第76話 鬨(とき)の声を上げろ! 揺れ動く城と時空 | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
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 話を終えて、ネプトゥーンモンは二人に視線を戻した。

「これがお前達を助ける理由だ。私はお前達を助ける事に決めた。今度はお前達が決める番だ」

 ネプトゥーンモンを信用して協力するか。信用せずに自分達の道を行くか。

 拓也と輝二が考え込み、静かな時間が流れた。


 最初に動いたのは拓也だった。

 手に持っていたアンブロシアをためらいなく口に放り込み、勢いよく噛み砕いて飲み込む。

「よし!」

 一声上げるとズボンのほこりを払って立ち上がる。回復した体で伸びをした。

 そしてネプトゥーンモンに笑顔を向ける。

「俺は信じる! 一緒にユピテルモンの企みをあばいてやろうぜ!」

 堂々と宣言してから、横に座る輝二に視線を向ける。

「輝二はどうする?」

「俺はまだ、お前みたいに100%ネプトゥーンモンの事を信用したわけじゃない」

 輝二はため息をついて答えた。

「だが、拓也だけでネプトゥーンモンについていって、トラブルに巻き込まれても困るからな」

 輝二もゆっくりと立ち上がる。

「俺もついていく。お前が妙な動きをしないか見張るためにな」

 最後はネプトゥーンモンの方を見ながら言った。

 拓也がいたずらっぽく笑いながら、輝二をひじでこづく真似をした。

「相変わらず一言多いな、輝二は。一緒に来るってだけ言えばいいだろ」

「俺は考えた事を言っただけだ」

 輝二は顔をしかめた。

 二人の様子を見て、ネプトゥーンモンが頷く。

「私は完全に信用されなくとも構わない。協力してくれるだけで十分だ」



「そうだ、まだ聞いてない事があった」
 拓也が手を打った。
 自分達の後ろにある棺おけのような箱を指さす。
「俺達をあそこに入れて、何をしてたんだ? 俺達が昔戦った敵が延々出てきたんだけど」
「そうだな。俺達を夢の中で戦わせて何をするつもりだったんだ?」
 輝二もネプトゥーンモンに視線を送る。
 ネプトゥーンモンは少し考えてから答えた。
「私も先程ウルカヌスモンから聞き出したばかりなのだが……ウルカヌスモンはお前達の記憶データを読み取り、それを使って強力なデジモンを生み出そうとしているらしい」
 そう言って自分の後ろに目をやる。
 見れば、拓也達が閉じ込められる前には部屋を埋めつくしていたデジタマが残らず消えていた。
「じゃあ、俺達が夢の中で戦った敵が、全部あのデジタマから生まれたって事か……?」
 拓也と輝二は顔を見合わせた。顔から血の気が引いていく。
「ネプトゥーンモン、今の輝一達――十闘士の戦力は!?」
 輝二がつかみかかりそうな勢いでネプトゥーンモンに迫る。
「ダブルスピリットできる者が2人、ビーストスピリットまでが3人だと聞いているが」
「まずい。今のみんなじゃ勝てない!」
 拓也がすぐさま叫ぶ。

「ダブルスピリットじゃ、勝てない!」
 二人の様子から事情を察したらしく、ネプトゥーンモンも表情を引き締める。
「ウルカヌスモンもすぐに全てのデータを実体化させる事はできない。厄介な敵が増える前に作業を止めさせよう」
「そのウルカヌスモンは、今どこにいる?」
 輝二が矢継ぎ早に問う。
「この書斎でないなら、離れの塔の研究室だ。あそこはここより高度な設備もある」
「ならそこに――」
 拓也の言葉は途中で切れた。

 城が小刻みに揺れ始めたからだ。

「地震? なわけないか。この世界に地面はないんだし」
 拓也が考える間に、ネプトゥーンモンが素早く動いた。
 まるで海中を泳ぐように尾ひれを動かし、空中を移動する。拓也と輝二も走って後を追った。
 ネプトゥーンモンが勢いよく書斎の戸を開く。通りがかったデジモンが慌てて身を引いた。
「何事だ!?」
 ネプトゥーンモンが鋭く聞く。拓也達はネプトゥーンモンの巨体に隠れて聞き耳を立てた。
「ご存知ないのですか? 敵地に大規模に攻めこむ準備が整ったとかで、メルクリモン様を始め、何人もの十二神族様とその軍勢を送り込むそうですよ。一時的に時空間に負担がかかるが、この城に大した影響はないので心配いらないと……」
「そうか」
 ネプトゥーンモンは短く答えた。
「もう行ってよい」
 足音が遠ざかっていく。後ろにいた拓也達は、ネプトゥーンモンの尾ひれが小さく震えている事に気づいていた。
「どうする?」
 輝二があえてネプトゥーンモンに声をかける。ここで立ち止まっている暇はないのだ。
 ネプトゥーンモンが一呼吸おいて振り返った。
「変わらない。『軍勢』とはウルカヌスモンの作ったデジモンに違いないからな。向こうの世界に行った十二神族を追う前に、兵の供給元を叩く」
「いいのか?」
 拓也がデジヴァイスを見せながら聞く。
 「叩く」という事は、話し合いで止められなければ戦いになるという事。
 ネプトゥーンモンにとっては、ウルカヌスモンという仲間を傷つけるという事。
 ネプトゥーンモンは拓也のデジヴァイスを見て答えた。
「仲間の間違いを正すのも仲間。そもそも戦いに備えて、お前達にその機械を渡したのだ」
「分かった。なら、俺達も全力で戦う」
 拓也は力強い笑顔を向けた。


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拓也輝二サイドでも時空がおかしくなりだした所で終了です。



さあ、物語の準備は整った!



という事で次回からいよいよコラボが始まります!

……もう心臓バックバクですが(苦笑)

頑張りますよっ!


来たる5月20日がちょうどフロ02一周年の日に当たるので、それに合わせてコラボ1話を更新したいと思います。って、もう明後日じゃないか! ……書かねば(汗)

最初はどの作品とのコラボになるのか?

更新をお待ちくださいませ。





余談ですけど、デジモン図鑑の更新はユノモンじゃなかったですね。何事もなかったようにアーマー体の更新に戻っていました。ユピテルモンの登場は一体何だったのでしょう……。
まあ、十二神族だろうとアーマー体だろうと、図鑑の更新は楽しみなので良いのですけどね(苦笑)