第30話 信頼を勝ち取れ! 水辺の守り役、ハニービーモンズ | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
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 目を開けると、そこにリリモンの寝顔があった。

 そう、目の前に。




「…………!」

 俺は声にならない絶叫を上げる。

 断言してもいい! 今の俺の顔は完熟トマトに負けないくらい真っ赤に違いない!


 落ち着け、俺。

 Q.名前は? A.神原信也。

 Q.年齢は? A.11歳。

 Q.何がどうしてこんな状況になってる? ……よし、思い出してみよう。



 昨日俺達は食料と布団にする落ち葉を集めて岩かげに戻ってきた。

 そして夕飯。敵に見つかるかもしれないからたき火はつけなかった。

 で、明日に備えて全員早めに寝た。

 リリモンとはそこそこ間を開けて寝たつもりだったんだけど……どうやら寝相の悪さで移動してきてしまったらしい。



 なるほど。理由は分かった。

 でも今の状況を解決するのに何の役にも立たないぞ!?


 紳士的な行動をとるのなら、今すぐ起きてこの場を離れるべきだ。

 でもこの状況はあまりにもおいしすぎる。こんな状況は二度とないだろうからもうちょっと見ていたい気も――。



 そこまで考えた所で、リリモンがうっすらと目を開けた。

 俺と目が合う。


 えっと、こういうの何ていうんだっけか。確か国語の授業でやったような。

 そう、万事休す。


 完全に凍りついている俺の前で、リリモンは笑顔をみせた。


「おはよう、信也くん」


 俺は反射的に飛び起きた。リリモンのいる方から必死で目をそらしながら答える。


「お、おお、お、おはよう! い、いい天気だな!」


 ……外は灰色の曇り空だった。

 心の中で涙目になっている俺に、後ろから声が届いた。


「ふふ。いい天気ね」


 本当に、リリモンは、できた女の子だ!




 みんなで朝ごはんを済ませた所で、俺達は出発した。

 目的地は結界の場所を知ってるっていうハニービーモン達の所。リリモンが先に立って案内してくれる。

 湖を横に、シラカバの林を歩いていく少女。その後ろ姿を見ているだけで、俺達を待ちうけてる戦いなんて忘れそうになる。


「――也! 信也ってば!」

 肩をゆすられて、やっと呼ばれている事に気付いた。

「もう、なにぼけっとしてるのよ」

 泉が腰に手を当てて、唇をとがらせる。

「べ、別にぼけっとなんかしてねえよ!」

 俺はポケットに手を入れてそっぽを向く。

 でも泉の追及は終わらない。

「してるわよ。これが敵の来てる時だったら、進化する前に襲われてるわ」

「言われなくたって、それくらい分かってるよ。それより、何か話したい事でもあるのか?」

 わざと話題をそらす。

 でも図星だったみたいで、泉は少し考え込んだ。

「……昨日、リリモンが襲われた時の事を考えてみたんだけど。やっぱり変よ。オリンポス十二神族の手下のわりに、シェルモン達は弱すぎた」

「俺達が強かったからじゃないのか?」

 俺の疑問に、泉は首を横に振る。

「前に戦ったナイトチェスモンは、同じようにスピリットを奪うのが目的だったけど、シェルモンよりずっと強かったわ。それに」

 泉は言葉を一度切って、前を歩いてるリリモンを見る。

「昨日の晩、みんなが寝た後にリリモンのデータをデジヴァイスで調べたの」

「リリモンや俺達に隠れてか!?」

 俺が顔をしかめると、泉も不機嫌そうな顔になった。

「最後まで聞いてよ。リリモンはああ見えて、ちゃんと戦うための技を持ってるわ。その気になれば、シェルモンくらい一人でなんとかなったかも」

 なんだよ、それ。

「別にデジモンだからって、みんながみんな戦えるわけじゃないだろ。俺は、戦う力があるのと実際に戦いを選ぶのとは違うと思うな。戦うのが嫌いなデジモンがいてもおかしくない」

「でも……」

「泉は俺よりデジモンの事詳しいのかもしれないけどさ。俺は、リリモンの優しさを信じてるからな」

 まだ不満そうな泉にそれだけ言って、俺はさっさと前に進んだ。


 友樹や純平と話していたリリモンが、俺の方を振り向く。首をかしげた。

「どうかしたの?」

「いや、なんでもない」

 俺は自然と笑顔になりながら答えた。



 

「このあたりの、はずなんだけど……」

 リリモンが立ち止まったのは、小さな湖のほとりだった。俺達も辺りを見回すけど、デジモンは見当たらない。

「敵が来るのを警戒して、隠れてるんじゃないのか?」

 純平が意見を言う。

「考えられるな。やつらがスピリットを探しているのは有名な話だし」

 輝一もうなずく。

「案外、近くで見張ってたりするんじゃないかな?」

 ちゃっかりリリモンの隣に並びながら、友樹が林の中に目をこらした。

「私、周りの様子を見てこようか?」

 泉がデジヴァイスを取り出した。


 その時、草むらから3つの影が飛び出した。

 それはまっすぐに俺達の方に向かってくる。

 一瞬身構えたけど、泉の明るい声が聞こえた。


「あなたたち、もしかして!」


「やっぱり泉さんだ!」

「ほら、だから言っただろ。外見はちょっと変わってても、絶対泉さんだって!」

「おれ、デジヴァイスを見るまで信じられなかったよ!」


 そんな事を口々に言いながら飛んでくるのは、黄色いハチみたいなデジモンだった。

 泉とデジモン達はお互いに駆け寄って、嬉しそうに会話している。

「……なあ、あいつらがハニービーモンでいいんだよな? 知り合い?」

 俺は残っていた男子に話をふる。

 純平が明るい顔で答える。

「そうさ。泉ちゃんファンクラブの二号と三号と四号なんだ! ちなみに俺が一号な」

 後半はスルー。っていうか、説明になってないんだけど。

「昔の冒険で会ったデジモン達だよ。まさか結界を守ってたのがあの三体だなんて思わなかった」

 友樹が付け足してくれた。


「泉さんのファンクラブ、今でも続けてるんですよ!」

「デジタルワールドを取り戻してくれたあなたに覚えててもらえて光栄です!」

「今でもあの時のサイン、大事に取ってあるんですよ!」

 ハニービーモン達に囲まれてマシンガントークをされている泉。……モテモテだな。

 

「あの……結界の事を聞かないと」

 リリモンが遠慮がちに口を出した。




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と、いうわけでフロンティア本編に出てきたハニービーモンズを出してみました。セフィロトモン内の戦闘で出てきた元・ラーナモンファンクラブ、現・泉ちゃんファンクラブのメンバーですね。


彼らがなぜ水のエリアにいて、結界を守っているのか。それは次回語ってくれるはずです!

オリンポス十二神族も黙って見ているわけがないし……一体どうなる!?

(と、次回予告のようなものをしてみる)



◇今回初登場のデジモン

ハニービーモン(wikimon)