? 強かった割にあっけない気がするけど」

 リオモンがケレスモンのいた辺りを足でつつく。

 ピクシモンはというと、ケレスモンが連れてきた空飛ぶ森をじっと見つめていた。

「どーしたの?」

「うん、ちょっとね」

 葉月が話しかけても、考え込んでいるらしく森から目を放さない。

 私も近寄ろうとしたけど、足元がふらついた。さっき力を吸い取られて、体が弱っているみたい。

「みんな消耗してるし、一度私達のとりでに来ない?」

 私の提案に巧が真っ先にうなずいた。

「そうだな。俺シャワー浴びたい」

 巧の言葉に全員が笑った。




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はい、合掌され葬式を出され埋葬までされてしまった巧でしたが、ちゃんと生きてました(笑)

絶対に死んでそうな状況→復活→仲間のピンチを救う

概略だけ書くとヒーローの王道展開ですね。


巧以外がまだ活躍できていませんが、ケレスモンの設定を知っている方はご想像がつく通り、本番はここからです。


「ケレスモンの頭に乗っかっている人、小さくてよく見えないな……外見描写どうしよう」

などと考えていたら、つい先日公式が発表してくれました。画像を見るに、Vジャンプか何かに載った記事のようで。公式様、ナイスタイミングです(笑)




今回初登場のデジモン

ケレスモン(wikimon)