第62話 守り手を失った世界! 2人が目にしたもの | 星流の二番目のたな

星流の二番目のたな

デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

 データの分析に忙しいトゥルイエモンの代わりに、レッパモンが結界のある場所まで案内してくれる事になった。

「こちらです」

 さっきの書斎の扉よりは小さい、それでも俺の身長の2倍くらいはある扉の前にレッパモンが立つ。

 また足元近くにくぼみがあって、レッパモンの前足が触れると音を立てて扉が開いた。

「この城の扉は全部こういう仕組みになってるのか?」

 俺が聞くとレッパモンがうなずく。

「私どものような獣型デジモンは、人型デジモンのように扉を開け閉め出来ませんから。それにあのくぼみはセキュリティの役目もあるのです」

 中に向かって歩き出しながらレッパモンが説明してくれる。

「トゥルイエモン様とこの城で働いているデジモン以外は、書斎はもちろんのこと、食糧庫の扉すら開ける事ができないのです」

 俺にはただのへこみにしか見えないけど、デジタルワールドじゃそんな仕組みも当たり前なのかもな。

 そんな事を考えながら歩いていた俺は、部屋に入ってすぐに転びそうになった。

「し、信也!」

 後ろにいた泉が慌てて俺の腕をつかんでくれた。

 扉のすぐ内側には、石でできたらせん階段があった。壁でろうそくが燃えているけど、それでも薄暗い。

 それが地下に向かって伸びている。転んでいたら、一番下まで転がり落ちていたかもしれないな……。

 今更ながら冷や汗が出た。

「泉、サンキュー」

Pregoプレーゴ(どういたしまして)。でも気をつけてね」

 輝一が俺達の後ろから階段をのぞきこんだ。

「この下に結界があるのか?」

 先に進んでいたレッパモンが振り返る。

「ええ。土の闘士、グロットモン様がどうしても地面の下がいいとおっしゃいまして。ここから100段ほど階段を下りた地下に台座をもうけてあります」

 鋼のエリアの塔といい、このらせん階段といい、なんでもっと行きやすい所にいないんだよ、十闘士はっ!

 まあ、鋼のエリアの塔を思えば100段なんてまだましか。

 俺は転ばないように気をつけながら、階段を下り始めた。

「こんな事してたら、足が太くなっちゃう……」

 泉のげんなりした声が後ろから聞こえた。





―――





「純平さん、起きて!」

 座席でうたた寝をしていた俺は、友樹にゆすられて目が覚めた。 

 いつの間にかトレイルモンが止まっている。

「まさか、オリンポス十二神族か!?」

 俺は勢いよく立ちあがる。

 反対に、友樹は体を固くしたまま動かない。顔も青ざめている。

「どうしたんだ?」

 俺の質問に、友樹は黙って外を指差した。トレイルモンの進行方向だ。

 窓を開けて、身を乗り出す。

「……これは……」

 レールの先は別世界になっていた。

 500メートルほど離れた場所から、急に日の光が差さなくなったみたいに暗くなっている。日陰になったわけでもなく、空も地面も夜みたいに暗い。

 時々黒い雷が落ちる。

 ……雷。

「もしかして、この先は」

「この先は雷のエリアなんだ」

 トレイルモンのアングラーが沈んだ声で答えてくれた。

「結界が壊されたエリアは、あんな風に暗いエリアに変わってしまったんだ。しかも、元三大天使みたいに力のあるデジモンじゃない限り、行き来する事も出来ないんだ。見えない壁に弾かれてしまって。もし行けたとしても、オリンポス十二神族の手下がうじゃうじゃいるんだけどな」

 俺は無意識のうちにポケットの中のデジヴァイスを握り締めていた。

 雷のエリア。ブリッツモンが守っていた場所。

 それが、今は敵の好きなようにされている。

 急に友樹が客車を飛び下りた。そのまま雷のエリアに走っていこうとする。

「待てよ友樹!」

 俺は追いかけて友樹の肩をつかんだ。

 友樹がこぶしを握って振り返る。

「純平さん、何で止めるの!? あのエリアから出られなくて苦しんでるデジモンがいるはずだよ! トレイルモンや他のデジモンには無理でも、十闘士に進化すれば突入できるかもしれない!」

「俺達の本来の目的、忘れたわけじゃないだろ?」

 俺がゆっくり言うと、友樹が言い返してきた。

「分かってるよ……でも!」

「今俺達がやるべきなのは、敵の陣地につっこむ事じゃなくて十二神族と戦える力を手に入れる事。あんなエリアをこれ以上増やさないためにな」

 友樹はそれで気づいたように肩の力を抜いた。

「……ごめんなさい。思わず頭に血が上っちゃって」

「なんか、悪い所ばかり拓也や信也に似てきたんじゃないか?」

 俺が笑いながら言うと、友樹もやっと少し笑った。

 トレイルモンの提案で、俺達は雷のエリアを迂回して進む事になった。



 走り出した列車の中で、俺は座席に寝転がる。あお向けになって、天井を見上げた。

 本当は俺も、今すぐ雷のエリアを救いたいと思ってる。他でもない、俺のブリッツモンが守っていたエリアなんだ。ブリッツモンが守れなかったあのエリアを、住んでいるデジモンを俺が助けてやりたい。

 でもその一方で、今突入しても意味がないって事も分かっている。今の俺達はたった二人。もし十二神族が出てきても、二人ともダブルスピリットする力は持っていない。

 あそこに飛びこむ前に、俺達にはやるべき事が残っているんだ。



☆★☆★☆★


ようやく、結界が破壊されたエリアの様子が描写できました。わずかですけれど。