飛び出してきたのは、ピンクの貝みたいなデジモン達だった。跳びはねながら移動していて、口が開くと緑色の中身が見える。
友樹がデジヴァイスを向ける。
『シャコモン。硬い殻に覆われているデジモン。外皮を飛躍的に発達させたため、内部構造はスライム状になっている。また、殻を閉じた状態では、ちょっとした攻撃など容易く跳ね返すほどの高い防御力を持つ。必殺技は体内で生成される硬玉を相手に撃ちこむ《ブラックパール》と超高水圧の水流を敵にぶつける《ウォータースクリュー》。』
それが1、2――。
「17体か……」
「18体だよ」
輝一に冷静に訂正される。せっかく俺がかっこよく決める所だったのに!
デジヴァイスを取り出しながら、背中を振り返る。逃げてきた子は俺のTシャツをつかんで震えている。
俺は空いている方の手でその子の手をシャツから外す。顔を上げたその子と目が合った。
安心させるようににっと笑う。
「心配するなよ。俺達がすぐにやっつけてやるからさ!」
その子が俺の両手をとった。俺の手をデジヴァイスごと両手で包む。
そして俺を見て小さくうなずいた。
俺は息を大きく吸い込む。
よぉし……。
「やってやるぜ!」
なんて言ってる間に敵に接近されてる俺。
振り返ると今にも俺の頭を食おうと口を開けているシャコモン。
「のわっ!」
反射的に握られていた手をほどく。
そのままこぶしで緑の中身を殴りつけた。うえっ、濡れたぞうきんみたいな手ごたえ。
でも俺のカウンターパンチが効いたのか、シャコモンは目を回して地面に落ちた。
他のみんなはその間に進化して戦いに入っていた。
「《スノーボンバー》!」
チャックモンの雪玉が次々に敵を捉える。当たるたびにシャコモンがひっくりかえって気絶していく。俺はモグラ叩きを思い出した。
残りの3体が手伝うまでもなく、あっという間にシャコモン達は片付いた。
「今のうちにここから離れよう」
進化を解いた輝一の言葉に、俺達はうなずく。
「私、どこか隠れる場所を探してくるわ」
フェアリモンが言って、湖の方に飛んでいった。
「歩ける?」
俺が声をかけると、デジモンの女の子はやっと笑顔を見せた。
「うん。助けてくれてありがとう」
俺は思わず背筋を伸ばした。顔が熱い。
顔を隠そうと先に立って歩き出す。
「いや、これくらい、当たり前の事だし……。そうだ、名前は?」
デジヴァイスで調べればデジモンの名前くらいすぐに分かるんだけど、敵でもないのにそんな事する気はなかった。
女の子の足音が後ろからついてくる。
「私はリリモン。あなたは?」
「俺は……信也。神原信也だ」
なんで俺は名前を言うくらいで緊張してるんだ?
俺の横に軽い風が吹く。女の子――リリモンが俺の肩に手を置いた。
「信也君ね。またゆっくり話そうね」
そして俺から離れて、友樹や純平にも話しかけにいった。
俺はそれを目で追いながら、リリモンの手があった所をさすった。
「リリモン、かぁ」
俺は心臓が跳びはねるのを止められなかった。
―――
なにか引っかかるのよね……。
隠れる場所を探して飛びながら、私は考えごとをしていた。さっきの戦いのこと。
あのシャコモン、あまり強くなかった。
私達は強い敵を相手に戦ってきたんだから、もうあれくらいの敵は簡単に倒せるのかもしれないけど。信也も一体気絶させていた。進化もしないで。
あの貝の中が弱点で、信也がたまたまそこを殴ったのなら納得できるんだけど。うーん、考えすぎかしら。
そう思っているうちに、湖のそばに洞窟を見つけた。洞窟と言うより岩かげって感じだけど、みんなが隠れるのには十分そうね。
私はUターンして、みんなに知らせに戻った。
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「湖の近くの洞窟」と書くと、危ないもののような気がしてくる私。パラレルさんの小説の影響ですね、間違いなく(笑)
こっちの洞窟からは黒い霧は出ませんのでご安心ください(笑)
◇今回初登場のデジモン