「はあああああぁぁぁぁぁっっっっっ…………」
盛大なため息。
理由は簡単。
「何でまた鋼のエリアの結界が塔の上に戻ってるんだよ!」
へたりこみそうになる俺の前には、空に向かって伸びる塔がある。
俺達とマルスモンの戦闘で壊れた塔や町は、鋼のエリアの住民によって元通りに修復されていた。
そして、俺が塔の上から下ろしたメルキューレモンとその台座も。
つまり、メルキューレモンと話したかったらもう一度この塔を上れって事だ。
「せめて俺達が来るまで下ろしたままにしといてくれてもいいじゃんか」
「純平さん、ぐちを言ってもしょうがないよ」
友樹は俺の横で準備運動を始めている。この2年でずいぶんタフになったよな、友樹って……。
俺だって、成長した所を見せないとだよな!
……でもやっぱり、この塔を歩いて上るのかと思うとため息が出る。
塔のバリアさえなければブリッツモンになってひとっ飛びなのに。
期待を込めて、案内役のハグルモンに聞いてみる。
「なあ、俺達が上る間だけバリアを解除してもらうとか」
「できません」
ハグルモンの答えは非情だった。
―――
100段と言われると長く感じたけど、実際に降りてみると大したことなかった。
そういや、鋼のエリアの塔って何段あったんだっけ。ま、もう俺が上る事はないし関係ないか!
階段を下りた先は空間が広がっていた。広さは教室一つ分くらい。でも、土の天井は低くて圧迫感がある。
奥に台座があって、半透明のデジモンが横たわっていた。大きさは俺達と同じくらいで、垂れ下がった鼻が特徴的だ。
「えっと、あれが――」
「土の闘士、グロットモンよ」
とっさに思い出せなかった俺に、泉が教えてくれた。
台座とグロットモンはかすかに光るガラスで囲まれていた。バリアが張ってあるんだ。
「ここも、前と同じようにグロットモンを起こさないとスピリットをもらえそうにないね」
輝一の言葉に俺は考え込む。
「バリアの解除でしたら」
レッパモンが口をはさんだ。3人の視線がそっちに向く。
「トゥルイエモン様から聞きおよんでおります。『デジヴァイスをかざせばスピリットは持つべき者の手に収まるだろう』と」
「なるほど、それなら簡単だな!」
俺はすぐにデジヴァイスを取りだした。泉と輝一も俺の横に並ぶ。
レッパモンは邪魔にならないように後ろに下がってくれた。
3つのデジヴァイスをグロットモンにかざす。
デジヴァイスから光が放たれたかと思うと、バリアは一瞬で消えうせた。
―――
「大変だ大変だー!」
「敵襲だー!」
覚悟を決めて塔を上ろうとした時、大声を上げながらガードロモン達が走ってきた。
俺と友樹は顔を見合わせて、すぐにそのガードロモン達に駆け寄った。
「十二神族か!?」
俺の質問にガクガクとうなずくガードロモン。
「早く応援にいってやってください! 私達ではとても歯が立たなくて」
「任しとけって!」
俺は左手にデジコードを呼び出した。
「スピリット・エボリューション!」
「ボルグモン!」
「ブリザーモン!」
俺達が駆け付けると、妙な光景が広がっていた。
街の一角が黄金に染まっていた。建物も、敷石も、更にはデジモンまで。
「一体どうしちゃったの!?」
ブリザーモンが黄金になったガードロモンをつつく。でも全く反応がない。
「神を神と認めないからそのような目にあうんだ」
聞こえてきた声に、俺とブリザーモンが身構える。
黄金の中をデジモン達が歩いてくる。その先頭にいるのは牛のような頭の人型デジモンだ。
「神って……お前がオリンポス十二神族の一人なのか!」
ブリザーモンが叫ぶ。
「そうだ。名前はバックスモン。2度は言わないから覚えておけ」
「お前がデジモン達を金に変えたのか!」
俺の怒りの声に牛のデジモンは軽くうなずいた。
「オレは『このエリアにスピリットを持った人間の子ども達が来ているはずだから案内してくれ』と言っただけだ。なのに彼らは容赦なく武器を向けてきた。黄金に変えてもらえただけありがたいと思え」
こいつ……他人の事も考えないで好き勝手言いやがって!
一瞬何かが頭をよぎった。
でも今はこいつを倒すのが先だ!
「いくぞ、ブリザーモン!」
「おう!」
俺のかけ声に、ブリザーモンが勢いよく走りだした。
☆★☆★☆★
オリジナルデジモン初登場、です。
詳細な設定は次回、戦闘に入ってから掲載します。
更新が遅れたのはバックスモンの設定を作っていたからだ! と主張してみる。
信也「本当は無印のゲームやってたからだろ」
……遅れた原因の2割は、その通りです。
信也「2割かよ!?」