第64話 友樹が黄金に!? バックスモンの猛襲 | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

「バックスモン様をお守りするのだ!」

 誰ともなく声が上がって、部下達が俺達の前に立ちふさがる。

「ブリザーモン、伏せてろ!」

 照準器を起動させながら叫ぶ。

 俺の言葉に反応して、ブリザーモンの体がデジコードに包まれた。

「ブリザーモン、スライドエボリューション!」

「チャックモン!」

「《フィールドデストロイヤー》!」

 頭部の砲門から陽電子の砲弾を放つ。

 小柄になったチャックモンの頭上を越えて、弾は敵を捉える。

 爆風と共にデジモン達が吹き飛ばされる。バックスモンへの活路が開けた。

 完璧なコンビネーションだ。

「行け、チャックモン!」

「おう!」

 俺の合図でチャックモンが駆けだす。

「チャックモン、スライドエボリューション!」

「ブリザーモン!」

 ブリザーモンが助走をつけて跳躍する。狙いは正確にバックスモンの頭上。

 それを迎え撃とうと、バックスモンが腰を落として構えた。

「させるかよ! 《アルティメットサンダー》!」

 俺の全エネルギーを込めた攻撃がバックスモンに飛ぶ。その直後にブリザーモンのアックスが振り下ろされる。

 前衛のブリザーモンと後方支援の俺。つけいる隙もない連続した攻撃。



 そのはずだった。


「《バシーアスディスフリギアス》!」

 戦場に響き渡ったのは、バックスモンの悲鳴ではなく朗々とした声。

 近くの建物が爆発し、崩れ去る音。

 閃光で一瞬効かなくなる視界。

 遠くで重い物の落ちる音。

 誰かのうめき声。


 視界が晴れる。


 先ほどと変わらない場所に立っているバックスモン。

 その横で倒れているブリザーモン。下半身が動かぬ黄金に変わっていた。

「ブリザーモン!」

 俺の声にも返事がない。ブリザーモンの体がデジコードに包まれ、友樹に戻った。

 バックスモンがゆっくりと友樹に近づく。

「友樹に手を出すなーっ!」

 俺は無我夢中になって、友樹を助けに動いた。キャタピラを限界の速度で動かして、飛びかかるデジモン達を跳ね飛ばす。

 俺の視界にはバックスモンと友樹しか入っていなかった。

「《インフェルノゲート》!」

 そのせいで、目の前に開いた穴に気づかなかった。

 キャタピラが空回りして、体が暗い穴に落ちていく。


「スライドエボリューション!」

「ブリッツモン!」


 とっさに形態を変えて、翅を広げる。穴から脱出し、敵の上空へと舞い上がった。

「《ネクタール》!」

 そこに狙い澄ましたように飛んできたのは、ブリッツモンの体長ほどもある大だる

 それが俺の目の前で破裂した。中の液体が体にかかる。

 同時に全身を焼かれるような痛みが襲った。

「うわあああっ!」

 耐えきれずに地面に倒れ込む。意識が遠のく。


 感度の悪いラジオのように、声が聞こえる。

「身の程を……知れ。なる…ど、こやつ4つもス……ットを持って…たか」

 かすかに目を開く。自分の体にデジコードが浮かび上がっていて、誰かの手がその中からスピリットを取り出していた。

「……や、やめろ!」

 俺は気合で跳ね起きた。デジコードが消えうせる。いつの間にか進化は解けていた。

 ひざを着いたままの俺を見て、バックスモンが鼻を鳴らした。

「人間が。弱い者は弱い者らしく大人しくしていろ。おかげで4つしかスピリットが手に入らなかっただろう」

 4つ?

 バックスモンの手を見ると、左手に2つ、右手に2つのスピリットを持っていた。

 チャックモン、ブリザーモン、ボルグモン、セフィロトモン。

「このっ! 返せ!」

 飛びかかろうとした俺は敵のウッドモン達に取り押さえられた。

「残りのスピリットも渡せ。あと2つ持っているはずだからな」

 バックスモンが俺をつかみあげる。

「《スマイリーボマー》!」

 小さな赤いグローブが大量に飛んできた。次々とバックスモンを捉え、爆発する。

「ぐっ!」

 その勢いにバックスモンが顔をゆがめ、俺を放した。

「大丈夫ですか!?」

 すかさず俺を取り囲んだのは、マメモン達だった。

「お前達、もしかして豆の木村の――」

「はい! 町が襲われていると聞いて駆けつけたのです。遅くなってすみません」

 マメモン達はそう言ってバックスモンをにらんだ。

 バックスモンは不意をつかれたらしく、腰の辺りを押さえていた。それ以外でも体のあちこちから煙が上がっている。

「このバックスモンが遅れをとるとは……これでは我々の世界に戻れぬ。お前達!」

 バックスモンが部下達に声をかけた。

「こやつらの足止めをしておけ。オレがこの傷を治し、元の世界に戻るまでな」

 そう言って町の外に駆け去っていく。

「待て!」

 痛む体にむち打って走り出す。

「純平さん!」

 足が止まった。

 振り向くと、友樹が必死に上半身を起こしていた。

「しっかりしろ、友樹!」

 俺は友樹に駆け寄ってしゃがみこんだ。

 友樹の下半身は相変わらず黄金に変わったままで、その重さのせいで自力で動く事もできないみたいだった。

「……俺のせいだ」

 俺はこぶしを黄金の地面に打ち付けた。

 俺が司令官みたいな気になっていたから。自分の戦略を過信していたから。相手の実力を見切れなかったから。周りが見えていなかったから。

 そのせいで、スピリットを4つも取られてしまった。友樹は自分のスピリットを失っただけじゃなくて、ほとんど動けない体にされた。マメモン達が助けに来てくれなかったら、ブリッツモンとメルキューレモンのスピリットも取られていただろう。いや、それどころか、俺と友樹の命だって危なかったかもしれない。

「ごめん、友樹……」

 俺はそれしか言えなかった。




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信也「お・れ・の・で・ば・ん!」

じ、次回はちゃんと出すよ、うん(汗)


さて。

以下、オリジナルデジモン、バックスモンのデータです。


バックスモン
レベル:究極体
型(タイプ):神人型
属性:ウイルス
必殺技:《バシーアスディスフリギアス》、《ネクタール》
プロフィール:
オリンポス十二神族の一人で、ブドウ酒と酩酊を司るデジモンである。人間の体と雄牛のような頭部をもつ。受けた恩は必ず返す義理堅い性格をしているが、自分の神性を認めない者に対しては怒りをあらわにする短気な面もある。
必殺技の《バシーアスディスフリギアス》を浴びた者は全て黄金に変えられてしまう。神酒《ネクタール》はあらゆる傷を癒し毒を消すが、バックスモン並みの力を持たないデジモンは触れるだけで体が焼き尽くされるといわれている。




《バシーアスディスフリギアス》は現代ギリシャ語で「フリギアの王」という意味です。つまりはギリシャ神話でディオニュソス(バックス)に触れるもの全てを黄金にする力を授かったミダス王の事です。(ちなみにバシーアス/ディス/フリギアスと区切る)

究極体っぽい強そうな名前にしようと思ったら、長い上に覚えにくい技名になりました……。




【今回登場したデジモン】←書き忘れていました。すみません。

ウッドモン

ケルベロモン

マメモン