第77話 異次元からの来訪者! 疾走と進化と戦闘と | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

 エンジェモンの城が見えてきた時には、異常が目に見えて分かるようになっていた。
 うっそうとした森の中心に、七色に光る水晶でできた城がある。その周りに黒い球のようなものがいくつも散らばっていた。どうやらあれが通信で言っていた「時空のゆがみ」らしい。

 トレイルモンで近づいていく間にも、新しく一つ、ゆがみが現れた。場所は城から少し離れた森の上空で、そのゆがみから何かが落下するのが見えた。

「信也、あれ、前にメルクリモンが作った裂け目に似てない?」

 友樹が俺の横で言う。確かに、メルクリモンがこのデジタルワールドから撤退する時も時空にゆがみを作っていた。

 だとすると、あの黒い球のゆがみも、十二神族の世界に通じているのか?

 やたらホームの多い森のターミナルに、トレイルモンが乱暴に止まる。ここまで来ると、城の方で戦っているらしい音も聞こえてきた。

「サンキュー、ワーム。安全な所に逃げてていいぜ」

「言われなくても!」

 純平が言うと、トレイルモンのワームは客車を切り離し、全速力で後退していった。……まあ、残って戦えとは言わないけどさ。「頑張れ」ぐらい言ってから帰ってくれよ。

「ボコモン、ネーモン、聞こえる? 私達、森のターミナルに着いたわよ」

 泉がデジヴァイスで通信を試みる。異常が起こってから、ボコモン達とはずっと連絡が取れないでいた。

『……さん、みなさん、来てくれたんですね』

 雑音に混じって、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「エンジェモン!」

 輝一がほっとした表情で名前を呼ぶ。

「一体何が起こってるんだ?」

 俺が聞くと、エンジェモンが早口に答えた。

『突然次々に時空のゆがみができて、そこから十二神族の兵が攻め込んできたのです。衛兵達が迎え撃っているのですが、予想以上に敵の数が多く、苦戦しています』

 なるほど。向こうもいよいよ本気ってわけか。

 ポケットに手を入れ、デジヴァイスを握る。

「どうする? 片っ端から助けに行くか?」

 俺の問いかけに、純平が少し考えて「いや」と口を開いた。

「敵の狙いは城の中の木のスピリットだ。だったら、城の守備を固めた方がいい」

「でも、今戦ってるデジモン達を放っておくわけにもいかないよ」

 友樹が辺りを見回しながら言った。森のあちこちで戦闘が起きているらしく、デジモンの雄たけびや爆音が響いている。

「じゃあこうしよう。ダブルスピリットできる俺と純平はまっすぐ城を守りに行く。残りの3人は森で戦ってるデジモン達を助けに行くんだ」

 輝一の提案に、泉が頷いた。

「分かったわ。エンジェモン達とスピリットのこと頼むわよ」

 俺もデジヴァイスを出して強気に笑う。

「森の敵は俺達に任せとけ!」

 そう言ってすぐに、近くの森の中から大量のデジタマが飛んでいった。それは多分、城の衛兵デジモン達。……のんびりしている暇はないみたいだ。

 全員の左手にデジコードが浮かび上がる。

 

「スピリット・エボリューション!」

 

「ヴリトラモン!」

「チャックモン!」

「シューツモン!」

 

「ダブルスピリット・エボリューション!」

 

「ライヒモン!」

「ライノカブテリモン!」

 

「じゃあお先に!」

 

 チャックモンが小柄な体を生かして森の中に駆け込む。

「なっ。先を越そうったってそうはいかないからな!」

 俺は背中の翼を動かし、空からチャックモンの後を追った。

 向かう先はさっき大量のデジタマが飛んでいった所。城を襲っている敵ほどではないだろうけど、それなりに強い敵がいるに違いない。

 

 


―――

 

 

 

 走るにつれて、戦いの音が大きくなってきた。奥の開けた所で2体のデジモンが戦っているらしい。影がちらついているのが見える。両方ともヴリトラモンぐらいの大きさがある。

 片方は見覚えがある。スカルサタモン。炎のエリアを襲ってきて拓也と輝二に倒されたあのデジモンだ。多分、今までのように拓也達の記憶から生み出されたデジモン。

 と、もう片方のデジモンの剣がスカルサタモンの体を貫いた。デジコードが浮かび上がった後、白いデジタマがどこかに飛んでいく。

 勝ったデジモンの方がふうとため息をついた。

「相手が完全体でもあれだけ数がいると厳しいな……。戦ってる間にトモヒロ達ともはぐれてしまったし……」

 見た事のないデジモンだ。青い鎧を着た人型で、背中にも同じ色の翼が生えている。スカルサタモンと戦っていたんだから、このエリアを守っていたデジモン、のはずなんだけど。

 スカルサタモンはカイゼルグレイモン達と接戦を繰り広げたデジモンだ。それを倒せるほど強いデジモンがこのエリアにいるなんて、僕は聞いてない。

 じゃああのデジモンは誰なんだろう?

 僕は木の陰でこっそりデジヴァイスを取り出して、デジモンのデータを読み取った。

『アルフォースブイドラモン。“ロイヤルナイツ”の中でも神速のスピードを――』

「ロイヤルナイツだあ!?」

 叫んだのは僕ではなく、空を飛んできたヴリトラモンだった。僕と同じくデジモンのデータを読み取ったらしい。

「全く、いきなりラスボス一歩手前の登場かよ!」

 そのデジモン――アルフォースブイドラモンの視線が上に向いた。驚く僕達に負けないくらい、相手の目も丸くなった。

「ヴリトラモン!? まさか拓也か!?」

「はあ? お前らがさらったくせに、よくそんな事が言えるな!」

 ヴリトラモンの体から炎が噴き出す。

「復活したてで悪いが、さっさと倒させてもらうぜ!」

「おい、何か勘違いしていないか!?」

「ヴリトラモン待って! この人さっきスカルサタモンと戦ってたんだよ!」

 地上の僕達の言葉は、急降下してくるヴリトラモンには届かなかった。

「食らえーっ!」

 戸惑うアルフォースブイドラモンを、ヴリトラモンが全力で殴り飛ばした。

 

 

 
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始まりましたコラボ企画!
最初のコラボは煌めく星さんの「デジモン小説~絆を紡ぎしテイマー~」です。

 

……キラさん、しょっぱなからこんな展開ですみません(苦笑)

 

いや、ちゃんと理由があるのですよ?
コメント欄ではたびたび乱闘していたキラさんと信也ですが、本編では面識がありません。
しかもコラボ中は十二神族が攻めこんできていて、仲間割れ(喧嘩)してる場合ではないのです。ただの真面目な会話しかしない、なんて事になりかねない。そんなのキラさんと信也の関係じゃない!←
ならどうするか。

 

最初から勘違いなりなんなりして、ぶん殴っちゃえばいいじゃない!

前科がないなら今作ってしまえ!

という発想なのです。

 

……大丈夫です、この後の展開でちゃんと事態を収束させますので(汗)

 

友樹「収束してもらわないと困る……」

 

させるよ! こんなトンデモないスタートさせたからにはきちんと始末つけますよ!

 

あと、UFVドラモンのしゃべりかたはこんな感じでよかったでしょうか。一度キラさん宅で出てきた時は、結構固い感じのしゃべりかたしていたので真似てみたのですが。

 

第77話から第83話までのコラボ先へのリンク

デジモン小説~絆を紡ぎしテイマー~(2014年4月に更新を停止しています)

 

今回初登場のデジモン

アルフォースブイドラモン(wikimon)