話せば長くなる。二人とも姿勢を楽にして聞いてくれ。
そもそも我々十二神族が何者かという事からだな。
お前達も気づいているだろうが、ここはお前達の知っているデジタルワールドとは異なる世界だ。お前達人間の住むリアルワールドと十闘士のデジタルワールド。その他にも次元の異なる世界が複数存在するのだ。
十闘士の世界のように、我々の世界も独自の歴史を歩み、進化してきた。オリンポス十二神族はその中でも特に強い力を得た者達だ。やがて我々十二神族は、互いに協力しながらこの世界を統治するようになった。
しばらくは平和な時代が続いた。
そんな頃だ。異世界の存在が判明したのは。
最初にその情報を持ち込んだのはウルカヌスモンとメルクリモンだった。メルクリモンは元々異世界からの召喚術に長けていてな。その仕組みをウルカヌスモンが研究していたのだ。
それだけでも衝撃的な事件だった。しかし、その異世界の事情が更に問題だったのだ。
メルクリモン達とのコンタクトに偶然成功した異世界のデジモン。名をワイズモンといった。
彼は九人の仲間と共に悪虐な支配者、ルーチェモンと戦っているのだと告げてきた。
察しがついたようだな。
彼らこそ、後に「伝説の十闘士」と呼ばれる事になる英雄達だった。
しかし、当時の彼らはルーチェモンと互角に戦うだけの力を持っていなかった。自分達は他のデジモンより多少強いが、その程度では到底あの独裁者に叶わない事を知っていた。
我々とのコンタクトに成功したのも、勝つための手段を模索していた結果だった。
そして彼らは十二神族に対して、ルーチェモンを倒すために協力してほしいと伝えてきたのだ。
我々の意見は割れた。
バックスモン、ディアナモン、ケレスモンは彼らに関わるべきではないと言った。我々が統治するべきはこの世界であって、他の世界の行く末に口を挟むのは世界の道理に反するという意見だ。
私、アポロモン、ウェヌスモンはたとえ異世界であっても悪しき者を許すべきではないと、彼らに手を貸す事を提案した。
ミネルヴァモン、マルスモン、ウルカヌスモンも同じ立場だったが、彼らは真剣な話よりも自分の力や武器を試す場を求めていた。
ユピテルモン、ユノモン、メルクリモンは中立の立場をとった。どんな結論であれ、他の者達が出した方針に従うと。
話し合いの結果、我々は総員で彼らに手を貸す事でまとまった。
直接彼らの世界に行くことはできなかったが、ワイズモン、ウルカヌスモン、メルクリモンの努力で、互いが同じ場所にいるかのような状況を作り出すことはできた。我々は彼らに戦術を与え、身のこなしを鍛え、武器の作り方を教えた。
彼らは精力的に我々の知識を吸収していった。
そして、彼らの世界で初めて、5段階目の進化を成し遂げたのだ。「伝説の十闘士」の誕生だった。
その頃には我々の研究も進んでいた。ようやく我々自身を彼らの世界に転送する技術が完成したのだ。それにより我々も十闘士の元に行き、共に戦うつもりだった。
しかし、それは叶わなかった。
……すまない、あの時を思い出すと胸が苦しくてな。
ちょうど十闘士の元に向かおうとしていた頃、突如我々の世界の崩壊が始まったのだ。
大地のデジコードが何の前触れもなく壊れ、消えていった。
逃げ遅れたデジモン達はことごとく巻き添えになった。特に……まだ幼いデジモンが多く犠牲になった。
当初原因は不明だった。しかし、日々かけがえのない大地が、デジモン達が消えていく。我々は原因の究明とデジモン達の救助に
この世界の四分の三以上が崩壊した頃、ユピテルモンが「原因を突き止めた」と知らせてきた。
その原因は我々十二神族だと。
究極まで高められた我々の肉体データが世界のデジコードに負担を与え、崩壊させているのだと。
にわかには信じ難かった。自分達が守ろうとしている世界を壊しているのが他ならぬ自分達だとは。
しかし、我々がよく訪れる場所で崩壊が進んでいたのも事実だった。
この城の外を見たか。この石壁の外にはまともな大地も空間も存在しない。あれが今のこの世界の姿だ。この城だけは我々の肉体データによる負担に耐えられる。十二神族と生き残ったデジモン達は皆ここに身を寄せ暮らしているのだ。
そして、ユピテルモンが見つけたこの世界を救う唯一の方法。それが十闘士のスピリットの力でデジコードを修復する事だ。
対策を研究する中で、かつての十闘士の力がスピリットとなり、彼らの世界を守護している事を知った。その力ならば、デジコードを修復できるだろう。
だが、スピリットを我々の世界に持ってくるという事は彼らの世界を守る力を奪うという事。彼らの世界の住人が了承してくれるとは思えなかった。
奪い取る道を選ぶか、このまま滅びを待つか。
かつて助けた十闘士の力を奪う事には皆、抵抗があった。
それを説得したのがユピテルモンだ。
十二神族が結成されてから積極的に発言することはなかったが、十二神族の中でも特に強い力を持つのが奴だ。思慮に富み、人望も高い。その奴が「自分達の世界を守るために手段を選ばぬのが統治者たる者の務め」と我々の意見をまとめあげたのだ。
その後は、お前達にも分かるな。お前達と我々の間に争いが始まった。
しかし、私は未だに今の状況に納得がいかない。
この世界の崩壊の原因も、世界を直す手段も、全てユピテルモンが言いだした事だ。
仲間の言う事を疑いたくはないが……彼の話が真実だと信じきる事ができないでいる。
お前達の扱いも、私は幽閉程度だと聞かされてのだ。それが、生存者の捜索に出ている間にこんな事になっていた。
私はこの争いの裏にある真実が知りたい。それがあると信じている。
お前達にも、協力してほしい。
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「話せば長くなる」って最初に言ったけど、ネプトゥーンモンの話、本当に長いですね……一話丸々彼の話で終わっちゃったんですけど(苦笑)
設定詰め過ぎたかな……。
公式設定では「古代十闘士が初の究極体である」とされていますが、本作では「フロンティアのデジタルワールドにおける初の究極体」という解釈をしています。