お正月特別編その3 信也と輝一の料理対決 後編 | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

 飛び入り参加はすぐに認めてもらえた。主催者のデジモンが言うには、このお祭りではよくあることらしい。

 俺と輝一は違う屋台。同じ屋台じゃ対決できないからな。

 調理器具をチェックしている輝一を置いて、俺は一足先に食材の調達場所に向かう。

 地図に書いてある場所に行くと、種類も様々な雑草が大量に生えている。よく見ると種類ごとに分けて植えられているみたいだ。

 でも、こんな場所じゃ野菜は手に入っても肉や調味料は手に入りそうにないよな……。

 考え込む俺の横を、ハンバーガーみたいな頭のデジモンが通り過ぎた。

 そいつが近くの雑草に手をかけて、ひっこぬく。

 根っこの代わりに地面から出てきたのは……ドレッシング。スーパーで売っているような、ボトルに入っているやつ。

 デジモンはそれを持って屋台の方に戻っていく。

 周りを見ると、同じように雑草を引っこ抜いて食材を調達しているデジモン達。地面から出てくるステーキ肉、七味トウガラシ(ビン入り)、小麦粉(袋入り)等々。

 ……デジタルワールドって、本当に何でもありだな。


 適当な食材を集めて、抱えて戻る。

 その途中で輝一とすれ違った。輝一は家庭科室にあるような大きな鍋を抱えている。

「輝一、何を作るんだ?」

 俺が声をかけると、輝一は笑って答えた。

「完成するまでのお楽しみ。信也は?」

 食材を見られそうになって、俺は輝一の視界から隠した。

「俺だって秘密!」

 それ以上聞かれないように、俺は早足で自分の屋台に戻った。

 ちょっと、いつも使ってるものが手に入らなかったのが痛いけど……ま、なんとかなるよな。

 俺は気合いを入れてボウルを取り出し、材料を入れる。

 小麦粉、砂糖、ベーキングパウダー、卵。

 お祭りの決まりで40人分作らないといけない。いくつかのボウル分けて順番に木べらで混ぜていくんだけど……けっこう重い。明日筋肉痛になるかも。

 やっと混ぜ終わるけど、まだ準備は終わらない。

 今度は半分の材料に『秘密兵器その1』を、もう半分の材料に『秘密兵器その2』を入れて混ぜる。液体を入れたから今度は腕も楽だ。

 最後にそれをフライパンに乗せて焼く!

 隣の屋台を見ると、輝一はさっきの鍋に材料を入れて火にかけ、かき回していた。



「製作時間しゅーりょーーー!」

 審査員の大きな声が響き渡り、試食会が始まった。審査員や見学者であちこちの屋台がにぎわう。

 俺と輝一の屋台には好奇心に負けたという顔で友樹達3人がやってきた。

 俺達は嬉々として3人の分を準備する。

 料理を見た3人から、意外そうな声が出る。

「……あれ?」

「二人の料理にしてはまともな見た目ね」

「普通においしそうじゃん」

 ほめてるんだろうけど……嬉しくないぞ!

 純平が輝一の料理を手に取る。

「これ、豚汁?」

 輝一がうなずく。

「家で時々、母さんの代わりに夕飯作るんだ。これは一番の得意料理」

 3人が警戒しながら口をつける。

「これ、おいしい!」

 友樹が顔を明るくした。

 俺も食べさせてもらう。……くやしいけど、確かにおいしい。

「次は俺の番な! コーヒーのホットケーキだ!」

 俺が出したのは普通のホットケーキより黒いホットケーキ。言っとくけど、焦げてるんじゃないからな。

 牛乳の代わりにコーヒーを入れただけ。

deliziosoデリジオーソ! コーヒー牛乳が入ってるみたいでおいしい!」

 泉が歓声を上げる。

「二人とも、拓也や輝二と違って料理上手いんだな!」

 純平にほめられて、俺と輝一は顔を見合わせて笑う。

「そうだ、これも作ったんだ」

「そうだ、これも食べてくれよ」

 調子に乗った俺達は別の料理も出す。

 3人がすぐに口にして。



 表情が固まった。



「……ちょっと待って。何これ。ふわふわしてるけど、やたら甘くてまずい……」

「信也、何を入れたの?」

「コーラ」

 俺が即答する。

「一人で留守番してた時に作ったんだけどさ、これがなかなか斬新でおいし……くないのか?」

 3人が一斉に首を横に振る。



 口直しにと輝一の料理その2を食べて、また固まる。



「……輝一、これ、何だ?」

「せっかくお祭りに参加するんだから、新しい料理を考えようと思って、デミグラスソースで煮込んでみたんだ。ほら、色も似てるしさ。味見もしてみたんだけど……口に合わなかったかな?」

 黙って頭を抱える3人。

 俺も輝一の『デミグラス豚汁』を飲んでみる。うーん、スープみたいで、けっこうおいしいけど。

 輝一も俺の『コーラホットケーキ』を食べて、首をかしげる。

「俺のもおいしいだろ?」

「うん」

 俺達のやり取りを聞いて、3人がテーブルに突っ伏した。

「拓也お兄ちゃんも信也も、どうして普通の料理で満足しないの……?」

「余計なもの作らなければ上手なのに……」

「一瞬でもこの二人の料理がうまいと思った俺がバカだった!」

 お互いの料理を食べながら、俺達が首をかしげる。

「信也、俺達味覚崩壊してると思う?」

「そんな事ないだろ。みんながうまいと思うものは普通にうまいと思うし」

「だよね……?」



 審査の結果、今回の優勝者はバーガモンとかいうデジモンだった。この10年で何度も優勝している実力者らしい。

 友樹がそのバーガモンと何か話していたけど、俺は片づけに忙しかったからよく知らない。

 そして片づけの終わった会場を、俺達はトレイルモンに乗って離れた。



 ちなみにその後、俺と輝一が料理の当番になるたびに「食べられる料理を作って! お願いだから!」と言われる。

 だ・か・ら、俺達は普通においしい料理作れるんだって! 仲間を疑うなっ!



―――



二人は普通に料理の腕前があります。ところどころ、味覚が人とずれてるだけで。だから当たりも多いですが時々大外れします。ある意味拓也輝二よりたちが悪いかも。

コーラホットケーキはまずいらしいです。食べた事ありませんが。

デミグラス豚汁は、私が昔(うっかり)作ったデミグラスみそ汁がモデルです。デミグラスソースとみそが同じ形のタッパに入ってて気づかずに入れてしまったんですよ! ……私はこれはこれでおいしかったと記憶しているんですが。←


以上でお正月特別編終了です。

次からは通常運行。



バーガモン(wikimon)