第27話 だだっ子にはかなわない!? 十二神族ミネルヴァモン | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
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「他に何かいけそうな手段は……」


 牢屋の床に座り込み、拓也と輝二は脱出の相談をしていた。

 ここに連れてこられてから、どれだけの時間が経ったのか分からない。日にちを数えようにも、この世界には、太陽どころか星も月も見当たらないからだ。

 ただ、食事は定期的に運ばれてくる。その回数から考えると、そろそろ二週間になるだろうか。
 もちろん何もせずに過ごしていたわけではない。牢にかけられている鍵を開けるか壊すかしようとしてみた。食事を運んでくるデジモンから、この世界の事やデジタルワールドの事を聞き出そうとした。

 しかし、牢の鍵は頑丈で、ろくな道具も持っていない二人には歯が立たなかった。

 食事を持ってくるデジモンからは、現在のデジタルワールドの状況――十闘士が結界を張っている事、今は氷や風のエリアなど半分近くの結界が壊されている事、人間の子ども達が抵抗して戦っている事――を聞き出す事が出来た。

 だが、この世界の事やオリンポス十二神族については決して答えようとしなかった。つまり、肝心な所が分からない。どうやら、上司から口止めされているらしかった。


「デジヴァイスとスピリットさえあれば、こんな牢屋なんか壊して出ていってやるのになあ」


 拓也が自分の携帯電話を放りあげながらつぶやいた。何度もキャッチしては、また投げる。そうやっているうちに、携帯がデジヴァイスに変わるのを期待しているかのようだった。

「拓也」

「分かってるよ、ないもの欲しがってもしょうがないって事はさ。言ってみただけだって」

 輝二の厳しい声に、拓也はふてくされながら返事をした。携帯をポケットにしまいこむ。

 輝二が腕を組みながら言う。

「とにかく、情報がないと動きようがない。ここから出られたとしても、俺達はどっちに向かえばいいのかも分からな――」


「しっ!」


 突然拓也が唇に人さし指をあてた。緊迫した顔つきになっている。

 小声で輝二に告げた。

「誰か来る」

 輝二もはっとして耳をすませる。確かに石の階段を下りてくる足音がする。

 ここには見張りすらいない。それに、食事の時間にしては早すぎる。

 二人は静かに廊下側に移動して、格子の間から顔を出した。


 小柄なデジモンだった。拓也達とそう変わらないだろう。ヘビの頭を()したかぶとをかぶり、そこから青い三つ編みが二本。スキップをするたびに、三つ編みが元気よく跳ねる。

 拓也達がのぞいているのを見て、足を止める。かぶとの下からのぞく口が、への字に曲がった。

「あー……。こっそり来ようと思ったのに、見つかっちゃった」

 スキップしていたらこっそりも何もないのだが、本人は気にしていないようだ。

「ま、いっか!」

 勝手に機嫌を直して、拓也達の前にやってくる。


 そこで拓也がデジモンを指差し、声を上げた。

「お前! 何とかの()でいすに座ってた奴だ!」

「謁見の間……という事は、オリンポス十二神族の一人か!?」

 輝二も記憶をたどる。そして目の前の相手をにらみつける。

 デジモンは体の後ろで手を組んで、自慢そうに胸をそらせた。

「そーだよ。でも『お前』じゃなくて、ちゃんとミネルヴァモンって名前があるから、覚えといてね?」

 そこでかわいらしく首をかしげる。

 敵幹部とは思えない雰囲気に、拓也達はしばらく呆然としていた。

「……で、そのミネルヴァモンが俺達に何のようなんだ?」

 拓也がようやく声を出す。

「んっとね、君達が暇かなって思って、おしゃべりに来てあげたの☆」

「そ、そうか……」

 輝二がそれだけ返す。完全にミネルヴァモンのペースに巻き込まれている。

 ミネルヴァモンのかぶとの目が意地悪く光った。


「例えば……君達の仲間の事とか?」


 その言葉に、拓也達は息を飲んだ。

「みんなに何かあったのか!? 信也は!?」

 格子をつかみ、拓也が大声を出す。

「えっと、君の『弟』だっけ。元気にしてるよ? なんか炎のスピリットもガンガン使ってるしさぁ」

 その言葉に、拓也は悔しそうな、それでいて安心したような、複雑な表情を浮かべた。

「よかった……頑張ってるんだな、信也のやつ」

 ミネルヴァモンはちょっと唇を尖らせる。

「こっちにとっては、ぜーんぜんよくないけどね。マルスモンまでやられちゃったし」

「俺達と仲間は、伝説の十闘士なんだ。お前達なんかに負けはしないさ」

 輝二が自信に満ちた表情で言い返した。

 ミネルヴァモンが黙りこむ。



 そして足で床の石を踏み砕いた。


 石の破片が牢屋の中にまで転がり込んでくる。拓也達は思わず後ずさった。

「君達がそんな事言ってられるのも今だけなんだからね! 私達が行って、君達の仲間なんてけちょんけちょんにしてやるんだからっ!」

 そう言って頬を膨らませる。

 それを拓也達は顔をひきつらせて見ていた。

 この相手は小さな子どものように表情をころころ変える。言ってる事も、子どもがだだをこねているのと変わらない。

 だが、秘められた破壊力には命の危険を感じた。


 ミネルヴァモンは不機嫌そうにぶつぶつ言いながら、歩き去っていく。その途中で、輝二が何かに気付き、格子の間から身を乗り出した。

「さっき、私『達』って言ったな? 他に誰を連れていく気だ? お前の部下か?」

 ミネルヴァモンは仕方なさそうに足を止めた。

「私と同じオリンポス十二神族の一体だけど、何か文句ある?」

 そう言い捨てて今度こそ去っていった。


「十二神族が二体……あんなのが二体まとめて行くのかよ」

 拓也が額に手をやった。

 輝二も厳しい顔つきで窓の外を見る。

「輝一、みんな……。負けるなよ」





―――





「ほい、水のエリアにとうちゃーく」

 トレイルモンが止まって、俺達は列車から降りた。

 プラットホームに降りると同時に、風が吹いてくる。

「いい風ね」

 泉が両手を広げて、嬉しそうに息を吸い込んだ。確かに、近くに湖でもあるのか涼しい風だな。

「このエリアのどこに結界があるのかな?」

「さあ。鋼のエリアの時みたいに、その辺のデジモンに聞いてみようぜ」

 友樹の疑問に、一緒になって周りを見回しながら返事をする。だけど、デジモン見当たらないな。


「とりあえず手分けして――」

「誰か助けてー!」

 純平の言葉は、遠くからの声で遮られた。

「あっちの方からだ!」

 輝一に続いて、みんな走り出す。

 森の中から、一体のデジモンが走り出てきた。ピンク色の花のようなデジモンだ。

 俺達を見つけて、まっすぐに走ってくる。そして俺に抱きついてきた。

「私、追われてるの! お願い助けて!」

「あ、ああ、分かった!」

 思わず赤くなりながら返事をする。……仕方ないだろ、女の子に抱きつかれたことなんてそうそうないんだから。

 そのデジモンを背中にかばってすぐに、森の中から追手が飛び出してきた。




☆★☆★☆★




拓也達のパートに思ったより字数を使いました……。ミネルヴァモンこんなキャラで大丈夫なのでしょうか。


さて、信也が最後少ししか出てこないですが、熱い展開になっているのでご容赦いただくという事で(二ヤリ)



◇今回初登場のデジモン

ミネルヴァモン