「あの~、再会を喜んでるとこ悪いんだけどさ」
泉とハニービーモン達が盛り上がってる所に割って入る。
「俺達、このエリアのスピリットの場所を聞きに来たんだ。君達が知ってるって聞いて」
「ああ、そうだった!」
「すっかり忘れてた!」
ハニービーモン達はポンと手を打った。
「他ならぬ泉さんたちなら、喜んで案内しますよ~」
「ついて来てください!」
そう言って、今度はハニービーモン達を先頭に進み始める。
「良かった。これでスピリットを見つけられるね」
リリモンが嬉しそうに俺に話しかけてきた。
俺も笑って答える。
「リリモンのおかげだよ」
「僕達だけじゃきっと、ハニービーモン達を見つけられなかったもんね」
友樹、今は俺とリリモンが話してるんだから。割り込んでくるなよ。
「そう言えば、何であなた達が水のエリアの結界を守ってるの?」
泉がハニービーモン達に聞いた。
「そう言われてみればそうだよな。俺達と別れてから何があったんだ?」
純平も両手を頭の後ろで組みながら言う。
ハニービーモン達が顔を明るくした。
「よくぞ聞いてくれました!」
「私達も、まさかこんな役目ができるとは思っていなかったのですが」
「話はみなさん達がお帰りになったすぐ後までさかのぼります――」
ハニービーモン達はわれ先にと話し始めた。
デジタルワールドの時間でいう、10年前。
この世界を一度は滅ぼした戦いは、十闘士の勝利により幕を閉じた。
奪い返されたデジコードにより、デジタルワールドは元の広大な大地を取り戻した。
略奪者により命を奪われたはずの大半のデジモン達も、生前と同じ姿と記憶を持ってよみがえった。本来、デジコードを奪われたデジモンはデジタマとなり、転生するはず。それが全て元の姿に戻ったのは、十闘士の力によるものだったのかもしれない。
ハニービーモン達もまた、その中の一部だった。人間の子ども達と出会った記憶、別れた後強大な力によりデジコードを奪われた時の記憶。その全てを持って、気づけば湖のほとりに倒れていた。
何が起こったのかも分からずさまよった。そこに現れたのが二体のデジモンだった。
自分達が最も美しく最も強いとあこがれていた風の闘士。
そして、その風の闘士に倒されたはずの水の闘士。
二体は悪しき敵が倒された事、その過程で自分達が実体を持った事、再びデジタルワールドが危険にさらされないよう、スピリットの力で各エリアに結界を張るつもりである事を話した。
そして、その結界を守るデジモンを探している事も。
ハニービーモン達が彼女達の頼みを断るはずもなかった。なんといっても、昔好きだったデジモンと今好きなデジモンとがそろって自分達に頼んでいるのだ。
風のエリアはハニービーモン達に環境が合わなかったため、水のエリアの結界を守る事を選んだ。
結界の場所を自分達の胸に秘めて生活を続け、今に至る。
「最近はオリンポス十二神族が暴れ回っていて、いつ私達の事をかぎつけるかと怖かったんですが」
「あなた方が来てくだされば安心です!」
「世界で一番、信頼できるあなた達ですから!」
「あ、見えてきましたよ!」
ハニービーモンが指差したのは、今まで見た中でも特に大きな湖だった。大きすぎて反対側の岸が見えない。
「すごいな、まるで琵琶湖みたいだ」
輝一が目を丸くしている。
「ビワコって?」
リリモンが首をかしげる。
えっとびわ湖……社会でやったような気がするけどなんだっけ?
「俺達の住んでいる国で一番大きな湖だよ」
考えている間に、輝一に答えられた……。
「輝一、琵琶湖に行ったことあるの?」
「一度だけね。小学校の卒業祝いにって、母さんが貯金で連れていってくれたんだ」
泉の質問に、輝一はなつかしそうに湖をながめて答えた。
「で? まさかこの湖の底にスピリットがあるとか言わないよな?」
俺は冗談でハニービーモン達に聞く。
ハニービーモン達はトリオで笑顔で答えた。
「その通りです!」
……マジか。
「じゃあどうやって取りに行くの?」
リリモンが困った顔で言う。
「そんなの、私の《ストライクロール》で一発よ」
その言葉と共に、横の茂みから出てくる小柄な影。
ぱっと見子どもみたいにみえる。ヘビの頭みたいなかぶとをかぶっていて、そこから青い三つ編みが二本出ている。
でも、背中に背負った巨大な剣がそのデジモンの実力を感じさせた。
全員デジヴァイスを手に身構える。俺はとっさにリリモンを背中にかばった。(ちなみにハニービーモン達は自主的に泉の後ろに避難した)
リリモンもじっと相手のデジモンを見ている。
「誰!?」
泉の鋭い声。
デジモンは緊張のかけらもなく笑った。
「えっとね、初めまして! 私はオリンポス十二神族の一体でミネルヴァモン。よろしく!」
「二体目の十二神族ってわけか……」
純平がつぶやく。
ミネルヴァモンが一歩踏み出した。
「スピリットが欲しいから、そこ、どいてくれない?」
「嫌だ!」
友樹が叫ぶ。ミネルヴァモンの動きが止まった。
「どいてって言ってるのになんでどいてくれないのよ、ケチ!」
いきなり叫んだかと思うと、背中の大剣をつかむ。
「無理やりだってどかしてやるんだから覚悟しなさいよっ!」
「いきなり逆ギレかよ!?」
俺は思わずそう言いながら、左手にデジコードを浮かび上がらせた。
☆★☆★☆★
……あれ? この31話でミネルヴァモンとの戦闘後までもっていくつもりだったのに、なんでこんなに長くなっている?
(読み直して)
なるほど、ハニービーモンズ、お前達の過去話が悪い!←
一向に「彼女」が出せないじゃないか!